「中古マンションの価格はこれから安くなるのだろうか」と気になっている人も多いのではないでしょうか。
マンション価格は、不動産市況や経済の動向などさまざまな要因で変動するため、一概にはいえません。
しかし、これまでの傾向からある程度の予測は立てることができます。
本記事では、中古マンションの価格推移や2024年の価格予想、中古マンションが安くなる時期などをわかりやすく解説します。
遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 恒吉 俊哉(つねよし しゅんや)
宅地建物取引士
2023年における中古マンション価格の推移
まずは、マンション価格に大きく影響する近年の地価と2023年の中古マンション価格を解説します。
地価は上昇傾向
2023年1月1日の公示地価(全国2万か所以上にある基準地の標準価格)は、住宅地・商業地・全用途平均のすべてにおいて2年連続で上昇しました。
エリアごとに住宅地の上昇率をみると、結果は以下のとおりとなります。
エリア | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
全国 | −0.4 | 0.5 | 1.4 |
三大都市圏 | −0.6 | 0.5 | 1.7 |
東京圏 | −0.5 | 0.6 | 2.1 |
大阪圏 | −0.5 | 0.1 | 0.7 |
名古屋圏 | −1.0 | 1.0 | 2.3 |
地方圏 | −0.5 | 0.5 | 1.2 |
地方四市 | 2.7 | 5.8 | 8.6 |
その他 | −0.6 | −0.4 | 0.4 |
※出典:国土交通省「令和5年地価公示の概要」
※地方四士は札幌市・仙台市・広島市・福岡市
2021年1月1日における住宅地の公示地価は、前年よりも全国的に下落しました。
新型コロナウイルス感染症の影響により、経済活動が自粛されたことが主な要因です。
しかし、2022年公示地価は前年よりも上昇に転じており、2023年は全国的に上昇率が増加しました。
住宅地の公示地価の上昇は、新型コロナウイルス禍が開けて景気が回復したことに加え、依然として住宅に高い需要があることも意味しています。
都市部の住宅は価格が高い傾向にあるものの、低水準の住宅ローン金利と住宅ローン控除をはじめとした住宅取得支援策により、引き続き安定した需要があります。
また、コロナ禍でテレワークを導入する企業が増えたなどの理由で人々の働き方や生活が変化し、郊外や地方の住宅需要も増加しました。
地域によっては住宅地の公示地価は下がっていますが、こうした背景から全体的には地価が上昇したと考えられます。
中古マンション価格は上昇が続く
中古マンションの価格は、前年と比較して上昇しています。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)における中古マンション価格は、以下のとおりです。カッコ内は前年同月比です。
㎡単価 | 価格 | |
2023年1〜3月 | 69.02万円(+7.7%) | 4.366万円(+6.2%) |
2023年4〜6月 | 71.15万円(+6.0%) | 4.556万円(+7.0%) |
2023年7〜9月 | 72.69万円(+6.3%) | 4.621万円(+6.1%) |
※出典:東日本不動産流通機構「年報マーケットウォッチ」
2023年の首都圏における中古マンション価格は、いずれの期間も㎡単価と価格の両方で前年同期比を上回っています。
特に、東京都区部にある中古マンションの成約㎡単価は、2013年1〜3月期から43四半期連続で前年同期を上回りました。
また、横浜・川崎市と埼玉県、千葉県は13四半期連続、神奈川県他は11四半期連続で前年同期を上回っており、首都圏では継続的に中古マンション価格が上昇していることが見て取れます。
2022年までの中古マンション価格はどのように推移した?
さらに長期的なスパンで中古マンションの価格推移を見ていきましょう。2022年までのマンション価格はどのように推移してきたのでしょうか。
国土交通省の調査によると、2010年の平均価格を100とした場合の不動産価格は、以下のとおりです。
※画像引用:国土交通省「不動産価格指数(令和5年8月令和5年第2四半期分)」
2008年に発生した「リーマンショック」の影響により、マンションの価格は下落しはじめました。
しかし、2013年ごろからマンション価格は急上昇しています。これは、アベノミクスやマイナス金利政策、東京オリンピックの開催などが主な要因です。
2020年の4〜5月ごろに新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、マンション価格は一時的に下がったものの、再び上昇に転じています。
その後は、建築資材価格と人件費の高騰により、マンション価格は上昇を続けています。
これは、コロナ禍が明けたことによる経済活動の再開やロシア・ウクライナ情勢、日米の金利差が拡大したことによる円安が要因です。
2022年の東日本不動産流通機構の調査によると、首都圏における中古マンションの価格は、成約物件㎡単価と成約価格の両方が10年連続で上昇しています。
特に成約物件㎡単価は、10年間で76.1%も上昇しました。
※出典:東日本流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」
2021年に東京オリンピックが終了したあとは、マンション価格が下がるという見方もありましたが、実際には価格の下落は起きず上昇を続けています。
2024年以降の中古マンション価格はどう推移する?
では、2024年以降のマンション価格はどのように推移するのでしょうか。
ここでは、2024年の中古マンション価格を考えます。
マンション価格の二極化が進む可能性がある
2023年1月1日における住宅地の公示地価の変動率を都道府県別にみると、結果は以下のとおりです。
※画像引用:国土交通省「令和5年地価公示の概要」
黄色やオレンジ色などのエリアは住宅地の公示地価が前年から上昇しており、水色や青のエリアは前年から下落していることを表しています。
先ほど、住宅地の公示地価は全国的に上昇しているとお伝えしましたが、実際には地価が下落しているエリアも多いのが現状です。
続いて、住宅地の公示価格が近年どのように推移しているのかを都道府県別にみていきましょう。結果、以下のとおりです。
※画像引用:国土交通省「令和5年地価公示の概要」
東京都や千葉県などの首都圏、宮城県や福岡県といった政令指定都市があるエリアなどは、住宅地の公示地価が上昇傾向にあるといえます。
しかし、その一方で多くの地方都市で地価は下がり続けており、価格が上昇し続けるエリアとの二極化が進んでいることが見て取れます。
日本経済が急速に衰退したり不動産市況が極端に低迷したりしない限り、2024年も価格の二極化は進むといえるでしょう。
都市部でも中古マンション価格が安くなる可能性はある
二極化が進むといわれている一方で、都市部のマンション価格が上昇し続けるわけではありません。
マンション価格が下がりはじめている都市部もあります。
東京カンテイの調査によると、2023年の10月における主要都市別の中古マンション価格(床面積70㎡あたり金額)は、以下のとおりです。
※画像引用:株式会社東京カンテイ「三大都市圏・主要都市別/中古マンション70㎡価格月別推移」
東京23区は、2023年も中古マンション価格が上昇傾向にありますが、横浜市やさいたま市、千葉市ではほぼ横ばいとなっています。
大阪市や名古屋市、神戸市では、中古マンション価格が緩やかに下がっています。
2024年は、都市部でもエリアによっては中古マンションも価格が徐々に下がるかもしれません。
安さだけでマンションを選ぶと将来的に資産価値が下がる可能性も
将来的に価格が上昇する可能性があるのであれば、価格が安いタイミングでマンションを購入するのも1つの方法です。
しかし、価格の安さだけでマンションを選んでしまうと、将来的に資産価値が下がって安値でしか売却できなくなるかもしれません。
価格が安いタイミングを狙ってマンションを買うとしても、将来的な資産価値をよく考えて選ぶことが大切です。
資産価値の維持や上昇が期待できるマンションの特徴の例は、以下の通りです。
- 最寄り駅から都市部へアクセスしやすい
- 子育て支援策が充実している
- 商業施設があり利便性が高い
- 再開発の予定がある など
地方都市であっても、上記に該当するエリアのマンションであれば、将来的に価格が上昇する可能性は充分に考えられます。
2024年に中古マンションを購入するのであれば、不動産会社ともよく相談し、資産価値の上昇が期待できるエリアを慎重に選ぶことも重要なポイントの1つになるでしょう。
中古マンションの価格が安くなる時期はいつ?
長期的な中古マンションの価格推移に着目すると同時に、短期的な価格の変動についても理解しておくことが大切です。
中古マンションの価格は、1年のなかでも変動していまし。
中古マンションの価格が下がりやすい時期は、一般的に7〜8月と11〜12月といわれています。
毎年1〜3月は、新生活に向けてマンションを購入しようとする人が増えて需要が高まります。
また毎年9〜10月は、多くの企業で秋の異動があるためマンションを探す人が増える傾向にあります。
一方で毎年7〜8月や11〜12月は閑散期と言われており、需要も落ち着いていることから、マンションの価格は安くなりやすいです。
では実際のマンション価格は、どのように推移しているのでしょうか。
ここで、2022年における東京都と静岡県の中古マンションの㎡単価(1㎡あたりのマンション価格)をみていきましょう。
(単位:万円)
東京都 | 静岡県 | |
2022年1月 | 86.37 | 28.47 |
2022年2月 | 83.11 | 27.34 |
2022年3月 | 88.26 | 39.85 |
2022年4月 | 91.94 | 31.50 |
2022年5月 | 87.62 | 28.05 |
2022年6月 | 90.27 | 25.97 |
2022年7月 | 91.71 | 25,55 |
2022年8月 | 91.34 | 25.03 |
2022年9月 | 90.94 | 24.37 |
2022年10月 | 94.32 | 26.01 |
2022年11月 | 93.93 | 32.01 |
2022年12月 | 92.51 | 27.27 |
※出典:東日本不動産流通機構「月例速報 Market watch(全国版)」
東京都の場合は、必ずしも閑散期に価格が下がっているわけではなく、特に2022年11月の㎡単価は、1年を通じて2番目に高い結果となりました。
静岡県については、繁忙期である3月の㎡単価が1年を通じてもっとも高く、7〜8月の㎡単価が下がっています。
一方で、一般的に繁忙期といわれている9月の㎡単価は下がっているため、実際には、需要が高まりやすい時期だからといってマンション価格が上がるとは限らないといえます。
中古マンションが安くなる時期を狙って購入するのはおすすめできない
中古マンション価格は1年を通じて変動していますが、安い時期を狙って購入することはおすすめできません。
その理由は、以下のとおりです。
- 実際にはあまり価格差がないことがある
- 希望する物件を逃す可能性がある
- 住宅ローン金利が変動する可能性がある
- 団体信用生命保険に加入できなくなる可能性がある
実際はあまり価格差がないことがある
中古マンションの価格が高い時期と安い時期の差は、わずかであるケースもあります。
また閑散期だからといって、価格交渉がしやすくなるとも限りません。
そのため安い時期を狙っても、購入時の金銭的な負担はあまり抑えられない可能性があります。
希望する物件を逃す可能性がある
中古マンションは基本的に一点物であり、売れてしまえば条件が似た物件が次にいつ出てくるかわかりません。
希望に合う物件が見つかったにもかかわらず、価格が安くなる時期まで待っていると、他の購入希望者に先を越されてしまう可能性があります。
希望に合う中古マンションが見つかったときは、安くなる時期を待たずに、早めに購入したほうが良い場合も少なくありません。
住宅ローン金利が変動する可能性がある
固定金利型の住宅ローンは、借り入れたあとの一定期間の金利が固定されるため市場や社会情勢が変化しても変動しません。
一方で借入時に適用される金利は、毎月決められています。
中古マンションの価格が安くなるころには、住宅ローンの固定金利が上昇しているかもしれません。
価格が安くなっていたとしても、ローンの借入金利が上昇していると返済負担は増えてしまう可能性もあります。
団体信用生命保険に加入できなくなる可能性がある
団体信用生命保険は、住宅ローンの契約者が亡くなったり所定の高度障害状態になったりしたときにローンが完済される仕組みの保険です。
金融機関が独自に取り扱う住宅ローンを組む場合、原則として団体信用生命保険に加入しなければなりません。
団体信用生命保険に加入するときは、保険の対象となる人(被保険者)の健康状態を告知する必要があります。
過去に大病を患った経験がある人やすでに持病を抱えている人などは、団体信用生命保険への加入を断られることがあります。
価格が安くなる時期がくるのを待っているあいだに、健康状態が悪化してしまい団信に加入できなくなると、住宅ローンの選択肢が著しく少なくなるかもしれません。
築古の中古マンションを選択するメリット
より安い価格で購入したいのであれば、築古のマンションを選択するのも方法のひとつでしょう。
東日本不動産流通機構の調査によると、1年間で成約した中古マンションのうち築31年以上の物件が占める割合は、2010年の16.0%から2020年には27.5%へと上昇しました。
調査結果から、築古のマンションを選ぶ人の割合が増えていることがわかります。
※出典:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場」
築古の中古マンションを選ぶ主なメリットは、以下の3点です。
- 築古のマンションは資産価値を維持しやすい
- リノベーションで新築マンションに近い性能にできる
- 希望する立地のマンションが見つかりやすい
築古のマンションは資産価値が維持しやすい
築古のマンションは、経年劣化しているため築浅のマンションと比較して資産価値は低い傾向にあります。
その一方で、購入後の資産価値は築古マンションのほうが下がりにくいのがメリットです。
※出典:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」
中古マンションの資産価値は築26年を超えたあたりで下落が止まり、築30年以降はほぼ横ばいとなっています。
築浅の中古マンションは、築年数の経過とともに資産価値が低下するため、将来的に住み替えが必要になったとき安値での売却となるかもしれません。
その点、築30年の中古マンションは、築年数が経過したとしても資産価値が下がりにくいため購入したときと同じ価格で売却できる可能性があります。
リノベーションで新築マンションに近い性能に
築30年を超えていてもリフォームやリノベーションをすることで、新築マンションに近い性能まで高められることがあります。
特にリノベーションであれば、制約の範囲内で室内の間取りや設備の場所を変更できるため、ご自身や家族のライフスタイルに合ったマイホームが手に入りやすいでしょう。
希望する立地のマンションが見つかりやすい
日本は土地が狭く、駅近を始めとした立地が良いと言われる場所にはすでに多くのマンションが建っているため、新築や築浅に絞って検討すると選択肢は限られてきます。
そこで築30年を超えるマンションを含めて検討することで、立地が良い物件を予算内で購入できる可能性が高まります。
築古マンションを選択するデメリット・注意点
築古のマンションは、メリットだけではなく、デメリットや注意点を理解したうえで選ぶと良いでしょう。
建物や設備の老朽化が進んでいる
築古の物件は経年劣化が進んでいるため、入居した直後に建物の修繕が行われたり、備え付けの設備の修理・交換が必要になったりする場合があります。
建物や廊下の修繕は、基本的に入居者から集めていた修繕積立金から賄われますが、計画的に積み立てられていない場合、入居者から改めて一時金を徴収するケースもあります。
購入後間もなく建物や廊下などの修繕が実施される可能性や、修理または交換が必要な設備の有無を、不動産会社の担当者や売主などに確認しておくと安心でしょう。
耐震性能が劣る可能性も
築年数が40年や50年などのマンションは、耐震性能が劣る可能性があります。
1981年5月31日以前に建築されたマンションには「旧耐震基準」が適用されているためです。
1981年6月1日以降に建築されたマンションには、新耐震基準が適用されており、震度6強以上の揺れが発生しても倒壊しないといわれる構造をもっています。
一方の旧耐震基準が適用されたマンションは、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊しないように作られているため、新耐震基準のマンションよりも耐震性能が劣る可能性があります。
【まとめ】中古マンション購入のタイミングは慎重に判断を
近年のマンション価格は上昇傾向にありますが、エリアによっては安くなる可能性もあります。
しかし、価格の安さだけでマンションを選ぶと、将来的に資産価値が下がってしまいかねません。
また価格が安くなる時期が、必ずしもマンションの購入に適したタイミングであるとは限りません。
不動産会社にも相談のうえ、中古マンションを購入するタイミングは慎重に判断することが大切です。
(執筆者:品木 彰)