長期優良住宅は、一般的な住宅よりも環境性能に優れています。
長期優良住宅を取得することで、長きにわたって快適に暮らせるだけでなく、税負担や取得コストなどを軽減できる可能性があります。
ただし長期優良住宅にはデメリットもあるため、理解したうえで新築・購入することが大切です。
本記事では、 長期優良住宅のメリットやデメリット、条件についてわかりやすく解説していきます
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
長期優良住宅とは?基準や認定条件を解説
長期優良住宅とは、省エネルギー性能や耐震性能、バリアフリー性能などが一定の基準を満たしている環境性能が高い住宅です。
長期優良住宅と認定されるためには、さまざまな基準や認定条件を満たさなければなりません。
長期優良住宅の基準
長期優良住宅と認定されるためには、長期にわたる使用を前提とした以下A〜Dの措置が講じられている必要があります。
- A:長期に使用するための構造及び設備を有していること
- B:住居環境等への配慮を行っていること
- C:一定面積以上の住戸面積を有していること
- D:維持保全の期間、方法を定めていること
長期優良住宅の認定条件
長期優良住宅は、以下の認定基準を満たす必要があります。
- 劣化対策:数世代にわたって使用できる構造躯体である
- 耐震性:極めて稀な大地震が発生しても容易に改修できるほど損傷レベルを低減できる
- 維持管理・更新の容易性:構造躯体よりも耐用年数が短い設備配管について、点検や清掃などが容易に行える
- 可変性:ライフスタイルの変化に応じて間取りの変更が可能である
- バリアフリー性: 将来的にバリアフリー改修できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されている
- 省エネルギー性:断熱性能等の省エネルギー性能が確保されている
- 居住環境:良好な景観の形成や、地域における居住環境の維持・向上に配慮されている
- 住戸面積:良好な居住水準を満たすために必要な規模を有している
- 維持保全計画:建築時から将来を見据えて定期的な点検や補修等に関する計画が策定されている
なお戸建て住宅と共同住宅では、満たすべき基準が異なります。
例えばマンションを含む共同住宅では、可変性とバリアフリー性の認定基準が設けられていません。
長期優良住宅のメリット
長期優良住宅のメリットは、以下の5点です。
- 長きにわたって快適に暮らせる
- 税の優遇制度が受けられる
- 住宅ローンの金利が優遇される
- 地震保険料が割引となる
- 補助金が受けられる
長きにわたって快適に暮らせる
長期優良住宅は耐震性能が高いため、大地震が発生しても自宅の損害は最小限に抑えられ、修繕をすれば引き続き住み続けられる可能性があります。
また省エネルギー性能が優れておりエアコンや床暖房などが効きやすいため、季節を問わず少ないエネルギーで快適に過ごせる温度に設定が可能です。
このように長期優良住宅は、環境性能の高さによって、長きにわたって快適かつ安心して暮らしていけます。
適切にメンテナンスをすれば、次の世代に引き継ぐことも可能です。
税の優遇制度を受けられる
長期優良住宅では、購入するときや保有するときに負担する税金を優遇してもらえる場合があります。
住宅ローン控除が拡充される
住宅ローン控除とは、住宅ローンを借り入れた人が受けられる税の優遇制度です。
年末時点における借入残高の1%が、所得税から控除されます。
住宅ローン控除の対象となる借入額は、通常であれば年間4,000万円が上限であるため、所得税から差し引かれる金額は最大40万円です。
長期優良住宅を住宅ローンで購入した場合、控除の対象となる借入残高が5,000万円となり、所得税から差し引かれる金額は最大50万円に引き上げられます。
投資型減税を利用できる
投資型減税とは、住宅ローンを利用せず自己資金のみで、耐震性や省エネルギー性能に優れた住宅を購入した場合に、所得税から一定金額が控除される制度です。
控除される金額は、性能を強化するための費用(上限650万円)の10%です。
長期優良住宅を現金で購入すると、要件を満たせば投資型減税を適用できます。
なお投資型減税と住宅ローン控除は、併用できません。
不動産取得税が減税となる
不動産取得税は、住宅を購入する際に1度だけ支払う税金です。
一般的な住宅の不動産取得税は、自治体が定める不動産の価格である「固定資産税評価額」から1,200万円を差し引いた金額の3%です。
長期優良住宅の場合、不動産取得税を計算する際に固定資産税評価額から差し引かれる金額が、1,200万円から1,300万円へと増えるため、税負担が軽減されます。
登録免許税の税率が引き下げられる
住宅を新築した場合は「所有権保存登記」を、すでに建っている住宅を購入した場合は「所有権移転登記」をしなければなりません。
登録免許税は、不動産に関する登記をする際に支払う税金です。
登録免許税の税額は、固定資産税評価額に所定の税率をかけて計算します。
長期優良住宅は、一般的な住宅と比較して以下のとおり低い税率が適用されます。
- 所有権保存登記:0.15%→0.1%
- 所有権移転登記:戸建て0.3%→0.2%、マンション0.3%→0.1%
固定資産税の税率が引き下げられる
固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地や建物などの固定資産を所有している人に課せられる税金です。
固定資産税は、購入から一定期間、税額が1/2に減額されます。
長期優良住宅は、一般的な住宅よりも減税される期間が延長されます。
- 戸建て:1〜3年→1〜5年
- マンション:1〜3年→1〜7年
住宅ローンの金利が優遇される場合がある
民間の金融機関と住宅金融支援機構は、共同で「フラット35」という住宅ローンを提供しています。
フラット35を利用して長期優良住宅を購入した場合、借り入れから10年間の金利が0.25%引き下げられて返済負担を抑えられます。
また長期優良住宅を購入する場合、通常は最長35年である返済期間が最長50年となる「フラット50」を借り入れることも可能です。
地震保険料が割り引かれる
地震保険とは、地震や津波によって住宅に発生した損害を補償する保険です。
地震保険には、耐震性能に応じた割引制度があり、適用されると保険料が30%または50%割引となります。
補助金が受けられる
国土交通省の採択を受けた中小工務店で長期優良住宅を新築すると「地域型住宅グリーン化事業」の補助金を受けられる場合があります。
補助金額は、住宅1戸あたり最大110万円です。
長期優良住宅のデメリット
長期優良住宅には、以下2点のデメリットがあります。
- コストがかかる
- 定期的に点検が必要
コストがかかる
長期優良住宅は、構造部分や住宅設備についてグレードの高いものを選ぶため、一般的な住宅と比較すると建築コストは割高です。
また長期優良住宅の申請をする際に、設計図書類の作成や技術審査や認定などで合計20〜30万円程度の費用がかかります。
ハウスメーカーや工務店に申請のサポートを依頼した場合、さらに費用がかかります。
少しでも金銭的な負担を抑えたいのであれば、ご自身で申請するとよいでしょう。
定期的な点検が必要
長期優良住宅は、継続的なメンテナンスや点検が必要です。
計画通りに維持保全を実施しないと、長期優良住宅の認定が取り消されるかもしれません。
長期優良住宅の定期点検やメンテナンスは、建築前に提出した「維持保全計画」に沿って実施します。
梁・柱など構造耐力上主要な部分や、給排水のための配管設備は、少なくとも10年に1度は点検が必要です。
また地震や台風などが発生した際、場合によっては臨時点検をしなければなりません。
なお住宅の点検や補修をするときは、床下にもぐったり天井に登ったりする必要があるため、建築会社に依頼するのが一般的です。
長期優良住宅の認定を受けるための申請方法
長期優良住宅を建てる場合、原則として着工前に都道府県または市区町村(所管行政庁)へ、所定の申請をしなければなりません。
申請に必要な書類を揃える
長期優良住宅の申請に必要な書類は、以下の通りです。
- 認定申請書
- 設計内容説明書
- 各種図面・計算書
- その他の必要な書類(所管行政庁が必要と認められる書類)
申請の流れ
長期優良住宅を申請する流れは、以下の通りです。
- 技術的審査の依頼(申請者→登録住宅性能評価機関)
- 適合証の交付(登録住宅性能評価機関→申請者)
- 所管行政庁への認定申請(申請者→所管行政庁)
- 認定(所管行政庁)
- 着工/工事完了
登録住宅性能評価機関とは、法律にもとづいて住宅の性能を評価する機関です。
長期優良住宅を取得する場合は、登録住宅性能評価機関に住宅の性能を評価してもらい、性能が一定の基準を満たしていることを証明する適合証を発行してもらう必要があります。
なお工事が完了したら、所管行政庁へ報告が必要です。
また住宅で居住を開始したあとは、作成した維持保全計画に沿って点検や調査、修繕などを行い、その記録の作成や保存をする必要があります。
【まとめ】長期優良住宅の申請前にメリット・デメリットを理解しよう!
長期優良住宅は、耐震性能や省エネ性能、バリアフリー性能などが優れているため、取得すると長きにわたって住み続けられる可能性があります。
また税金の優遇や住宅ローンの金利優遇、地震保険料の割引など、長期優良住宅には多くのメリットがあります。
ただし長期優良住宅は、取得するためのコストが一般的な住宅と比較して高額です。
また長期優良住宅を建築したあとは、事前に立てた計画に沿ったメンテナンスや点検が必要です。
長期優良住宅には基準や条件が設けられているため、取得を検討している方は信頼できる不動産会社に相談するとよいでしょう。
(執筆者:品木 彰)