マンション購入後は、住宅ローンとは別に「管理費」や「修繕積立金」を支払う必要があります。
これらの費用は金額によっては家計を圧迫することもあるため、決して見過ごすことはできません。
この記事ではマンション購入後にかかる管理費の相場や、管理費と混同しがちな修繕積立金についても解説します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
マンションの管理費とは?
マンションの管理費とは「マンションの管理にかかる経常的な費用」を指します。
住民が快適に暮らせるよう、マンションを維持管理するために必要な経費です。
例えば管理人の配置費用や共用部分の清掃代、エレベーターや宅配ボックスなどの保守点検料も管理費から支払われます。
国土交通省が定める「マンション標準管理規約(第27条)」では、マンションの「管理費」に該当する事柄について次のように記載しています。
第27条
管理費は、次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。一 管理員人件費
二 公租公課
三 共用設備の保守維持費及び運転費
四 備品費、通信費その他の事務費
五 共用部分等に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料
六 経常的な補修費
七 清掃費、消毒費及びごみ処理費
八 委託業務費
九 専門的知識を有する者の活用に要する費用
十 管理組合の運営に要する費用
十一 その他第32条に定める業務に要する費用(次条に規定する経費を除く。)
マンション管理費の相場
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、1戸あたりの毎月のマンション管理費の平均額(※駐車場使用料等からの充当額を含む)は15,956円です。
形態別では「単体型」の平均額が16,213円、「団地型」の平均額が14,660円という結果です。
※駐車場や専用庭など、使用料の使い道は法律で決まっているわけではありません。そのため、管理組合によっては使用料を管理費に充当するケースもあります。
次の表は、マンションの管理費の相場について「全体・総戸数別・形態別」にまとめたものです。
【毎月の管理費平均額】
※駐車場使用料等からの充当額を含む
※一般的なファミリータイプ:3LDK/78㎡として計算
全体 | 16,926円 | ||
総戸数別 | 20戸以下 | 19,812円 | |
21~50戸 | 16,848~19,032円 | ||
51~100戸 | 15,756~17,160円 | ||
101~500戸 | 15,834~16,848円 | ||
501戸以上 | 16,692円 | ||
形態別 | (単棟型) | ~19階建 | 16,146~20,280円 |
20階建以上 | 23,868円 | ||
(団地型) | 2~10棟 | 16,224~22,152円 | |
11~20棟 | 13,650円 | ||
21~50棟 | 12,558円 | ||
51棟以上 | 24,882円 |
マンションの管理費は、総戸数が多いほど安くなる傾向があります。
しかし例外もあり、タワーマンションの場合は戸数が多くても管理費がかかります。
独自の設備やサービスが充実していることが多いため、タワーマンションは通常のマンションの管理費よりも高くなるのが一般的です。
管理費の決め方
管理費の金額は、マンションの形態や設備、サービスの内容により決定されます。
管理人が24時間常駐していたり、コンシェルジュサービスを採用したりしていれば、管理費は高くなります。
居住者の管理費の金額は、購入する家の専有面積に応じて決められます。
専有面積が広いほど、管理費の負担額も増えます。
マンションの管理費と修繕積立金の違い
マンションを購入すると、管理費のほかに「修繕積立金」の支払いも発生します。
管理費と修繕積立金を混同してしまう人もいるようですが、使用目的が違うため、管理費と修繕積立金は別々に管理されるのが一般的です。
マンションの修繕積立金とは?
管理費が定期的に支払う費用であるのに対し、修繕積立金は、数年~数十年に1度の「大規模修繕工事」に備えるための費用です。
マンションの資産価値を落とさないために、長期的な修繕計画に基づいて積み立てられますが、必要に応じて取り崩すことがあります。
外壁改修工事のほか、共用部分の壁や手すりの塗り替え工事、駐輪場の増設工事などに使われます。
「修繕積立金」に該当する事柄の詳細は、国土交通省「マンション標準管理規約(第28条)」をご覧ください。
マンション購入時に支払う管理準備金・修繕積立基金とは?
新築のマンションを購入するときに「管理準備金」と「修繕積立基金」を一括で支払うのが一般的です。
管理準備金
「管理準備金」とは、月々の管理費を徴収する以前に必要な費用として、契約時に一括で支払う準備金です。
入居後にスムーズにマンションを管理するためには、清掃用具や必要な備品の購入、火災保険への加入といった準備をマンションの引き渡しまでに進めておく必要があります。
管理がスタートした時点では管理費はまだ集まっていないため、事前にまとまった金額を支払います。
修繕積立基金
「修繕積立基金」とは、修繕積立金に充当するための費用として、契約時に一括で支払う費用です。
築10~15年で行われる大規模修繕工事に備え、居住者は管理組合に修繕積立金を毎月納めます。
しかし修繕積立金だけでは費用が不足する可能性もあるため、契約時にまとまった金額を支払い備えておきます。
また大規模修繕工事とは別に補修が必要となるケースでも、修繕積立基金が利用されることがあります。
マンション購入後に管理費・修繕積立金の値上がりもある
マンションの管理費は、補修費の増加や、社会情勢の変化による経費圧迫などで値上がりの可能性があります。
修繕積立金は、大規模修繕工事が行われるタイミングで値上がりするケースが多いようです。
当初は長期的な修繕計画に基づき、概算金額で修繕積立金の額が設定されます。
しかし数年後の修繕工事を行うための資金不足が予想された時、値上げが検討されます。
ちなみにマンションによっては「段階増額積立方式」を採用しているところもあります。
初めは金額を低めに設定し、数年単位で積立金額を増額していく仕組みです。
マンション購入後に管理費を滞納するとどうなる?
管理費を滞納すると、管理会社や管理組合から書面や口頭で督促を受けます。
それでも滞納が続いた場合は、法的手段の実行によりマンションを差し押さえられ、競売にかけられてしまうことがあります。
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全国のマンションの管理費の滞納状況
マンションの維持管理に必要な管理費は、経済状況の変化により滞納してしまうケースがあります。
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、管理費を3ヶ月以上滞納する住戸を抱える管理組合は24.8%と、全体の2割強を占めています。
滞納住戸の割合は総戸数の「1~2%以下」という管理組合が一番多いので、全体数から見れば少ない数値にも思えます。
しかし例え1~2%であっても、滞納が長く続けばマンションの管理水準の低下に繋がる恐れがあります。
参考:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」
マンション購入は管理費・修繕積立金も含めて予算を決めよう!
マンションを購入するとき、管理費や修繕積立金を考慮せずローンを組んでしまう人もいるでしょう。
しかし一般的なファミリータイプの間取りだと、管理費と修繕積立金の支払いに毎月2~3万円は必要です。
支払いが苦しくなり管理費の滞納が続くと、最悪の場合競売でマンションを強制的に手放さなければならないケースもあります。
マンションを購入するときはローンの返済だけではなく、管理費や修繕積立金も含めて資金計画を立てることが大切です。
まとめ
大規模マンションほど管理費は安くなる傾向にありますが、タワーマンションは例外のため注意が必要です。
管理費や修繕積立金は、マンションの購入後もずっと支払いが続きます。
値上がりの可能性も視野に入れて、柔軟にシミュレーションを行った上で無理のない資金プランを立てましょう。
(執筆者:茶谷利津子)