住宅は価格が高いため、少しでも金銭的な負担を減らして購入したいと考えている人がほとんどではないでしょうか。
住まいは人の生活に必要不可欠なものであるため、さまざまな補助金制度や減税制度が実施されています。
本記事では、住宅を購入した場合に利用できる補助金制度や減税制度の内容について、わかりやすく解説していきます。
遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 恒吉 俊哉(つねよし しゅんや)
宅地建物取引士
住宅購入時に利用可能な補助金
2021年1月現在、住宅購入時に利用できる可能性のある補助金制度は、以下5つの種類があります。
- すまい給付金
- ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)補助金
- 地域型住宅グリーン化事業
- エネファーム設置補助
- 自治体独自の補助金制度
それぞれについて、確認していきましょう。
すまい給付金
すまい給付金とは、年収が一定以下である人が住宅を購入したときに受給できる補助金です。
2014年に消費税が5%から8%へと増税された際に、住宅を購入する人の金銭的な負担を軽減するために、開始されました。
2019年11月に消費税が10%へと増税された際には、支給対象者と支給上限額が拡充されています。
支給対象の年収条件 | 支給額の上限 | |
消費税8%の住宅を購入 | 年収約510万円以下 | 30万円 |
消費税10%の住宅を購入 | 年収約775万円以下 | 50万円 |
ただしすまい給付金を受給するためには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 自らが居住するための物件を購入する
- 床面積が50㎡以上
- 第三者からの検査を受けている
- 2021年12月までに住宅の引き渡し・入居が完了している など
すまい給付金の支給額は、住民税の所得割額をもとに計算されます。
住宅を購入した人の年収が高いほど、すまい給付金の支給額は少なくなる仕組みです。
すまい給付金について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)補助金
ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称です。
『高い断熱性能と高効率な設備やシステムを導入して、エネルギー消費量を大幅に削減し、年間の一次エネルギー消費量がプラスマイナスゼロである住宅』のことを指します。
※一次エネルギー消費量とは、空調設備や照明設備、給湯設備など、建物を利用する際の直接的なエネルギー消費量のこと
ZEH補助金とは、ZEHを新築・購入した人や、所有する住宅をZEHへと改修した場合に支給される補助金です。
補助金には以下の3種類があり、環境性能が高いほど、支給額が増えていきます。
適用条件 | 補助額 | |
ZEH |
|
定額60万円/戸 |
ZEH + |
|
定額105万円/戸 |
ZEH + R |
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定額115万円/戸 |
地域型住宅グリーン化事業
地域型住宅グリーン化事業とは、認定長期優良住宅や、低炭素住宅などの環境性能が優れた木造住宅を新築・購入する人に給付される補助金です。
所定の要件を満たす省エネ住宅に改修する場合も、補助の対象となります。
適用条件 | 補助額 | |
長寿命型 |
|
110万円/戸 |
高度省エネ型 |
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ゼロ・エネルギー住宅型 |
|
140万円/戸 |
省エネ改修型 |
|
50万円/戸 |
また、以下に該当すると支給額が加算されます。
- 建物の主要構造材の過半に地域木材を利用:上限20万円
- 三世代同居対応要件に該当:上限30万円
ただし、地域型住宅グリーン化事業の補助金は、国から採択を受けた事業者グループが供給する住宅でなければ受給できません。
国から採択を受けていない事業者で住宅を購入したり新築したりしても、補助金を受けられない点に注意しましょう。
エネファーム設置補助
エネファーム設置補助とは、家庭用燃料電池システムであるエネファームを住宅に導入すると補助金が受け取れる制度です。
エネファームとは、水素と酸素から電気や熱を作るシステムです。
補助の対象となるエネファームを導入して6年以上使用を続けると、1台につき最大4万円が支給されます。
また「すでに居住している住宅や建築物に設置」「LPガスに対応」などの条件を満たすと、最大3万円/台が追加で支給される仕組みです。
エネファームの設置費用が高額になるほど、補助額は減少していきます。
設置費用が高額であると、補助金を受けられない可能性がある点に注意が必要です。
自治体独自の補助金制度
自治体によっては、独自の給付金制度を実施しています。
天竜材の家百年住居る助成事業費補助金市内で生産・加工された木材を一定量使用して住宅を建築すると、1㎥あたり2万円の補助金が30万円を上限に支給される制度を実施中です。
所定の条件を満たすFSC(R)認証材を使用した場合は、20万円が追加支給されます。
参考:天竜材の家百年住居る助成事業費補助金
取得予定の住宅がある自治体のホームページで、補助金制度の有無や内容を確認すると良いでしょう。
住宅購入時に利用可能な減税制度
住宅を購入すると、以下4つの税負担軽減措置が受けられます。
- 住宅ローン控除
- 登録免許税の軽減措置
- 不動産取得税の軽減措置
- 固定資産税・都市計画税の軽減措置
それぞれについて、確認していきましょう。
住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンを借り入れた人が利用できる税負担の軽減制度です。
年末時点の住宅ローン借入残高の1%に相当する金額が、その年の所得税から控除されます。
控除しきれなかった金額は、住民税から差し引かれる仕組みです。
※前年度の課税所得の7%もしくは136,500円のどちらか高い金額が上限
住宅ローン控除を利用できる期間は、本来であれば最長10年です。
しかし所定の期日までに契約を結び、2022年末までに入居すると住宅ローン控除の期間が13年となります。
控除期間が13年に延長される場合、11〜13年目の控除額は「年末時点の借入残高の1%」と「(住宅取得等対価の額-消費税額)×2%÷3」のどちらか低い金額です。
ただし住宅ローン控除を利用するためには、ローンの返済期間や購入する住宅の床面積など、所定の要件を満たす必要があります。
住宅ローンを組んでマイホームを購入しても、住宅ローン控除を受けられるとは限りません。 住宅を購入した人や住宅ローンの借入条件、建物の床面積など、住宅ローン控除にはさまざまな適用要件が設けられているためです。 また2022年の[…]
住宅ローン控除は、令和4年(2022年)の税制改正で利用できる期限が延長されました。 住宅ローン控除とは、消費税増税にともなう税負担を軽減する制度です。 所得税からの控除が受けられるため、マイホーム購入者にとってメリットの大きな[…]
登録免許税の軽減措置
登録免許税とは、不動産の登記をする際に支払う税金です。
不動産を購入するときは、所有権保存登記や所有権移転登記をしなければなりません。
住宅ローンを組んだ場合は、抵当権設定登記も必要です。
※抵当権とは、住宅ローンを借り入れた人の返済が滞った場合に、金融機関が住宅を差し押さえできる権利
登録免許税の税額は、基本的に土地や建物の固定資産税評価額に税率をかけて計算されます。
令和4年3月31日までに住宅を取得した場合は、以下のような軽減税率が適用され、本来よりも登録免許税額が軽減されます。
住宅の特例税率
- 所有権保存登記:0.4%→0.15%に軽減
- 所有権移転登記:2.0%→0.3%または0.1%に軽減
- 抵当権設定登記:0.4%→0.1%に軽減
土地の特例税率
- 所有権移転登記:2.0%→1.5%に軽減
不動産取得税の軽減措置
不動産取得税とは不動産を取得したときに、一度だけ支払う必要のある税金です。
不動産取得税の税率は、土地と建物それぞれ4%です。
それが令和3年3月31日までに住宅を取得した場合、不動産取得税に以下のような軽減税率が適用されます。
- 土地:固定資産税評価額×1/2×3.0%
- 建物:固定資産税評価額×3.0%
また所定の条件を満たした新築住宅を購入した場合、建物や土地の固定資産税が軽減される措置も実施されています。
固定資産税・都市計画税の軽減措置
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に対して課せられる税金です。
所有している不動産が市街化区域内にある場合は、都市計画税も納めなければなりません。
固定資産税は、土地や建物の固定資産税評価額に1.4%をかけて算出されます。
令和4年3月31日までに新築された住宅については、建物部分の固定資産税を計算するときに、以下の期間について固定資産税評価額が1/2減額されます。
- 戸建て住宅:3年間
- マンション等(3階建て以上の耐火・準耐火建築物):5年間
また土地部分の固定資産税や都市計画税を計算するときは、税額の計算対象となる固定資産税評価額が以下のように減額されます。
固定資産税 | 都市計画税 | |
小規模住宅用地 (1戸につき200㎡まで) |
固定資産税評価額×1/6 | 固定資産税評価額×1/3 |
一般住宅用地 (小規模住宅用地以外) |
固定資産税評価額×1/3 | 固定資産税評価額×2/3 |
補助金や減税制度の相談も不動産会社へ
住宅を購入する際の補助金制度や減税制度には、さまざまな種類があるだけでなく、条件や申請方法も複雑です。
利用できる制度をすべてご自身で把握し、活用するのは困難でしょう。
補助金制度や減税制度を検討する際は、不動産会社に相談することをおすすめします。
不動産会社でも補助金制度や減税制度を把握しているため、金銭的な負担を抑えて住宅を購入できる可能性が高まります。
また地域情報に精通した不動産会社では、各自治体の補助金制度についてもアドバイスがもらえるでしょう。
まとめ
補助金制度や減税制度を活用することで、諦めていた方も夢のマイホーム購入に手が届くかもしれません。
補助金制度や減税制度は、内容や条件が複雑であるため、住宅の専門家でなければ理解するのは困難でしょう。
特に補助金制度は、住宅の性能や設備が要件となっているものが多いため、住宅を購入する前に制度の内容や要件を把握するのが望ましいです。
できるだけ多くの補助金制度や減税制度を活用したい方は、信頼できる不動産会社に相談し知識が豊富な担当者を探してみてはいかがでしょうか。
(執筆者:品木彰)