住宅ローンの返済中は、借入額に応じた所得税の税額控除を受けられます。
この手続きは1年目と2年目では内容が異なるため、注意が必要です。
今回は、住宅ローン控除の2年目の手続き方法や必要書類などを解説します。
遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 恒吉 俊哉(つねよし しゅんや)
宅地建物取引士
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、個人が居住用の住宅をローンで購入した場合に、借入額と残高に応じた額を所得税(一部住民税)から控除する制度です。
入居時期や住宅の種類に応じて、最大455万円(※)減税されます。
※ 2022~2023年にまで長期優良住宅・低炭素住宅の新築住宅・または買取再販の住宅に入居した場合
控除を受ける期間は、以下のとおり住宅の種類によって控除期間が決まります。
- 新築住宅・買取再販の中古住宅(要件を満たしたもの):13年
- 中古住宅(既存住宅):10年
控除額は人によって異なりますが、年間数十万円の還付を受けられるケースもあります。
ローンを利用して住宅を購入する場合は、ぜひ利用したい制度です。
住宅ローン控除を受けるために必要な手続き
住宅ローン控除の手続きの方法は、1年目と2年目以降で異なります。
また2年目以降も2通りのパターンがあり、人によってどちらが適用されるかが変わります。
1年目は確定申告が必要
住宅ローン控除を受ける最初の年は、全ての方に確定申告が必要です。
所在地の税務署に期限までに確定申告書を提出する必要があるので忘れないようにしましょう。
なお1年目の確定申告では、住宅の取得関連の証明書など2年目以降は必要ない書類の提出を求められます。
期限が迫ってから慌てないよう、早めに準備を始めるようにしましょう。
住宅ローン控除のための確定申告については、こちらの記事で解説しています。
「住宅ローン控除はどのように申請すればよいのだろうか」 住宅ローンを組んでマイホームを購入した方は、一定の条件を満たすと、住宅ローン控除を適用できます。 住宅ローン控除を受けるためには、必要書類をそろえて確定申告をしなければ[…]
2年目以降は年末調整または確定申告
2年目以降は、年末調整または確定申告で手続きを行ないます。
給与所得者の方は、次項で紹介する必要書類を職場に提出することで、年末調整の特別控除を利用可能です。
一方、個人事業主など所得税の確定申告を行う方は、住宅ローン控除についてもあわせて確定申告で手続きを行ないます。
【2年目以降】年末調整で住宅ローン控除を受ける方法
給与所得者が年末調整で住宅ローン控除を受けるには、期限内に必要書類を用意し、職場に提出する必要があります。
年末調整に必要な書類
年末調整で住宅ローン控除を受ける場合、必要書類は以下の2点です。
- 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
それぞれどのような書類なのか、どのように入手するのか確認していきます。
年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」と「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が1枚の用紙にまとめられて送付されます。
1年目に確定申告で住宅ローン控除の手続きを行なっていれば、毎年10月ごろに勤務先の管轄区域の税務署から送付されてきます。
「特別控除証明書」は、居住開始時期や住宅の取得価格、控除額など住宅ローンの対象となっている住宅の情報です。
これをもとに、上半分の「住宅借入金等特別控除申告書」に記入します。
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
住宅ローンを借入れている金融機関から送られてくる残高証明書です。
金融機関によって名称が違いますが、「10月頃に送られてくる、ローン残高が記載されている書類」と捉えておけば問題ありません。
住宅借入金等特別控除申告書の書き方
住宅借入金特別控除申告書は、あらかじめ記入した上で職場に提出します。
各欄の記入内容は以下の通りです。
① 新築、購入及び増改築等に係る住宅借入金等の年末残高
金融機関送付の残高証明書の内容を記載。
2か所以上から借りている場合は合計額を記入する。
② 住宅借入金等の年末残高
ローンを単独名義で借りている場合は①の内容を転記。
連帯債務で借入れている場合は①に負担割合を乗じた金額を記入。
③ ②と証明事項の取得対価の額又は増改築等の費用の額のいずれか少ない方の金額
控除証明書の「ホ」「ロ」の合計(土地および家屋の取得対価の額)と②を比較し、金額の少ない方を記入。
④ ③×居住割合
控除証明書の「ハ.居住割合」を③に乗じた金額を記入。
⑤ ④の合計額
④の合計額を記入
⑥ 特定増改築等の費用の額
バリアフリー化など「特定増改築等」に該当する工事の借入がある場合、その分の年末残高を記入。
⑦ 特定増改築等の費用の額に係る住宅借入金等の年末残高等
⑤と⑥を比較し少ない方を記入する。
⑧ (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額
⑤×1%の金額を記入。
100円未満は切り捨て。
年間所得の見積額
年間の所得がどの程度になりそうか見込み額を記入。
年内の月間所得金額や昨年の源泉徴収票などを参考にする。
備考欄
連帯債務者としてローンを負担している場合、負担額や他の債務者の氏名と住所、勤務先など概要を記載。
年末調整での住宅ローン控除の手続きを忘れた場合
年末調整で住宅ローン控除の手続きを忘れてしまった場合、確定申告(還付申告)で控除の手続きが可能です。
還付申告は居住の翌年の1月1日から5年間は申告ができます。
住宅ローン控除の還付金はいつ受け取れる?
住宅ローン控除の還付金の受け取り時期は、申請方法によって異なります。
通常、年末調整によって控除を申請した場合や、紙で確定申告を行なった場合は1か月から1か月半程度が一般的です。
年末調整で住宅ローン控除を申請すると、還付金は12月分の給与や賞与と合わせて振り込まれます。
一方e-Tax(電子申告)で確定申告を行う場合は、おおむね3週間程度で振り込まれることが多いでしょう。
まとめ
住宅ローン控除は、借入金の金額とローンの残高に応じて、所得税(一部住民税)の控除を受けられる制度です。
年間数十万円単位で節税できることも多いため、住宅を購入した場合はぜひ活用しましょう。
ただし住宅ローン控除の適用を受けるためには、毎年の年末調整、または確定申告による手続きが必要です。
年末調整を忘れてしまっても確定申告(還付申告)で手続きできますが、こちらも忘れてしまうとさかのぼって手続きできないため注意してください。
年末調整には「住宅借入金等特別控除申告書」および「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(ローン残高の証明書)」が必要となります。
期限ぎりぎりになって慌てないよう、早めに書類を準備・記入しておきましょう。
(執筆者:いちはらまきを)