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手付金とは?相場や不動産取引における役割、保全措置などを解説

戸建て住宅やマンションをはじめとした不動産を購入する場合、買主は売主に手付金を支払うのが一般的です。

不動産の売買契約がキャンセルとなった場合、手付金が戻ってくるケースもあれば、戻ってこないケースもあるため、仕組みを理解したうえで支払う必要があります。

本記事では、手付金の役割や金額の相場などをわかりやすく解説します。

遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)


宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

手付金とは?

手付金

手付金とは、不動産の売買契約を結ぶ際に買主が売主に対して支払う金銭です。
不動産取引では、売買契約の締結から物件の引渡しまで、1か月を超えるケースが珍しくありません。

もし契約締結から引渡しまでのあいだに、買主から契約をキャンセルされた場合、売主は再び売却活動をすることになります。
一方、売主の都合で契約解除になると、買主は再び物件探しをしなければなりません。

このような事態を防ぐために、どちらかが気軽にキャンセルできないよう、売買契約時に買主は売主に手付金を支払います。

手付金の種類

手付金には、以下2点の役割があります。

  • 解約手付
  • 違約手付

解約手付

解約手付とは、簡単にいえばお金を支払えば解約する権利が与えられることをいいます。

解約手付として手付金が支払われている場合、買主は手付金を放棄して契約解除の意思表示をすると損害賠償を支払うことなく契約をキャンセルできます。

この場合、支払った手付金は売主のものとなり、買主のもとには戻ってきません。
一方、売主が契約をキャンセルする場合、手付金の倍額を買主に返還します。

違約手付

違約手付とは、債務不履行により契約解除をする場合の違約金として、手付金を支払うことです。

買主に債務不履行があり契約解除となった場合、手付金は売主に没収されます。
売主の債務不履行で契約解除となった場合は、手付金を買主に返還したうえで、手付金と同額を買主に支払わなければなりません。

手付金の支払い方法とタイミング

手付金を支払うタイミングは、不動産の売買契約を結ぶときです。

不動産取引における手付金

手付金

不動産取引において、手付金は「解約手付」として支払われるのが一般的です。
不動産の売買契約を結んだあと、売主または買主は「手付解除」をすることで、契約を一方的にキャンセルできます。

なお手付金は、物件が売主から買主へ引き渡され、残代金が決算されるタイミングで、売買代金に充当されるのが一般的です。

手付解除とは

手付解除とは、買主が手付金を放棄する、もしくは売主が手付金の倍額を買主に支払うことで、売買契約を解除できることをいいます。

例えば手付金の額が100万円であったとしましょう。
買主が手付解除をすると、手付金として支払った100万円は売主に没収されます。
売主が手付解除をする場合、手付金として支払われた金額の倍である200万円を買主に対して支払わなければなりません。

手付解除ができるのは、売主または買主が契約の履行に着手するまでです。
例えば「売主が売却予定の不動産の損傷箇所を修繕しはじめた」「買主が残代金を決済した」などの場合は、契約の履行に着手したとみなされます。
ただし実際の不動産取引では、多くの場合、売買契約書に手付解除の期日が明記されています。

住宅ローン審査に落ちると手付金は返還される

不動産の売買契約で「住宅ローン特約」が設定されていた場合、住宅ローンの本審査に落ちて契約がキャンセルになったとしても、手付金は買主に返還されます。

住宅ローンの本審査を申し込むのは、不動産の売買契約を締結するときです。
住宅ローンの本審査に落ちることがないよう、売買契約を締結する前に事前審査をするのが一般的です。
しかし事前審査に通過しても「本審査までに新たな借り入れをしていた」「事前審査で事実と異なる内容を告げていた」などの理由で本審査に落ちるケースがあります。

売買契約書で住宅ローン特約が設定されている場合は、本審査で落ちて売買契約がキャンセルになっても、手付金は買主に返還されます。

住宅ローン特約が適用されないケース

ただし住宅ローン特約が設定されていても、本審査で落ちたときに必ず手付金が返還されるわけではありません。
「住宅ローンの契約書に不備があった」「審査の結果、金融機関が提示した条件に納得できず借り入れを拒否した」など、住宅ローン特約が適用されないケースもあります。

手付金の相場は売買代金の5〜10%

手付金

手付金の相場は、売買代金の5〜10%です。
仮に売買代金が3,000万円であった場合、手付金は150万〜300万円が相場となります。
手付金の額を安くしすぎると、買主や売主が契約を気軽にキャンセルしやすくなります。
かといって手付金を高くしすぎると、契約をキャンセルしにくくなるでしょう。

そのため手付金は、売買代金の5〜10%程度に設定されるのが一般的です。
100万円を超えるケースは珍しくないため、手付金の支払いも考慮したうえでマンション購入の資金計画を立てることが大切です。

なお売主が不動産会社である場合の手付金は、 法律で「売買代金の20%が上限」と定められています。

手付金の保全措置とは

手付金

手付金の保全措置とは、売主側の都合で売買契約がキャンセルになったときに手付金が買主に返還されるよう第三者に保管してもらうことをいいます。
手付金だけでなく、内金や中間金も保全措置の対象です。

例えば手付金を支払ってから不動産が引き渡されるまでに、売主である不動産会社が倒産して契約がキャンセルとなった場合、手付金が買主に返還されない恐れがあります。
売主の事情で売買契約がキャンセルになった場合でも、手付金が確実に買主へ返還されるよう、売主である宅建業者(不動産会社)は保全措置を講じなければなりません。

手付金の保全措置を講じる際は「銀行等による保証」または「保険事業者による保証保険」のどちらかを選択します。

手付金の保全措置の要件

手付金の保全措置の対象となるのは、次の要件を満たす場合です。

工事が完了している建物の売買

  • 手付金等の合計が、売買代金の10%または1,000万円を超えるとき

工事が完了する前の建物の売買

  • 手付金等の合計が、売買代金の5%または1,000万円を超えるとき

なお保全措置の対象となるのは、売主が宅建業者、買主が宅建業者以外である不動産売買契約です。

手付金の保全措置が不要となるケース

手付金の額が要件を下回る場合、保全措置は不要です。

例えば工事が完了している建物の売買において、売買代金が3,000万円、手付金額が200万円であったとしましょう。
このケースでは手付金の額が、売買代金の10%(300万円)と1,000万円の両方を下回っているため、保全措置の対象外です。

また売主が宅地建物取引業者でない場合、手付金の保全措置を講じる必要はありません。
売主が個人である場合は、手付金の額にかかわらず保全措置の対象外となります。

手付金を支払う前に確認すべきポイント

手付金

売買契約時に手付金を支払う場合には、ここでご紹介する2点を確認しましょう。

手付金が返ってくる条件を確認する

買主の力では防ぎようがない理由によって契約解除となった場合された場合、手付金を返還してもらえる場合があります。

例えば地震や津波などの自然災害などで、契約した物件が大規模な損害を負って売買契約が解除となった場合、手付金は買主に返還されます。
また買主が居住中の物件を売却ができず、新しい物件が購入できなくなったことで売買契約が解除となった場合、手付金が返還される場合もあります。

手付金が返還される条件は、多くの場合、売買契約書に明記されています。
手付金を支払う前に、売買契約書に記載されている返還条件を確認しましょう。
売買を仲介する不動産会社の担当者に説明してもらうと安心です。

不動産会社が一般保証制度に加入しているか確認する

一般保証制度は、不動産保証協会が提供する手付金の保全制度です。
不動産保証協会に加入している不動産会社が売主であった場合、手付金が少額であり保全措置の対象外であっても、一般保証制度によって手付金の返還を保証してもらえます。

一般保証制度は無料で利用でき、保証される金額は最大で1,000万円です。
売主が不動産会社である場合は、不動産保証協会に加入し一般保証制度を利用できるか確認しましょう。

【まとめ】不動産を売買する前に手付金の意味や相場を理解しよう

不動産の売買における手付金は、売主または買主が売買契約を締結したあとに、気軽にキャンセルするのを防ぐためのものです。
売買契約を結ぶ際、買主は売買代金の5〜10%の手付金を支払うのが一般的です。
戸建て住宅やマンションを購入する際は、手付金の支払いも考慮して資金計画を立てましょう。
手付金の仕組みについて不明点がある場合は、売買契約を結ぶ前に不動産会社に確認することが大切です。
(執筆者:品木 彰)

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