マンションを購入するとなれば高額なお金が必要であり、多くの場合は「住宅ローン」を利用するでしょう。
しかし住宅ローンは誰でも利用できるわけではありません。
これから住宅ローンを組もうと考えている方は、審査や返済時の金利など、さまざまな不安を抱えているのではないでしょうか?
そこでこの記事では、住宅ローンに関する基本事項について解説します。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
マンション購入時の住宅ローン審査とは?
「住宅ローンの審査」とは「融資を受けられるかどうかの審査」です。
住宅ローンは言ってしまえば「借金」の一種であり、ローンを提供する側は「この人に融資しても大丈夫か」を判断しなければなりません。
金融機関によって異なりますが、一般的に以下が主な審査項目です。
- 年収
- 返済負担率(収入に対する返済額の割合)
- 勤続年数
- 担保評価(購入する物件の担保としての価値)
- 本人の健康状態
- 借入時と完済予定時の年齢
住宅ローンの審査は、多くの場合「仮審査(事前審査)」と「本審査」の2段階があります。
仮審査は、融資を行う金融機関(銀行など)が行います。
本審査とは、融資する金融機関に対して住宅ローンの債務を保証する「信用保証会社」によって行われる審査です。
どちらの審査も基本的に「本人の返済能力・信用力」を問いますが、金融機関による仮審査に通ったからといって必ずしも本審査も通過できるとは限りません。
申請内容に虚偽や不備があったり、提出書類に問題があったりした場合は、スムーズに融資を受けられないので注意しましょう。
マンション購入時の住宅ローン審査の必要書類
住宅ローンを組む金融機関によって求められる書類は異なりますが、多くの場合は以下の3種類の書類の提出が求められます。
【住宅ローン審査の必要書類】
- 本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)
- 収入確認書類(源泉徴収票・確定申告書など)
- 物件確認書類(売買契約書・建築工事請負契約書など)
必要書類は各金融機関によって異なります。
各金融機関のホームページに記載があるので、必ず確認して該当する書類を用意しましょう。
住宅ローンでマンションを購入するなら変動金利 or 固定金利?
住宅ローンは元本の返済だけでなく「利息」を含めての返済が必要です。
住宅ローンの金利には「変動金利」と「固定金利」の2種類があります。
変動金利型
「変動金利」とは、返済期間中に定期的に金利が見直されるタイプの金利です。
多くの場合は半年に1回のペースで金利の見直しが行われ、変更後は変更後の金利に従って利息額が決まります。
メリット
- 固定金利タイプよりも低い金利からスタートすることが多い
- 金利の下降局面でメリットが大きい
デメリット
- 借入時に利息総額と返済総額がわからないので、綿密な返済計画を組めない
- 金利の上昇局面ではデメリットになる
こんなご家庭におすすめ
- 金利が上昇するリスクを受容できる金銭的余裕がある
- 教育費などの支出が多くないことが予想される
全期間固定金利型
「全期間固定金利型」では、借入時に定めた金利を完済まで固定します。
住宅ローンは何十年という長い期間で返済しますが、その間ずっと金利が変動しません。
メリット
- 利息総額と返済総額も固定されるので、返済計画を組みやすい
- 金利の上昇局面でも利息負担が増えない
デメリット
- 一般的に変動型よりも借入時の設定金利が高い
- 金利の下降局面ではさらにデメリットが大きい
こんなご家庭におすすめ
- 借入時に綿密な返済計画を組みたい
- 金銭的余裕が少ない、または教育費などの支払いに専念したい
固定金利選択型
「固定金利選択型」では、借入時に定めた年数ごとに金利タイプを選択できます。
一般的に2年や5年、10年などの単位で金利が定められ、期間が経過したらその時点で固定金利を継続するか、変動金利に変更するかを決めることができます。
メリット
- 全期間固定金利型よりも借入時の設定金利が低い
- 固定期間中は固定金利のメリットが活かされる
デメリット
- 固定期間終了時は金利変動の影響を受ける
- 返済計画を綿密に組むことには向かない
こんなご家庭におすすめ
- 金利の変動状況に敏感に反応できる
- 将来的に世帯収入がアップすることが見込まれている
住宅ローンは年収の何倍が目安?
借入時の審査や返済の負担を考慮すると、一般的には「住宅ローンは年収の5~8倍までが目安」と考えられています。
例えば年収が500万円であれば、その5倍の2,500万円を借入の上限として購入するマンションや借入時の頭金を決めるといった考え方ができます。
年収500万円を「月収34万円(手取り)」と仮定して、2,500万円の住宅ローンを組むシミュレーションをしてみましょう。
返済シミュレーション
- 借入額:2,500万円
- 金利:年利0.40%(全期間固定金利型)
- 諸経費:80万円
- 返済期間:30年
- ボーナス払いや繰り上げ返済、一括返済等は考慮しない
【毎月の返済額:約74,000円】
本来であればもっと細かい条件で計算しなければならないのですが、シンプルなモデルとして上記のデータで返済シミュレートしてみると、毎月の返済額は約74,000円になります。
住宅ローンで借りたい金額を決めるにあたっては「返済負担率」から逆算する方法もあります。
上記のシミュレーションでは、月収34万のうち住宅ローンの返済負担率は約22%です。
多くの場合、返済負担率を25%で計画している場合は安全圏内と考え、35%までを目安として審査をしています。
借入時には可能な限り綿密な返済シミュレートを行うべきですが、その計算は複雑で手間がかかります。
まずはシミュレーションツールを活用し目安の金額を計算したうえで、不動産会社や金融機関に相談することをおすすめします。
マンションの購入額と年収の関係について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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マンション購入の頭金はいくらが目安?
住宅ローンの頭金は、購入する物件の価格や貯金額などの条件によって異なりますが、一般的に「購入するマンションの価格の10~20%が目安」といわれています。
例えば購入予定のマンションの価格が5,000万円であれば、20%の1,000万円の頭金が準備できると理想的です。
頭金は金額が大きいほど用意するのが難しくなる一方で、住宅ローンの条件的にはよい影響を与えると考えられます。
マンション購入時の頭金が多いメリット
借入額・返済額が少なくなる
例えば5,000万円のマンションを「頭金1,000万円を用意する場合」と「頭金500万円を用意する場合」では、借入額が500万円も違います。
そのため頭金を多く用意するほど、返済額や返済期間の負担は軽くなります。
有利な条件で融資を受けられる可能性がある
金融機関によっては、頭金の額が大きいほど金利を優遇してもらえる可能性があります。
頭金を多く支払えば「借入額が少ない」「金利を優遇してもらえる」という2つの条件によって支払う利息総額は抑えられます。
頭金を用意する際の注意点
貯蓄額ギリギリまで頭金として支払うべきなのかといえば、それは非常にリスキーであり、おすすめできません。
頭金が多いほど有利な条件で返済できる可能性が高いものの、人生どこで何が起こるかわかりません。
貯金というものは、いざという時に滞りなく支払いをするためにも必要なものです。
貯金がなくなるほどの金額を頭金として支払うのは、将来的な生活を考える上で危険な行為といえるでしょう、
万が一の事態に備えるための金額は貯金として残しつつ、余剰金を頭金として投入することをおすすめします。
住宅ローンの頭金について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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まとめ
マンション購入時に住宅ローンを組む場合は、各金融機関の審査項目や必要書類をしっかり確認しましょう。
住宅ローンには利息がかかります。
ライフスタイルに合わせ、安心して返済を続けるためには「金利」についても理解することが大切です。
また住宅ローンの頭金は、金額が増えると返済負担が減りますが、預貯金のすべてを頭金として支払うと、生活におけるリスクも高くなります。
住宅ローンについて不安があれば、各金融機関や不動産会社に相談しましょう。