マンションを検討する際に、新築と中古のどちらにすべきか悩む人は少なくありません。
新築マンションと中古マンションには、それぞれにメリットとデメリットがあるため、よく比較して検討をすることが大切です。
本記事では、新築マンションと中古マンションのメリットやデメリット、購入時の流れなどを解説します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
マンションは新築と中古、どっちがいい?
新築と中古のどちらが良いかは一概にはいえません。
それぞれに一長一短があるため、ライフスタイルや今後のライフプラン、資金計画などでどちらが向いているかは変わります。
ここからは、マンションの購入を検討する際に知っておきたい新築と中古のメリット・デメリットを解説していきます。
新築マンションのメリット
新築マンションを選ぶメリットは、次のとおりです。
- 建物が新しく、最新の設備がそろっている
- 高い耐震性と最新のセキュリティ機能がある
- ライフスタイルに合わせた間取りが充実している
- 住宅ローン控除が優遇されている
建物が新しく、最新の設備がそろっている
新築マンションは、建物が新しく、室内もまだ誰も使用していない状態であるため、中古物件では味わえない満足感を得られる可能性があります。
また、建物や設備の傷みや劣化の心配が少なく、当面のあいだは修繕やメンテナンスの必要がありません。
さらに新築マンションには、キッチン設備や床暖房、バスルーム設備などに最新の機能が備わっていることも多く、入居後により快適に生活がしやすいといえます。
高い耐震性と最新のセキュリティ機能がある
新築マンションは、すべてに新耐震基準が適用されているため、震度6強〜7の地震が発生しても倒壊しない程度の耐震性能があります。
また、オートロックやモニター付きインターホン、防犯カメラなどのセキュリティ設備が充実している新築マンションも少なくありません。
耐震性とセキュリティ機能が優れている新築マンションを購入することで、災害や犯罪などに備えながら安全に暮らしていけるでしょう。
ライフスタイルに合わせた間取りが充実している
新築マンションの多くは、住む人のライフスタイルに合わせた間取りが設計されています。
近年の新築マンションでは、室内に行き止まりがなくスムーズに移動できる「回遊動線」や、洗濯物をたたんだりアイロンがけをしたりする「家事室」が採用されることもあります。
また、ウォークインクローゼットや床下収納など、室内を有効活用した収納スペースがあるマンションも増えてきました。
収納スペースが充実していれば、季節物の衣類や趣味の道具などを片付けしやすくなり、居住空間を有効に活用できます。
住宅ローン控除が優遇されている
住宅ローン控除は、住宅ローンを組んでマイホームを購入した人が受けられる税の優遇制度です。
2024年4月現在は、所定の要件を満たすと、年末時点の借入残高×0.7%を所得税と一部の住民税から控除できます。
新築マンションは、中古マンションよりも住宅ローン控除の内容が優遇されています。
例えば、控除を受けられる期間は、中古マンションは基本的に最長10年※1であるのに対し、新築マンションは最長13年です。
※1:所定の要件を満たす買取再販住宅は13年
また、控除額を計算する際に対象となる年末時点の借入額(借入限度額)は、中古マンションは最高3,000万円※2ですが、新築マンションは最高4,500万円※3となります。
※2所定の要件を満たす買取再販住宅は最高4,500万円または最高5,000万円
※3子育て世帯・若者夫婦世帯が令和6年に入居する場合は最高5,000万円
新築マンションのデメリット
新築物件のデメリットには、次のようなものが挙げられます。
- 物件価格が高い
- 資産価値が下がる場合もある
- 購入前に実際の建物や室内を確認できないことも多い
- 消費税がかかる
- 希望するエリアで物件を探すのが難しい場合がある
物件価格が高い
新築マンションは、中古マンションと比較して価格が割高です。
東京カンテイの調査によると、首都圏における新築マンションと中古マンションには、以下のような価格差があります。
※参考:東京カンテイ「マンション・一戸建て住宅データ白書2022」
住宅ローンを組んでマンションを購入する場合、新築マンションの方が返済負担は重くなりやすいのです。
資産価値が下がる場合もある
一般的にマンションをはじめとした不動産は、築年数が経過するにしたがって価値が下がっていく傾向にあります。
特に、新築マンションには「新築プレミアム」という付加価値が付いており、部屋の鍵を回した直後に販売価格の1〜3割の価値が失われるといわれています。
立地や周辺環境、間取りによっては、購入時よりも大きく資産価値が下がってしまうかもしれません。
購入前に実際の建物や室内を確認できないことがある
マンションが建築前である場合、仮設のモデルルームを見学して間取り図面や完成予想図を確認して購入すべきか判断する必要があります。
モデルルームは、マンションの室内が忠実に再現されており、家具やインテリアが設置されていますが、購入を考えている間取りプランを確認できるとは限りません。
また、仮設のモデルルームでは、実際の眺望や日当たり、騒音などの確認も困難です。
消費税がかかる
新築マンションのほとんどは、売主がデベロッパーであるため、購入価格のうち建物部分の価格に消費税がかかります。
2024年4月現在、消費税の税率は10%です。
例えば、6,000万円の新築マンションを購入するとしましょう。
そのうち建物価格が4,000万円である場合、消費税だけで400万円の負担が発生します。
新築マンションの購入価格が高いほど、消費税の負担も重くなっていくでしょう。
希望エリアで物件を探すのが難しい場合もある
駅近や人気のエリアなどには、すでに多くのマンションが建っているため、新築マンションの選択肢は限られてしまいます。
新築マンションに絞って検討すると、希望する予算内で立地や間取り、広さなどの希望にあった物件がなかなか見つからないかもしれません。
中古マンションのメリット
中古物件を選ぶメリットは、次のとおりです。
- 新築マンションよりも安い価格で取得しやすい
- 希望エリアの物件の選択肢が増える
- 実際の建物や室内を確認できる
- リフォーム・リノベーションがしやすい
- 資産価値が下がりにくい場合もある
新築マンションよりも安い価格で取得しやすい
中古マンションは、新築と比べて割安な価格で購入できます。
中古マンションを選択肢に含めると、予算内で立地や間取り、広さなどが希望に合っている物件を見つけやすくなります。
予算が限られている方や、ローンの返済負担を少しでも軽くしたい方は、中古マンションを選択肢に含めるとよいでしょう。
希望エリアの物件の選択肢が増える
中古マンションは、駅から徒歩5分以内などの好立地や、災害の影響を受けにくいエリアにも多く建てられています。
住みたいエリアが決まっているのであれば、中古マンションを含めて検討した方が予算内で希望に合った物件が見つかりやすくなるといえます。
実際の建物や室内を確認できる
中古マンションは、実際の建物や室内を確認した上で購入すべきか判断できます。
実際の物件を見学し、建物の状態や間取りの使い勝手、日当たり、眺望、騒音などを事前に確認できるため、より納得のいく物件選びが可能です。
新築マンションとは異なり、モデルルームやパンフレット、完成予想図とのギャップに悩まされることもないでしょう。
リフォーム・リノベーションしやすい
中古マンションの購入後に、リフォームやリノベーションをすることで、室内を自分自身や家族の希望に合った部屋に改装できます。
内装や設備、間取りを好みに合わせて変更することで、より理想的な住空間を作り上げられるでしょう。
また、リフォームやリノベーションをすると、物件の価値を高める効果も期待できるため、将来的に売却しやすくなる可能性があります。
資産価値が下がりにくい場合もある
中古マンションの価格には、新築マンションのような新築プレミアムが上乗せされていないため、購入した直後に資産価値が大幅に下がりにくいといえます。
また、中古マンションの価値は、一般的に築25年を超えたあたりからほぼ横ばいとなっています。
築年数の経過による価格の推移は、下記の図表に掲載されている、中古マンションの築年数別平均㎡単価をご覧ください。
※出典:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」
そのため、中古マンションであれば立地や建物の状態などによっては、購入時とほぼ同額、あるいはそれよりも高値で売却できる可能性があります。
中古マンションのデメリット
一方、中古物件を検討する際は次のようなデメリットがあることを理解しておきましょう。
- 仲介手数料がかかる
- 修繕コストがかかる
- 新耐震基準で建てられていない可能性がある
- 修繕積立金が値上げされている可能性がある
- 住宅ローン控除が受けられない場合がある
仲介手数料がかかる
仲介手数料は、買主を探してくれた不動産会社に成功報酬として支払う手数料です。
売主が個人である中古マンションを購入する場合、基本的には仲介手数料がかかります。
物件価格が400万円以上であれば、仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円(税別)」です。
例えば、中古マンションの価格が4000万円である場合、最大で「4,000万円×3%+6万円=126万円(税抜)」の仲介手数料がかかります。
修繕コストがかかる
築古のマンションでは、設備や内装の老朽化が進んでいることがあります。
そのため、購入して間もなく壁紙の張り替えや床のフローリング交換、水回りの設備更新などの工事が必要になるかもしれません。
たとえ物件の購入価格を抑えられたとしても、修繕・交換・メンテナンスの費用が高くなると、トータルでの金銭的な負担が重くなる可能性があります。
新耐震基準で建てられていない可能性がある
1981年以前に建築されたマンションは、旧耐震基準で建てられている可能性があります。
旧耐震基準のマンションは、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損箇所を補修することで引き続き生活が可能な構造があります。
しかし、新耐震基準とは異なり、震度6強から7程度の大地震は想定されていません。
旧耐震基準のマンションを購入すると、入居したあとに地震の被害に対する安全性に不安が残る可能性があります。
修繕積立金が値上げされている可能性がある
修繕積立金は、主に大規模修繕の費用を賄うために、マンションの区分所有者が毎月支払うものです。
マンションの多くは、築年数の経過にともなって段階的に修繕積立金が値上げされます。
また、大規模修繕に向けた積立金の残高が不足している場合や、工事をするためのコストが計画当初よりも上昇した場合も、修繕積立金が値上げされることがあります。
修繕積立金が高額であると、毎月の支出が増えてしまい、家計にとって大きな負担になるかもしれません。
住宅ローン控除が受けられない場合ある
中古マンションを購入する場合、住宅ローン控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
(1)昭和57年1月1日以後に建築されたものである
(2)上記以外の場合は、次のいずれかに該当すること
a. 取得の日前2年以内に、地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準に適合するものであると証明されたもの(耐震住宅)である
b. 上記(1)および(2)bに該当しない一定の住宅(要耐震改修住宅)のうち、その取得の日までに耐震改修を行うことについて申請をし、かつ居住の用に供した日までにその耐震改修により家屋が耐震基準に適合することにつき証明がされたものであること※租税特別措置法41条の19の2(既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除)第1項または41条の19の3(既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除)第6項もしくは第8項の適用を受けるものを除く
マンションが昭和56年12月31日よりも前に建てられており、上記要件のaとbのどちらにも該当しない場合、住宅ローン控除は受けられません。
また、たとえ住宅ローン控除を受けられたとしても、新築マンションと比較して最長の控除期間は短くなり、借入限度額は基本的に少なくなります。
新築・中古マンションの購入にかかる費用を比較
マンションを購入する際は、物件の購入代金のほかにも手数料や税金などの諸費用がかかります。
新築マンションと中古マンションでは、購入時にかかる諸費用に以下のような違いがあります。
新築マンション | 中古マンション | |
登記費用(登録免許税・司法書士報酬) | 〇 | 〇 |
印紙税(売買契約書・金銭消費貸借契約書) | 〇 | 〇 |
住宅ローンの借入費用(事務手数料・保証料) | 〇 | 〇 |
損害保険料(火災保険料・地震保険料) | 〇 | 〇 |
仲介手数料 | × | 〇 |
修繕積立基金 | 〇 | × |
諸費用の金額の目安 | 購入価格の3%前後 | 購入価格の5〜10% |
※上記はあくまで一例であり、実際とは諸費用の種類や金額が異なることがあります
例えば、物件の価格が4,000万円である場合、諸費用の目安は新築マンションが120万円、中古マンションが200万〜400万円となります。
中古マンションを購入する際は、基本的に仲介手数料がかかる分、新築マンションよりも諸費用が割高となります。
新築・中古マンション購入時の流れを比較
新築マンションと中古マンションでは、購入をするときの流れに異なる部分があります。
ここでは、新築と中古の購入時の流れを解説します。
新築マンション購入の流れ
新築マンションを購入する際の流れは、以下のとおりです。
- 物件の情報を収集する
- モデルルームを見学する
- 購入を申し込む
- 住宅ローンの仮審査を受ける
- 重要事項説明を受け売買契約を結ぶ
- 住宅ローンの本審査を受ける
- 金融機関と金銭消費貸借契約を結ぶ
- 内覧会に参加する
- 残金決済・引き渡し
新築マンションの場合、モデルルームで室内の間取りや広さ、家具・家電を配置する位置などを確認し、購入を検討するのが一般的です。
また、マンションが完成したあとは内覧会が実施され、室内や共用部分を確認できます。
中古マンション購入の流れ
中古マンションを購入する際の流れは、以下のとおりです。
- 物件の情報を収集する
- 物件の見学
- 購入を申し込む
- 住宅ローンの仮審査を受ける
- 重要事項説明を受け売買契約を結ぶ
- 住宅ローンの本審査を受ける
- 金融機関と金銭消費貸借契約を結ぶ
- 残金決済・引き渡し
中古マンションの場合は、建物や室内を実際に見て確認した上で購入すべきか判断ができます。
新築マンションとは異なり、物件の完成を待つ必要がないため、売主とのスケジュール調整次第では、売買契約を結んだあと1か月程度で入居できます。
マンション購入の際は、新築と中古のメリット・デメリットを理解して検討しよう
新築マンションは、最新の設備が充実しており耐震性やセキュリティ性能も優れていますが、価格は割高であり、実際の室内を見て購入を判断できないことがあります。
一方の中古マンションは、新築よりも価格が安く、希望のエリア内で物件が見つかりやすくなる反面、仲介手数料や修繕コストなどがかかる可能性がある点には注意が必要です。
また、購入時にかかる諸費用や、購入の流れにも新築と中古で違いがあるため、それぞれの特徴をよく理解して自分に合った選択をすることが大切です。
(執筆者:品木彰)