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マンションの耐用年数とは?過ぎたらどうなるのかも解説

一般的にマンションの多くは、法定耐用年数が47年に設定されています。そのため「マンションは築47年で寿命を迎えるのでは?」と誤解されているケースも少なくありません。

しかし、法定耐用年数はあくまで税金を計算する際に用いられる数値に過ぎず、マンションの物理的な寿命とは異なります。

本記事では、マンションの耐用年数の種類や建物の寿命に関係する要素、長持ちするマンションの選び方を解説します。

遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 恒吉 俊哉(つねよし しゅんや)


宅地建物取引士

マンションの耐用年数には3種類ある

マンションの耐用年数には「法定耐用年数」「物理的な耐用年数」「経済的な耐用年数」の3種類があります。

法定耐用年数:減価償却に用いる年数

法定耐用年数とは、会計上で建物の資産価値がゼロになるまでの年数のことです。

マンションのほとんどは、鉄筋コンクリート(RC)造または鉄骨・鉄筋コンクリート(SRC)造であり、これらでできた建物の法定耐用年数は47年です。

※参考:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数(建物/建物附属設備)

法定耐用年数が用いられるのは「減価償却」という会計処理を行うときです。

減価償却は、建物を始めとした固定資産の取得費用を、残りの法定耐用年数で分割し、毎年少しずつ経費に計上する会計処理です。

不動産投資をするためにマンションを購入した場合、不動産所得を計算する際、減価償却によって求められた金額を「減価償却費」として経費に計上できます。

また、マンションを売却したときの利益(譲渡所得)にかかる所得税の計算において、建物部分の取得費用を求める際にも減価償却が行われます。

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物理的な耐用年数:建物の物理的な寿命

物理的な耐用年数は、建物の物理的な寿命を指します。

国土交通省の資料によると、マンションを始めとした鉄筋コンクリート造建物の物理的な寿命は117年と推定されています。

また、マンションの鉄筋を覆うコンクリートの劣化が進んで役に立たなくなるまでの期間は約120年、外装仕上げによる延命をした場合は150年程度という記載もあります。

※出典:国土交通省土地・建設産業局不動産業課 住宅局住宅政策課「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について

つまり、マンションは適切にメンテナンスされていれば、物理的には100年以上持つ可能性があるのです。

経済的な耐用年数:経済的に価値がある年数

経済的な耐用年数は、マンションに資産価値があると考えられる年数を指します。

国土交通省の資料によると、マンションを始めとした鉄筋コンクリート造の住宅は、平均すると68年ほどで取り壊されています。

※出典:国土交通省土地・建設産業局不動産業課 住宅局住宅政策課「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について

多くのマンションが物理的な寿命を迎える前に取り壊されている理由の1つは、そのほうが経済的な観点から合理的であるためです。

建物の修繕や改修にかかる費用は、築年数の経過とともに増加する傾向にあります。

また、時代の変化にともない室内の間取りや設備の性能などが、マンションに住む人の生活様式やニーズに合わなくなることがあります。

そのため、建物が物理的には使用できる状態であっても、建て替えをしたほうが経済的なメリットが大きいと判断され、取り壊されるケースがあるのです。

法定耐用年数を過ぎたらマンションはどうなるのか

マンションの法定耐用年数が過ぎたとしても、住めなくなるわけではありません。一方で、住宅ローンが組みにくくなる可能性はあります。

ここからは、耐用年数を過ぎたマンションの特徴やリスクについて見ていきましょう。

建物が寿命を迎えるわけではない

法定耐用年数は、あくまでマンションの資産価値が会計上でゼロになるまでの年数を示しているのであり、実際の寿命とは無関係です。

例えば、鉄筋コンクリート造のマンションの築年数が法定耐用年数である47年を迎えたからといって、必ず取り壊されるわけではありません。

建物が適切に管理・メンテナンスされていれば、法定耐用年数を大幅に超えて使用することも可能です。

住宅ローンが組みにくくなる

金融機関によっては、住宅ローンの融資期間(返済期間)を「法定耐用年数 - 経過年数」を基準に決めている場合があります。

そのため、購入を検討しているマンションの築年数が、法定耐用年数の47年を上回ると、住宅ローンの審査に落ちる可能性が高くなります。

仮に融資を受けられたとしても、融資期間が短くなり、毎月の返済負担が重くなってしまうかもしれません。

マンションの寿命(物理的な耐用年数)に影響する要素

続いて、マンションの寿命に大きな影響を与える3つの要素について解説します。

維持・管理の状態

マンションの寿命を大きく左右するのが、建物や共用部分などの管理の状態です。

外壁や廊下、配管などが適切に修繕・メンテナンスされているマンションは、寿命が長い傾向にあります。

一方、管理が疎かなマンションは、建物の劣化が進行しやすくなるため、寿命が短くなりやすいといえます。

耐震性能

1981年6月1日以降に建築確認を受けたマンションには「新耐震基準」が適用されており、震度6強から7程度の揺れでも倒壊しないように建てられています。

一方、1981年5月31日以前に建築確認を受けたマンションには「旧耐震基準」が適用されています。

旧耐震基準で想定されているのは、震度5強程度の揺れです。

そのため、旧耐震基準が適用されたマンションよりも、新耐震基準のマンションのほうが、耐震性能が高く、寿命も長くなりやすいと考えられます。

また、制震構造や免震構造が採用されているマンションでは、より高い耐震性能が期待できます。

  • 制震構造:建物に設置された制震装置により、地震のエネルギーを吸収することで建物の揺れを小さくする構造
  • 免震構造:建物と地盤の間に免震装置を設置し、地震の揺れを建物に伝えにくくする構造

立地

立地が良いマンションは、需要が高い傾向にあり、築年数が経過しても資産価値が下がりにくいといわれています。

立地が良いといわれるマンションの例は、以下のとおりです。

  • 駅から徒歩10分以内
  • 最寄り駅がターミナル駅に直結している
  • 周辺にスーパーやコンビニ、公園などがある など

資産価値が下がりにくいマンションでは、取り壊して建て替えるよりも修繕・メンテナンスをして長く使い続けようと判断されやすくなるため、長い寿命が期待できます。

物理的な耐用年数が長い中古マンションの選び方

最後に、物理的に長い寿命が期待できる中古マンションを選ぶためのポイントを3つ紹介します。

管理状態や大規模修繕の実施状況を確認する

「マンションは管理を買え」といわれることもあるほど、中古マンション選びにおいて管理状況の確認は重要となります。

中古マンションを選ぶときは、内見の際に建物の外観や共用部分などが適切にメンテナンスされているかどうかをよく確認することが大切です。

また、マンションの大規模修繕の計画がまとめられた長期修繕計画や、修繕工事の履歴、修繕積立金の積立状況も確認しましょう。

大規模修繕が実施された時期や工事内容、修繕積立金の積立状況などが計画通りであれば、マンション購入後も建物や設備の状態が適切に維持されやすくなります。

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住宅性能評価書を確認する

住宅性能評価書は、第三者機関が建物の性能を客観的に評価した内容が記載されている書類です。

構造の安全性や耐火性、省エネ性能など、マンションの性能に関するさまざまな項目を確認できます。

マンションの寿命を把握する際に確認したいのが「劣化対策等級」です。
劣化対策等級は、建物の構造に劣化を軽減するための対策がどの程度施されているのかを、評価したものであり、以下の3段階に分かれています。

  • 劣化対策等級3:住宅が限界状態に至るまでの期間が3世代以上となるための必要な対策が施されている
  • 劣化対策等級2:住宅が限界状態に至るまでの期間が2世代以上となるための必要な対策が施されている
  • 劣化対策等級1:建築基準法が定める対策がなされている

劣化対策等級が高いほど、劣化が進行しにくく、物理的な耐用年数を長くする効果が期待できます。

安心R住宅を検討する

安心R住宅とは、国土交通省が認定する優良な中古住宅のことです。
認定されるための要件は、以下のとおりです。

  • 耐震性等の基礎的な品質を備えている
  • リフォームの実施済みまたはリフォームの提案が付いている
  • 建築時の適法性や認定、維持保全、省エネルギーなどの情報が開示されている

安心R住宅は、新耐震基準に適合しており、建物状況調査(インスペクション)によって建物の構造や外壁などに不具合がないかが確認されています。

より長く生活ができる中古マンションを選ぶときは、広告やチラシに安心R住宅のロゴマークがないか確認するとよいでしょう。

【まとめ】中古マンションを選ぶときは耐用年数も意識しよう

マンションの耐用年数には、会計上の「法定耐用年数」、建物の物理的な寿命を指す「物理的な耐用年数」、資産価値があると考えられる「経済的な耐用年数」の3種類があります。

マンションの築年数が法定耐用年数を超えたとしても、適切に管理されていれば長きにわたって暮らすことが可能です。

また、耐震性能が高いマンションや立地の良いマンションも、長い寿命が期待できます。
20年や30年など、長きにわたり安心して暮らせる中古マンションを探す際は、建物の耐用年数を意識することが大切です。
(執筆者:品木 彰)

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