独身でマンションの購入を検討している方が増加しています。
一人暮らしの方がマンションを買う場合、どのような間取りや価格のマンションを選べば良いのでしょうか。
この記事では、マンション選びの基準と、一人暮らしでマンションを持つメリット・デメリットを解説していきます。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
一人暮らしのマンション購入におすすめの広さ・間取りは?
適した広さや間取りは人によって異なるため、一概に「こういう物件が良い」とは言えませんが、ライフスタイルの変化を見越して間取りが広めの物件を選ぶのが無難でしょう。
専有面積では60㎡を基準に、男性はそれ以上、女性はそれ以下を選ぶことが多いです。
間取りでは男性には3LDK、女性には2LDKが人気です。
「一人暮らしであれば1Rや1Kのマンションでも十分」という方もいます。
しかし2LDK以上の間取りであれば、寝室とリビングを分けられるうえ、住人の増加にも対応でき、ライフスタイルが変化しても長く住めるでしょう。
一人暮らしのマンション購入、価格相場はどれくらい?
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の調査によると、2023年10〜12月における首都圏の中古マンションの㎡単価は平均74.78万円でした。
※出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構「季報Market Watch サマリーレポート 2023 年 10~12 月期」
例えば、マンションの広さが40〜60㎡である場合、購入価格の目安は約2,991万〜4,487万円となります。
ただし、これはあくまで首都圏の金額であり、マンションの価格相場は地域によって異なります。
似た条件のマンションでも地価や不動産需要の違いから、1,000万円以上価格に開きがあることも珍しくありません。
そのため、まずは希望エリアの相場を調べてみましょう。
またマンションを購入する際は、年収とローン返済額のバランスも考慮します。
返済負担率(手取り年収に対する年間返済額の割合)が25%以下だと安全とされています。
返済負担率を25%以内に収めると仮定する場合、年収ごとの購入可能なマンションの価格と毎月の返済額の目安を表にまとめました。
なお、この金額は以下の条件で算出しています。
- 頭金350万円
- 住宅ローン返済期間35年
- 年利1.3%(元利均等返済)
- 管理費および修繕積立金23,000円
- 購入時の諸経費含まず
年収 | マンション購入価格 | 毎月返済額(管理費・修繕積立金を含んだ額) |
300万円 | 2,400万円 | 60,778円(83,778円) |
350万円 | 2,750万円 | 71,155円(94,155円) |
400万円 | 3,110万円 | 81,829円(104,829円) |
450万円 | 3,460万円 | 92,205円(115,205円) |
500万円 | 3,810万円 | 102,582円(125,582円) |
550万円 | 4,160万円 | 112,959円(135,959円) |
購入を検討するマンションの価格は現在の収入で購入可能なのか、住宅ローンの月額が、無理なく返済できる金額かを必ずシミュレーションしておきましょう。
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一人暮らしのマンション購入のメリット
「一人暮らしであれば賃貸住宅でも十分」と考える方もいるかもしれません。
しかしマンションの購入はファミリー層だけでなく、一人暮らしの方にもメリットがあります。
資産として運用できる
マンションは、購入すれば売却や賃貸物件としての運用を検討できます。
現金が必要になった場合は売却できたり、空き部屋を賃貸物件にして家賃収入を得たりすることも可能です。
好みの内装に変更できる
賃貸と違い、壁紙や設備などの内装を変更できるのも分譲マンションの強みです。
好みのデザインや使い勝手にカスタマイズし、自分の暮らしに合わせた家づくりができます。
老後の住居を確保できる
分譲マンションでは、住宅ローンを完済したあとの住居費の負担が大きく減少します。
老後に収入の減少が見込まれるのであれば、少額の維持費で住める持ち家は魅力的です。
充実した設備やセキュリティを利用できる
分譲マンションの多くは、セキュリティ環境や設備が充実しています。
数年で引っ越すことが多い賃貸物件と違い、長期間住み続けることを前提としているからです。
分譲マンションの設備としては、以下のようなものがあげられます。
【分譲マンションの設備(一例)】
- オートロックのエントランス
- 監視カメラ
- 24時間ゴミ出しができるゴミ置き場
- 宅配ボックス
安心して快適に生活したいという観点から、賃貸より分譲マンションが選ばれることもあります。
一人暮らしのマンション購入のデメリット
マンションの購入にはメリットが多い一方、賃貸にはないデメリットも存在します。
購入を検討する際はメリット・デメリットを理解した上で決定しましょう。
具体的に注意するポイントを4点紹介します。
気軽に引越しできなくなる
マンションを購入すると気軽には引越しができなくなるため、引越しの多い方の住居としては不向きです。
購入後は手放すまで、住宅ローンの支払いと物件の維持・管理が必要です。
別の場所に引越すとなると、マンションの売却活動に加えて新たに物件を探して契約するところまで自分で手配しなければなりません。
税金や維持費用が発生する
分譲マンションを検討するときは家賃とローン返済額を対比して購入を検討しがちですが、ローン以外にも費用が発生します。
固定資産税と管理費、修繕積立費などがその代表例です。
固定資産税は、マンションの建物と土地にそれぞれ課税され、年に一度支払いが発生します。
管理費と修繕積立費は月に一度、マンションの維持のために徴収されます。
これらの費用はローン残債の有無に関係なく、所有している限りかかるので注意が必要です。
売却時にローンが残ることがある
ローンを完済する前にマンションを売却するとき、必ずしも高く売れるとは限りません。
なかにはローンの残債より低い価格で売却され、オーバーローン状態に陥ることもあります。
将来の資産にするためにマンションを買ったのに、負債だけが残る可能性がある点に注意しましょう。
購入希望者が多いエリアで、売れやすい条件の整った物件を選ぶことで、売却時にオーバーローン状態になるリスクを抑えられます。
一人暮らしのマンション選びのポイント
一人暮らしのマンションを選ぶ際に押さえておきたいポイントは、以下のとおりです。
- ライフスタイルの変化に対応できる間取り
- 資産価値が高く売却しやすいマンション
- 住宅ローンの返済に無理がない価格
ライフスタイルの変化に対応できる間取り
マンションを選ぶ際は、将来のライフスタイルの変化に対応できる間取りを選ぶのがおすすめです。
例えば、将来的にパートナーや子どもとの生活が想定されるのであれば、2LDKや3LDKなどゆとりのある間取りのマンションを選ぶのがいいでしょう。
とくに、将来的に子育てをする可能性があるのなら「子育て世帯が多く住んでいる」「近くに公園や病院(小児科)などがある」といったマンションを検討するのも良いといえます。
購入後に大きなライフスタイルの変化がないようであれば、ワンルームや1LDKで十分な場合もあります。
ただし、終の棲家を探す場合、高齢になったあとも暮らしやすいように「手すりが設置されている」「段差が少ない」など、バリアフリーのマンションを選ぶのが良いでしょう。
資産価値が高く売却しやすいマンション
一人暮らしに限らず、マンション選びでは「資産価値の高さ」が重要な検討項目です。
資産価値が高いマンションであれば、転職や親の介護などの理由で引っ越しをする必要性が生じたときに、高値で売却しやすくなるためです。
資産価値が高いマンションは、立地が良く利便性も高い傾向にあります。
「駅から徒歩10分以内」「スーパーやコンビニ、ドラッグストアが周辺に充実している」などに該当するマンションは、安定した需要が期待できます。
また「マンションは管理を買え」といわれることも多いほど、資産価値を保つためには建物や設備の適切な管理が必要不可欠です。
そのため、立地や利便性とあわせてマンションの管理状況もよく確認しましょう。
他にも「マンション周辺で再開発が予定されている」「人口が増加し続けているエリアにある」などに当てはまるマンションも、資産価値が下がりにくいといわれています。
人生では、どのようなライフイベントが起こるか分かりません。
状況に応じて柔軟に対応できるよう、不動産会社とも相談のうえ資産価値の高さを意識してマンションを選ぶことが重要です。
住宅ローンの返済に無理がない価格
マンションは一般的に高額であるため、多くの方が住宅ローンを組んで購入します。
多額のローンを組んでマンションを購入すると、返済負担が重くなって生活が苦しくなってしまいかねません。
また、マンションに住み始めたあとは管理費や修繕積立金、固定資産税などのランニングコストも支払う必要があります。
毎月の家計収支や今後のライフプランなどをもとに、無理のない範囲内での借り入れで購入できる価格のマンションを選ぶことが大切です。
自分自身にあった借入額がいくらか判断できないときは、不動産会社や金融機関の担当者、ファイナンシャルプランナーなどに相談をすると良いでしょう。
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一人暮らしのマンション購入Q&A
最後に、一人暮らしをしている方がマンションの購入を検討するときに抱えやすい疑問とその回答をご紹介します。
一人暮らしのマンションは購入と賃貸、どちらがお得?
一人暮らしでマンションを選ぶとき、賃貸には賃貸の、購入には購入のよさがあるため、必ずしもどちらがいいとは言い切れません。
例えば老後に発生する住居費の負担を軽くしたい、将来的に固定費を抑えて住める持ち家が欲しいと考えている方には、マンションの購入は魅力的な選択といえます。
一方、引越しが多い方や、ライフスタイルの変化が見込まれる方には、マンションより賃貸が適している可能性もあるでしょう。
迷った際は、今後のライフプランやマンションに求める要素を整理して、どちらが自分に適しているのかを評価した上で決定するようにしましょう。
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新築マンションと中古マンション、どちらがいい?
新築マンションと中古マンションのどちらが良いとは一概にはいえません。
新築マンションは建物や室内が新しく、設備や仕様は最新のものが導入されています。
また、耐震性能や省エネ性能、防音性能、セキュリティ性能なども高い傾向にあり、快適で安心した生活を送りやすいといえます。
一方で、販売価格は中古マンションよりも割高であるため、住宅ローンを組んで購入する場合は、毎月の返済負担が重くなってしまうかもしれません。
その点、中古マンションであれば手ごろな価格で購入できます。
また、立地が良い物件の選択肢が豊富であるため、利便性が高く間取りや広さなども希望条件に合っている物件を予算内で見つけやすいでしょう。
ただし、築年数が経過した物件は、入居開始からわずか数年で、設備や内装の修繕・メンテナンスが必要になるケースもあります。
それぞれのメリットやデメリットをよく理解し、生活スタイルや今後のライフプラン、希望する住環境、予算などをもとに自分自身に合ったマンションを選びましょう。
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一人暮らしのマンション購入は頭金なしでもOK?
頭金を入れなくても、物件価格と同じ金額の住宅ローンを借り入れてマンションを購入することはできます。
頭金を入れずにマンションを購入すると、手元にまとまった現金を残すことができ「病気で療養が必要になった」などの緊急事態に対処しやすくなるでしょう。
また、頭金を準備する期間も不要になり、気に入ったマンションが見つかったときにすぐに申し込めるようになるため、他の人に先を越されにくくなります。
一方で、頭金が0円であると住宅ローンの借入額が増加して返済負担が重くなり、家計を圧迫してしまうかもしれません。
加えて、借入額が多ければ多いほど金融機関の融資審査は厳しくなるのが一般的であるため、頭金が0円であると審査に通過しにくくなります。
頭金を入れるかどうかについても、家計の収支や保有資産、将来のライフプランなどをもとに慎重に検討することが大切です。
マンションを購入する場合、住宅ローンの借入れとは別に頭金を支払うことがあります。 「頭金はなぜ必要なの?」 「頭金はいくら準備したらいいの?」 「頭金なしでもマンションは購入できる?」 このような疑問を持つ方も多いの[…]
一人暮らしのマンション購入でも住宅ローン控除は利用できる?
一人暮らしであっても、住宅ローンを組んでマンションを購入した場合、要件を満たせば住宅ローン控除を受けられます。
単身世帯向けのマンションを購入して住宅ローン控除を受けるのであれば、床面積が要件を満たしているかどうかをよく確認しましょう。
住宅ローン控除を受けるためには、原則として「50㎡以上であり、かつその2分の1以上が居住用」「合計所得金額が2,000万円以下」という要件を満たしていなければなりません。
床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅を購入する場合、合計所得金額が1,000万円以下であり、その他の要件を満たしていれば控除の対象となります。
例えば、床面積が40㎡未満であるコンパクトなマンションを購入すると、住宅ローン控除は受けられません。
一人暮らしをするためのマンションを選ぶ際は、不動産会社の担当者や最寄りの税務署に住宅ローン控除の要件を満たしているかどうかを確認することをおすすめします。
住宅ローン控除は、令和4年(2022年)の税制改正で利用できる期限が延長されました。 住宅ローン控除とは、消費税増税にともなう税負担を軽減する制度です。 所得税からの控除が受けられるため、マイホーム購入者にとってメリットの大きな[…]
まとめ
一人暮らし用の分譲マンションには「好みの内装に変更できる」「充実した設備やセキュリティを利用できる」などのメリットがあります。
一方で、気軽に引っ越しができなくなり、税金や維持費用などが発生するなどのデメリットがあるため、メリットとよく比較してマンションを買うべきか慎重に判断しましょう。
マンションを購入する場合は「ライフスタイルの変化に対応できるか」「資産価値は高いか」などの点をもとに、自分自身に合った物件を探すことが大切です。
マンションを購入すべきか、どのようなマンションを選ぶべきか判断に迷うときは、不動産会社に相談すると良いでしょう。
(執筆者:いちはらまきを)