通常所得税から控除されますが、場合によっては住民税から控除を受けられることもあります。
この記事では住宅ローン控除の概要と、住民税が安くなるケースについて解説していきます。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除は、住宅ローンの借入金額や居住年月に応じ、年末時点でのローン残高の一部の額を所得税・住民税から控除する税制優遇制度です。
取得した物件に6か月以内に入居するなど、諸条件をクリアした場合に申請できます。
住宅ローン控除の控除期間
住宅に入居するタイミングが2022年1月〜2025年12月末までの場合、住宅ローンの控除が受けられる期間は、以下のとおりです。
- 新築住宅・買取再販の中古住宅(要件を満たすもの):13年
- 中古住宅(既存住宅):10年
ただし、新築住宅や買取再販住宅であっても、2024年以降に所定の省エネ基準を満たしていない住宅に入居すると、控除期間は10年となります。
住宅ローン控除の控除額
住宅ローン控除の控除額は「年末時点の借入残高×0.7%」で計算をします。
例えば、年末時点の借入残高が2,000万円であった場合、控除額は最大で「2,000万円×0.7%=14万円」です。
控除の対象になる年末時点の借入残高には、取得する住宅の種類に応じた限度額が設定されています。
借入限度額をもとに、住宅ローン控除の最大控除額を計算すると、結果は以下のとおりとなります。
新築住宅・買取再販の控除額の年間上限額(借入限度額×控除率)
2022〜2023年に入居 | 2024〜2025年に入居 | |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円×0.7%=35.0万円 | 4,500万円×0.7%=31.5万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円×0.7%=31.5万円 | 3,500万円×0.7%=24.5万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円×0.7%=28.0万円 | 3,000万円×0.7%=21.0万円 |
その他の住宅 | 3,000万円×0.7%=21.0万円 | 2,000万円×0.7%=14.0万円※ |
※2023年までに新築の建築確認がされていた場合のみ
既存住宅の控除額の年間上限額(借入限度額×控除率)
2022〜2025年に入居 | |
長期優良住宅・低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
21万円×10年=210万円 |
その他の住宅 | 14万円×10年=140万円 |
住宅ローン控除で住民税が減税されるケース
住宅ローン控除では、通常所得税から控除を受けられます。
しかし、所得税のみでは控除しきれなかった場合、住民税からも控除されます。
例えば、新築の長期優良住宅を購入するとしましょう。
年末時点の住宅ローン残高が4,000万円である場合、控除額は最大28万円です。
住宅を購入した人の所得税額が20万円であった場合、控除額のうち8万円が余ります。
この余りの8万円については、住民税から控除できます。
住民税からの控除限度額
住民税から控除できる金額は、以下のとおりです。
居住したタイミング | 住民税の控除上限額 |
2009年1月〜2014年3月 | 所得税の課税総所得金額等の5%
(最大97,500円) |
2014年4月〜2021年12月 | 所得税の課税総所得金額等の7%
(最大136,500円) |
2022年1月〜2025年12月 | 所得税の課税総課税所得の5%
(最大97,500円) |
例えば、住宅に入居したタイミングが2023年11月であり、所得税から引き切れなかった控除額が15万円であるとしましょう。
住民税から控除できる金額は最大97,500円であるため、残りの52,500円は消滅します。
控除額の余りが翌年の所得税から差し引かれることもありません。
住民税からの控除分の確認方法
所得税から引き切れなかった控除額は、翌年の住民税の所得割(所得に応じて負担する部分)から差し引かれます。
住民税から控除される金額は、毎年6月ごろにお住まいの自治体または勤務先から発行される「住民税決定通知書」で確認できます。
会社員や公務員などは、住宅ローン控除を受けたことで所得税額が減った場合、差額を還付してもらえます。
一方で住民税は、翌年の税額から控除額が差し引かれるため、還付はありません。
住宅ローン控除で住民税が引かれていないケース
ここまでの解説の通り、住宅ローン控除で住民税からの控除があるのは「所得税のみでは控除しきれなかった場合」のみです。
「住民税から全く引かれていない」「住民税からの控除額が予想よりも少ない」という場合は、以下の2つのケースに該当するでしょう。
控除額のすべてを所得税から控除しきれている
住民税の控除を受けられるのは、住宅ローン控除の控除額が所得税を上回っている場合です。
控除額のすべてを所得税から引き切れているのであれば、住民税からの控除はありません。
住民税からの控除上限額を超えている
所得税を差し引いた余りの控除額が住民税からすべて控除されていない場合は、その余った控除額が住民税の控除上限額を上回っていたと考えられます。
住民税からの控除額が「所得税の課税総課税所得の5%」と「97,500円」のどちらか大きい方を上回っているのであれば、超過分は消滅します。
住宅ローン控除の手続き
住宅ローン控除は自動で受けられるわけではなく、税務署への手続きが毎年必要です。
手続きは1年目と2年目以降で異なります。
1年目は確定申告
1年目は住宅ローン控除を希望する全員が、確定申告を行ないます。
1年目の確定申告では、住宅の取得や名義に関するさまざまな証明書類が必要です。
期限に間に合うよう早めに準備をしておきましょう。
住宅ローン控除のための確定申告については、こちらの記事をご覧ください。
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2年目は確定申告または年末調整
2年目以降は人によって手続きが異なります。
個人事業主は確定申告、給与以外の所得がないサラリーマンは年末調整によって手続きが可能です。
1年目とは提出書類が異なるので、抜け漏れのないよう事前に用意しておきましょう。
住宅ローン控除のための年末調整については、こちらの記事をご覧ください。
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住民税からの控除には別途手続きが必要?
住民税から控除を受ける場合、別途の手続きは必要ありません。
市区町村への手続きも不要です。
通常どおり年末調整・確定申告で手続きをすれば、翌年の所得割(所得に応じて負担する部分)から税額が減額されます。
住宅ローン減税とふるさと納税による節税は併用できる?
住宅ローン減税とふるさと納税による節税は併用可能です。
ただしふるさと納税の申告をどの手続きで行うかにより、控除可能な金額が異なります。
ワンストップ特例制度を利用する場合
確定申告を行なわずワンストップ特例制度を利用する場合、住宅ローン減税と併用しても控除額は減少しません。
ワンストップ特例制度を利用すると、ふるさと納税は住民税から全額控除されます。
前述のように住民税からの住宅ローン控除には上限があるため、ふるさと納税の控除分に影響することはありません。
確定申告を利用する場合
確定申告をする場合、住宅ローン控除の金額が減少する場合があります。
これは所得税計算のもとになる課税総所得が、ふるさと納税分を控除した金額で算出されるためです。
所得税の住宅ローン控除の上限は課税総所得によって異なるため、場合によっては控除しきれないこともあります。
まとめ
住宅ローン控除は所得税から控除されますが、所得税だけでは控除しきれない場合は住民税からも控除されます。
所得税からの控除と異なり還付金は出ませんが、翌年の住民税が軽減されます。
住民税からの控除に際し別途手続きは必要ありませんので、通常どおり確定申告か年末調整の手続きを行ないましょう。
なお住宅ローン控除は、ふるさと納税とも併用できます。
ふるさと納税の手続きによって控除額が変化するため、自分の場合はいくら控除されるのか確認してみましょう。
(執筆者:いちはらまきを)