住宅ローン控除は、住宅ローンの残高に応じて所得税・住民税の控除を受けられる制度です。
住宅ローン控除はすべての住宅が対象ではなく、築年数の制限があります。
ただし築年数オーバーの物件も、一定の基準をクリアすることで控除を受けられます。
この記事では、住宅ローン控除の築年数制限と、古い住宅でも控除を受ける方法を紹介します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
住宅ローン控除の築年数制限
住宅ローン控除の対象となる住宅には、築年数による制限が設けられています。
建物の構造別の築年数制限は以下のとおりです。
- 耐火建築物(コンクリート造のマンションなど):25年
- それ以外の建物(木造・軽量鉄骨造など):20年
築年数の数え方
築年数を確認する方法はいくつか存在します。
比較的確認が容易なのは以下の3つの方法です。
- 購入時の重要事項説明書を確認する(新築年月日の記載あり)
- 検査済証の日付(検査済年月日から計算する)
- 登記簿謄本の記載を確認する
築年数が古くても住宅ローン控除を受けるためには
建物の築年数が住宅ローン控除の基準をオーバーしている場合でも、所定の耐震基準を満たしていることを証明できれば、住宅ローン控除を受けることは可能です。
耐震基準に適合していることを証明するには、控除の申請の際に各種証明書を提出しなければなりません。
ただし、基準に満たない場合は改修工事が必要です。
入居前に改修工事を行い、住宅ローン控除の適用対象となった物件への入居までは、以下の流れで進行します。
- 物件を購入する
- 物件の検査を行う
- 証明書の申請
- 引渡しを受ける
- 耐震工事の施工を行う
- 耐震基準適合書など各種証明書の発行を受ける
- 入居
耐震基準の適合を証明する書類として利用できるのは「耐震基準適合証明書」「既存住宅性能評価書」「既存住宅売買瑕疵保険の保険付保証明書」の3種です。
耐震基準適合証明書
耐震基準適合証明書は、新耐震基準を満たした建物であることを証明する書類です。所定の検査機関に申請後に取得します。
耐震基準適合証明書の申請方法
申請先 | 以下のいずれかに申請する ・指定確認検査機関 ・住宅瑕疵担保責任保険法人 ・建築士事務所所属の建築士 ・登録住宅性能評価機関 |
申請者 | 建物の売主(引渡し前に申請を行う場合) または買主(引渡し前に仮申請を行う場合) |
取得にかかる費用 | 証明書の取得:3万円から5万円 耐震診断の受診:10万円から15万円 |
取得にかかる期間 | 最低1か月程度 |
耐震基準適合証明書の取得の流れは、売主が申請する場合、買主が仮申請する場合とで異なりますが以下のとおりです。
取得の流れ(売主が申請する場合)
- 耐震基準適合証明書の申請(売主)
- 検査機関による現地調査
- 耐震補強工事の施工(必要に応じて)
- 証明書の発行を受ける
- 買主に引渡し
取得の流れ(買主が仮申請する場合)
- 耐震基準適合証明書の仮申請(買主)
- 買主に引渡し
- 検査機関による現地調査
- 耐震補強工事の施工(必要に応じて)
- 証明書の発行を受ける
- 入居
買主が仮申請を行い証明書を取得する場合、入居までに補強工事と証明書の発行が必要です。
引渡し後に手続きすると、住宅ローン控除の対象とならないため注意しましょう。
既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)
既存住宅性能評価書は、第三者による中古住宅の性能の評価を記した書類です。
耐震等級にはランク付けがあり、このうち住宅ローン控除を利用できるのは、等級1から等級3の評価を受けた建物です。
既存住宅性能評価書の申請方法
申請先 | 国土交通大臣認定の住宅性能評価機関 |
申請者 | 誰でも申請可能 ※売主か買主のどちらかが申請するのが一般的 |
取得にかかる費用 | 現況調査:5万円~ 個別性能評価:7万円~ |
取得にかかる期間 | 1か月程度 |
住宅性能評価書の取得の流れは、申請者によって異なりますが以下のとおりです。
取得の流れ(売主が申請する場合)
- 既存住宅性能評価書の申請(売主)
- 書類・建築図面の審査と現況調査
- 評価の留保(耐震等級が基準に満たない場合)
- 補強工事(必要に応じて)
- 再検査(必要に応じて)
- 住宅性能評価書の発行
- 買主に引渡す
取得の流れ(買主が仮申請を行う場合)
- 既存住宅性能評価書の仮申請(買主)
- 買主に引渡し
- 書類・建築図面の審査と現況調査
- 評価の留保(耐震等級が基準に満たない場合)
- 補強工事(必要に応じて)
- 再検査(必要に応じて)
- 住宅性能評価書の発行
- 入居
既存住宅売買瑕疵保険の保険付保証明書
既存住宅売買瑕疵保険は、中古住宅に瑕疵(隠れた欠陥)が発見された場合、修繕費用を補償してくれる保険の一種です。
「保険付保証明書」は、この保険への加入を証明する書類です。
加入にあたり住宅の検査が必要となることから、保険への加入によって耐震性能を証明できます。
既存住宅売買瑕疵保険の保険付保証明書の申請方法
申請先 | 住宅売買瑕疵担保保険法人 |
申請者 | 不動産会社から購入する場合:売主 個人間売買の場合:検査事業者 |
取得にかかる費用 | 個別での支払いはなし ※住宅購入価格に含まれるのが一般的 |
取得にかかる期間 | 1週間程度 |
取得の流れ
- 保険の加入手続き(付保証明書の申請)を行う
- 実地検査を行う
- 補強工事(必要に応じて)
- 再検査
- 付保証明書の発行
- 引渡し
住宅ローン控除の申請方法
住宅ローン控除の申請手続きの方法は、1年目と2年目で異なります。
1年目は確定申告、2年目以降は確定申告または年末調整で手続きを行います。
初年度は確定申告
初年度は、住宅ローン控除を利用したい方全員が確定申告を行います。
一般的な必要書類は以下のとおりです。
- 確定申告書AまたはB
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅の売買や取得に関する各種証明書 など
築年数オーバーの住宅で控除を受ける場合、上記の必要書類に加え、前述の各種証明書もあわせて提出します。
住宅ローン控除1年目の必要書類については、こちらの記事で詳細を解説しています。
こちらも参考にしてください。
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2年目以降は確定申告 or 年末調整
2年目以降、給与所得者は年末調整で、個人事業主などは確定申告で申請を行います。
2年目以降の年末調整の手続きに関しては、こちらの記事を参照してください。
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【まとめ】住宅ローン控除は築年数を要確認
中古住宅を購入し、住宅ローン控除を利用する場合、築年数を確認しましょう。
構造に応じて20年または25年の制限があり、基準の築年数をオーバーしていると耐震性能の各種証明書が必要です。
証明書の取得には1か月以上かかることがほとんどです。
性能検査の結果補強工事が必要であれば、取得までの期間はさらに長くなります。
証明書の取得は余裕を持って準備するようにしましょう。
(執筆者:いちはらまきを)