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耐震基準適合証明書とは?取得方法やメリット、注意点を解説

耐震基準適合証明書は、建物の耐震性能が一定の基準を満たしていることを証明する書類です。

証明書の取得にはコストや時間がかかりますが、税制上の優遇措置を受けやすくなり、金融機関の融資審査にも通過しやすくなるなどのメリットがあります。

本記事では、耐震基準適合証明書の内容や取得するメリット、取得方法を解説します。

遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)


宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級

耐震基準適合証明書とは

耐震基準適合証明書はどのような書類なのでしょうか。書類の発行先とあわせて解説します。

建物が現行の耐震基準を満たすことを証明する書類

耐震基準適合証明書は、建物の耐震性が現行の耐震基準に適合していることを証明する公的な書類です。

建物の耐震基準には「新耐震基準(現行の耐震基準)」と「旧耐震基準」があります。

旧耐震基準は、1981年5月31日以前に建築確認された建物に適用される耐震基準です。
旧耐震基準の建物は、震度5程度の地震では倒壊・崩壊しないように建てられています。

一方の新耐震基準(現行の耐震基準)は、1981年6月1日以降に建築確認された建物に適用される耐震基準です。
新耐震基準で建てられた建物には、震度6強から震度7程度の大地震が発生しても、倒壊・崩壊しない構造があります。

耐震基準適合証明書が発行されるのは、建物の耐震性が新耐震基準を満たしている場合です。
旧耐震基準の建物でも、新耐震基準と同じ水準の耐震性能を有していることが確認されれば、耐震基準適合証明書が発行されます。

耐震基準適合証明書を発行できる人や機関

耐震基準適合証明書を取得するためには、建物の所有者や購入を予定する人が以下のいずれかに申請をします。

  • 建築士事務所に所属する建築士
  • 指定確認検査機関
  • 登録住宅性能評価機関
  • 住宅瑕疵担保責任保険法人

上記のいずれかに建物の耐震性を診断してもらい、必要に応じて耐震補強工事を実施して現行の耐震基準に適合していることが確認されると、証明書が発行されます。

耐震基準適合証明書を取得するメリット

耐震基準適合証明書を取得することで、以下のようなメリットがあります。

  • 住宅ローン控除が受けやすくなる
  • 住宅ローンの審査に通過しやすくなる
  • 不動産取得税や登録免許税が軽減される
  • 地震保険料が割引される

住宅ローン控除が受けやすくなる

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を取得した場合に適用される税制上の優遇措置です。

所定の要件を満たすと「年末時点の借入残高×控除率」で計算された金額が所得税や控除対象の住民税から控除されます。

住宅に入居するタイミングが2022年1月〜2025年12月末の場合は、控除率は0.7%です。

例えば、年末時点の借入残高が2,000万円の場合「2,000万円×0.7%=14万円」が所得税と一部の住民税から控除されます。

1981年12月31日以前に建てられた中古住宅を購入する場合、耐震基準適合証明書を取得しており、他の要件も満たしているのであれば、住宅ローン控除の対象となります。

以前は、中古住宅を購入したあとに耐震診断や耐震補強工事をして耐震基準適合証明書を取得しても、住宅ローン控除は受けられませんでした。

それが2022年1月からは、中古住宅を購入する前に耐震基準適合証明書の仮申請をすることで、引き渡し後に耐震診断や改修工事をしても控除を受けられるようになりました。

住宅ローンの審査に通過しやすくなる

金融機関の多くは、住宅ローンを借り入れて取得する不動産が新耐震基準に適合していることを融資の条件としています。

旧耐震基準の建物は、大規模な地震が発生したときに建物が倒壊するリスクがあり、担保としての価値が低く評価されるためです。

担保としての価値が低いと、借り入れた人が返済できなくなり、金融機関が物件を差し押さえて競売により強制的に売却しても、借入金を回収するのが難しくなります。

耐震基準適合証明書を取得しており、建物が新耐震基準に適合していることが証明されれば、金融機関の融資審査に通過しやすくなります。

不動産取得税や登録免許税が軽減される

不動産取得税は、不動産(土地や建物)を取得した際に課される税金です。

登録免許税は、登記手続きの際に課せられる税金です。
不動産の所有権を購入した人に変更する所有権移転登記や、ローンを用いて取得した建物を担保とするための抵当権設定登記などをする際に課税されます。

耐震基準適合証明書を取得し、他の要件も満たすと不動産取得税と登録免許税の軽減措置が受けられ、税負担が軽減されます。

不動産取得税の場合、土地部分の税額から以下のいずれか多い方の金額が減額されます。

  • 土地1㎡あたりの価格×住宅の床面積×2×税率(3%)
  • 45,000円

建物部分については、軽減措置が適用されると「住宅の価格-控除額×3%」で税額が計算されます。

税額を計算する際に、住宅の価格(通常は自治体が算出する固定資産税評価額)から、建物の新築年月日に応じた一定金額が差し引かれ、税負担が軽減される仕組みです。

登録免許税の場合は、軽減措置が受けられると税率が以下のとおりに引き下げられます。

  本則税率 軽減税率
建物の所有権移転登記 2.0% 0.3%
抵当権設定登記 0.4% 0.1%

地震保険料が割引される

地震保険とは、通常の住宅向け火災保険では補償対象外である、地震・噴火またはこれらによる津波による損害を補償する保険のことです。

地震保険に加入すると、地震や津波で建物や家財(家具・家電・衣服など)に一定の損害が生じたときに、保険金が支払われます。

耐震基準適合証明書を取得した住宅が地震保険の保証対象である場合、耐震診断割引により保険料が10%割引されるため、保険料負担を抑えながら地震や津波に備えられます。

耐震基準適合証明書を取得する注意点

耐震基準適合証明書を取得する際は、以下の点に注意が必要です。

  • 費用や時間がかかる
  • 売主の理解や協力を得られにくい

費用や時間がかかる

耐震基準適合証明書を取得するためには、耐震診断の費用も含めて10万〜15万円ほどかかるのが一般的です。

耐震診断の結果が不適合であり、耐震補強工事が必要になった場合は、さらに100万〜150万円ほどの費用がかかります。

また、証明書が発行されるまで1〜3か月ほどの期間を要します。

とくに耐震補強工事をする場合、壁や床を剥がして作業をすることもあるため、高額な費用がかかりやすいだけでなく、工事期間も長引きやすいです。

売主の理解や協力を得られにくい

耐震基準適合証明書を取得するための費用は、売主と買主のどちらが負担しても問題ありません。しかし、売主が費用を負担するケースは少ないのが実情です。

費用をかけて証明書を取得したからといって、それに見合うだけの価格で売却できるとは限らないためです。

また、耐震基準適合証明書を取得する期間の分だけ、家の売却が遅れることになります。

そのため、多くのケースでは買主が証明書の費用を負担します。

耐震基準適合証明書の取得方法と必要書類

最後に、耐震基準適合証明書を取得する方法や流れ、必要書類を解説します。

耐震基準適合証明書の取得方法と流れ

耐震基準適合証明書を取得するときの流れは、以下のとおりです。

  1. 建築士・専門機関に事前の相談する
  2. 耐震診断を依頼する
  3. 物件の現地調査・耐震診断
  4. 代金の支払い・耐震基準適合証明書の発行

耐震診断を依頼してから現地調査を実施するまでの期間は、1週間ほどです。
現地調査の終了後、1か月ほどで耐震診断の結果がわかります。

現地調査と耐震診断を実施し、新耐震基準に適合していると判断されれば、耐震基準適合証明書が発行されます。

耐震基準適合証明書の取得に必要な書類

耐震基準適合証明書を取得するときは、以下の書類が必要です。

  • 耐震基準適合証明申請書 仮申請書
  • 登記事項証明書の写し
  • 台帳記載事項証明書または検査済証の写し
  • 物件状況等報告書
  • 販売図面(間取り図)

耐震基準適合証明申請書 仮申請書は、国土交通省のホームページ内にある「中古住宅取得後に耐震改修工事を行う場合について」でひな形・様式をダウンロードできます。

【まとめ】中古住宅の購入時は耐震基準適合証明書の取得を検討しよう

耐震基準適合証明書を取得すると、住宅ローン控除による減税を受けやすくなり、金融機関の融資審査にも通過できる可能性も高まります。

また、不動産取得税・登録免許税の軽減措置や地震保険料の割引の対象にもなります。

旧耐震基準で建てられている中古住宅の購入を考えている方は、耐震基準適合証明書の取得を検討するとよいでしょう。
(執筆者:品木 彰)

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