中古マンションは、新築マンションよりも価格が安く、立地などの条件が希望に合致する物件が見つかりやすいというメリットがあります。
しかし築年数が経っている物件では、リフォームが必要なことも少なくありません。
中古マンションをリフォームするときの金銭的な負担を抑えたいのであれば、補助金制度を利用できないか確認してみると良いでしょう。
本記事では、中古マンションをリフォームする時に利用できる可能性がある補助金制度を解説します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
中古マンションのリフォームで利用できる補助金
2023年4月現在、中古マンションのリフォームをするときに利用できる可能性がある主な補助金制度は、以下のとおりです。
- 既存住宅の断熱リフォーム支援事業
- 次世代省エネ建材の実証支援事業
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
- こどもエコすまい支援事業
既存住宅における断熱リフォーム支援事業
既存住宅における断熱リフォーム支援事業は、
高性能建材(断熱材・ガラス窓など)や家庭用蓄電システム、熱交換型換気設備などを用いたリフォーム費用の1/3が補助される制度です。
補助の対象となるリフォームは、以下のとおりです。
- トータル断熱:15%以上の省エネ効果が見込まれる改修率を満たす高性能建材(断熱材・窓・ガラス)を用いた所定の断熱リフォーム
- 居間だけ断熱:居間に高性能建材(窓)を用いた断熱リフォーム
※出典:北海道環境財団「既存住宅の断熱うリフォーム支援補助金について」
※居間とは、日常生活の中心であり、家族全員の在室時間がもっとも長い居室のこと。
2023年からは居間の窓のみをリフォームして所定の要件を満たしたときも、補助の対象となりました。
マンション(集合住宅)における補助金の上限額は、以下のとおりです。
補助対象製品 | 補助金の上限額 |
高性能建材 (ガラス・窓・断熱財・玄関ドア) |
集合住宅1戸ごとに15万円 (玄関ドアも回収する場合は1住戸あたり20万円) |
熱交換型換気設備等 | 5万円 |
トータル 断熱と居間だけ断熱のどちらの場合でも、補助金額の上限に違いはありません。
また所定の要件を満たせば、社宅を含む 賃貸住宅も補助の対象となります。
次世代省エネ建材の実証支援事業
次世代省エネ建材の実証支援事業は、高性能な断熱材や蓄熱・調湿などの次世代省エネ建材を用いたリフォームをすると、補助金が交付される制度です。
※公簿期間を定め、先着順に受付します。
※公簿期間中に申請金額の合計が予算に達した際は、その直前の日の17時までに届いた申請書を受付対象とし、それ以降の申請は原則受理しませんので注意してください。
中古マンションの場合「内張り熱による居室を中心としたリフォーム」をしたとき、費用の最大1/2が補助されます。
内張り断熱は、室内の内側から断熱パネルや潜熱蓄熱建材などを張り付ける工法です。
マンション(集合住宅)における補助の上限額は、1戸につき125万円となります。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、住宅の寿命を伸ばしたり省エネ化したりするための性能向上リフォームや、子育て世帯向けのリフォームを支援する補助金制度です。
窓やドアを断熱性能が高い製品に交換したり、手すりの設置や段差の解消などの工事をしたりすると、補助の対象となる場合があります。
補助金額は、補助対象リフォーム工事にかかった費用の1/3です。
補助金の限度額は、以下のとおりです。
リフォーム後の住宅性能 | 補助金の限度額 |
長期優良住宅(増改築)認定を取得しないものの一定の性能向上が認められる場合 | 100万円/戸 (150万円/戸) |
長期優良住宅(増改築)認定を取得した場合 | 200万円/戸 (250万円/戸) |
※カッコ内の金額は、三世代同居対応改修工事を実施する場合、若者・子育て世帯又は既存住宅の購入者が改修工事を実施する場合、一次エネルギー消費量を基準比▲20%(再エネを除く)とする場合
長期優良住宅リフォーム推進事業を受けるためには、以下3つの条件を満たす必要があります。
- インスペクションを実施し、維持保全計画・履歴を作成する
※インスペクションとは、住宅の専門家である既存住宅状況調査技術者が実施する建物検査 - 工事後に耐震性と劣化対策、省エネルギー性が確保されること
※出典:国土交通省
長期優良住宅リフォーム推進事業は、原則として個人ではなくリフォーム工事の施工業者を通じて申し込みます。
また工事内容やマンションの管理規約によっては、管理組合を通じて業者に工事を依頼しなければなりません。
こどもエコすまい支援事業
こどもエコすまい支援事業とは、省エネ性能を有する住宅の新築や省エネリフォームなどをすると、補助金が交付される制度です。
本来であればこどもエコすまい支援事業は、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象とした制度ですが、住宅のリフォームであれば一般世帯も補助金の対象となります。
補助金の対象となるのは、以下の工事費用が5万円以上となるリフォームをした場合です。
改修工事の種類 | |
省エネ改修 | 以下のいずれか必須 ・内窓設置や外窓交換、ガラス交換など開口部の断熱改修 ・「外壁」、「屋根・天井」または「床」の断熱改修 ・節水型トイレや高断熱浴槽などエコ住宅設備の設置 |
必須工事と同時に行う場合のみ補助対象 | ・子育て対応改修 ・バリアフリー改修 ・耐震改修 ・空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置 ・リフォーム瑕疵保険等への加入 |
補助金の上限額は、以下のとおりです
子育て世帯・若者夫婦世帯
- 既存住宅を購入してリフォームをする場合:最大60万円/戸
- 上記以外のリフォームをする場合:最大45万円/戸
※子育て世帯とは、申請時点において、2004年4月2日以降に出生した子を有する世帯
※若者夫婦世帯とは、申請時点において夫婦であり、いずれかが1982年4月2日以降に生まれた世帯
一般世帯
- 既存住宅(安心R住宅に限る)を購入してリフォームをする場合:最大45万円/戸
- 上記以外のリフォームをする場合:最大30万円/戸
自治体独自の補助金制度
自治体によっては、住宅のリフォームをする人向けに独自の補助金制度を実施している場合があります。
例えば静岡県の浜松市では、高齢者の心身の状況によって日常生活に支障がある場合、住宅を改造する費用の一部を補助してもらえます。
対象となる工事は、手すりの取り付けや段差の解消、床または通路面の材料の変更などの工事です。
補助金額は「(補助対象経費×補助率1/2)−他制度による補助額」で算出されます。
補助対象経費×補助率1/2の限度額は75万円ですが、厚生労働大臣が定める地域にある場合は100万円となります。
補助金制度の有無や補助内容は、自治体によって異なります。
中古マンションを購入してリフォームをする際は、お住まいの自治体のホームページで補助金制度が実施されていないか確認してみましょう。
中古マンションのリフォームに介護保険を利用できるケース
手すりの取り付けや段差の解消、扉・トイレの交換などをすると、公的介護保険からリフォーム費用を支給してもらえる場合があります。
公的介護保険は、所定の介護が必要な状態になったときに、介護サービスが受けられる公的な保険制度です。
40歳以上の人は、原則全員が加入して介護保険料を納めており、要介護状態または要支援状態になると、所定の介護サービスを1〜3割の自己負担で受けられます。
介護が必要な状態になり、要介護または要支援の認定を受けると、住宅改修費用の最大9割を支給してもらえます。
支給の対象となる住宅改修費用は、利用者1人につき最大20万円です。
リフォームで「フラット35」の金利が引き下げられることも
フラット35は、民間の金融機関と住宅金融支援機構が共同で提供している住宅ローンです。
金利の種類は「全期間固定金利」であるため、住宅ローンの完済まで金利は変動しません。
フラット35には、所定の要件を満たすと金利が引き下げられるプランがあります。
金利引き下げプランの一種である「【フラット35】リノベ」を適用できると、所定のリフォーム工事をしたときに、借入金利が一定期間にわたって年0.25%または0.5%に引き下げられます。
金利の引き下げ期間は、金利Aプランが借入当初10年間、金利Bプランが当初5年間です。
金利Aプランと金利Bプランは、リフォーム工事費や住宅の環境性能などの要件が異なります。
金利Aプランのほうが、金利引き下げ期間が長いぶん、条件は厳しくなります。
中古マンションのリフォームで利用できる減税制度
中古マンションを購入してリフォームをする場合、所定の要件を満たすと減税制度を利用できることがあります。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)
住宅ローン控除は、住宅ローンを組んだ人が所得税や一部の住民税を軽減してもらえる税の優遇制度です。
リフォームをするためにリフォームローンを組んだときも「リフォームの工事費用が100万円超」などの要件を満たすと、住宅ローン控除の対象となります。
住宅ローン控除では、年末時点におけるローン残高の0.7%分の減税を受けられます。
中古マンションを購入した場合、控除を受けられる期間は最長10年です。
宅地建物取引業者が買い取ってリフォーム工事を行い、再販する物件を購入したときは、控除期間が最長13年となります。
制度の対象となる借入限度額は、売主が個人である中古マンションの場合、最大2,000万円です。
※認定長期優良住宅や認定低炭素住宅など、所定の省エネ性能を持った中古マンションを購入したときは、最大3,000万円
2022年の税制改正によって、住宅ローン控除の内容が変更されました。 控除額の計算方法や控除期間の決まり方、借入限度額などが変更されたことで、これまでとは所得税や住民税の軽減効果に違いがあります。 本記事では、2022年に改[…]
リフォーム促進税制
リフォーム促進税制とは、自ら住むための住宅に一定の性能向上改修工事をした場合に、改修後居住を開始した年の所得税から一定金額が控除される制度です。
ローンを組まずにリフォームをした場合も、所定の要件を満たせばリフォーム促進税制を適用して控除を受けられます。
所得から控除される金額は、以下のAとBを合計して求めます。
A:性能向上リフォーム※1費用※2※3 のうち控除率10%の限度額※4までの 10%
B:以下aとbの合計金額※1※3 × 5%
a:性能向上リフォーム費用※2※3のうち上限額Aを超える額
b:A以外の増改築等工事の費用※3※5に要した額
※1.耐震・バリアフリー・省エネ・同居対応・長期優良住宅化リフォーム
※2.国が定めた標準的な工事費用相当額の合計額
※3.交付されている補助金があれば、受け取った金額を差し引く
※4.控除率10%の限度額は、工事の種類に応じて200万円~600万円となります
※5.実際にかかった工事費用の合計額
リフォーム促進税制の対象となる改修工事の種類や最大控除額は、以下のとおりです。
〇耐震リフォーム
・対象:現行の耐震基準に適合する改修工事
・最大控除額:62.5万円
・対象:高齢者や障害者などの家族が安全に暮らせるためのリフォーム
・最大控除額:60万円
・対象:住宅の省エネ性能を上げるためのリフォーム
・最大控除額:62.5万円または67.5万円※
※省エネ改修工事とあわせて太陽光発電設備設置工事をする場合
・対象:親世帯や子ども世帯などが同居できるように住宅環境を整備するためのリフォーム
・最大控除額:62.5万円
・対象:住宅の耐久性を向上させるリフォームを行って長期優良住宅(増改築)認定を取得した場合
・最大控除額:
┗耐久または省エネ+耐久向上:62.5万円
┗aとあわせてあわせて太陽光発電設備設置工事をする場合:67.5万円
┗耐久+省エネ+耐久向上:75万円
┗cとあわせてあわせて太陽光発電設備設置工事をする場合:80万円
所得税の控除を受けるためには、リフォームの種類ごとに定められた要件を満たす必要があります。
マンションをリフォームするときは、リフォーム促進税制の対象となるかどうかを、不動産会社やリフォーム会社などに確認をすると良いでしょう。
固定資産税の減税
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物などの固定資産を所有している人に課せられる税金です。
税額は「固定資産税評価額×1.4%」で計算されます。
所定の要件を満たすリフォーム工事をした場合、工事をした住宅にかかる固定資産税評価額が減額を1年度分受けられます。
軽減額と対象となる家屋の限度面積は、以下のとおりです。
軽減額 | 減額の対象となる家屋面積 | |
耐震リフォーム | 固定資産税評価額の1/2 | 120㎡相当分まで |
バリアフリーリフォーム | 固定資産税評価額の1/3 | 100㎡相当分まで |
省エネリフォーム | 固定資産税評価額の1/3 | 120㎡相当分まで |
長期優良住宅化リフォーム | 固定資産税評価額の2/3 | 120㎡相当分まで |
住宅取得等資金に関する贈与税非課税措置
住宅取得等資金に関する贈与税非課税措置とは、親や祖父母などの親族からマイホームを購入するための資金を贈与されたとき、一定金額まで贈与税が非課税となる制度です。
1年間に贈与された財産が、合計110万円以内であれば贈与税はかかりません。
住宅取得等資金に関する贈与税非課税措置を適用できれば、110万円に加えて以下の金額までの贈与が非課税となります。
- 耐震、省エネまたはバリアフリーの住宅用家屋 1,000万円
- 上記以外の住宅用家屋 500万円
※出典:財務省「令和4年度税制改正の大綱」
補助金制度は併用できる?
住宅で行ったリフォーム工事が、複数の補助制度の要件に該当する場合、併用できないことがあります。
例えば「こどもエコすまい支援事業」を利用する場合、制度の対象となるリフォーム工事については、国が実施する他の制度から補助金を重複して受けることはできません。
また補助金制度は、減税制度とも併用できますが、軽減額を計算する際に受け取った給付金額が考慮されることがあります。
例えばリフォーム促進税制では、控除額を計算するとき、制度の対象となる工事費用からすでに受け取った補助金額が差し引かれます。
リフォームの補助金の取り扱いは制度によって異なるため、適用を検討している制度の内容を事前に確認しておきましょう。
リフォームで補助金を利用する際の注意点
補助金制度を利用するためには、所定の期間内に申請をしなければなりません。
また申請期間内であっても、予算の上限に達したことで制度が終了する場合があります。
リフォーム工事の際に補助金を利用したいと考えている方は、スケジュールを確認のうえ、早めに申請することをおすすめします。
【まとめ】中古マンションをリフォームするなら補助金を活用しよう
中古マンションを購入してリフォームをして、所定の要件を満たすと補助金を受けて費用負担を軽減できる可能性があります。
また中古マンションの購入時は、住宅ローン控除や住宅取得等資金に関する贈与税非課税措置などを利用することで、金銭的な負担がさらに軽減されるでしょう。
中古マンションを購入するときは、不動産会社の担当者に利用できる補助金や減税制度がないか聞いてみることをおすすめします。
(執筆者:品木 彰)