リノベーション物件は、間取りや内装などを大幅に変更する工事を行って、新たな価値を付加した中古物件です。
新築物件より価格が安い傾向があり、設備も新しいものに取り換えられているため、予算を抑えて理想のマイホームを購入したいと考えている方の多くに選ばれています。
本記事では、リノベーション物件の特徴やメリット・デメリット、購入時のポイントを解説します。
遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 恒吉 俊哉(つねよし しゅんや)
宅地建物取引士
リノベーション物件とは?特徴やリフォームとの違い
まずはリノベーション物件の定義やリフォーム済み物件との違いをみていきましょう。
リノベーション物件の定義
リノベーション物件とは、大規模な改修工事を施して性能や付加価値などが高められた物件のことです。
「現代のトレンドにあわせて内装や間取りを変更する」「水回り設備や電気設備を最新のものに取り換える」などにより、住宅の性能や付加価値が高められています。
リノベーションとリフォームの違い
中古住宅の改修工事にはリノベーションの他にも「リフォーム」があります。
リフォームは、築年数の経過によって劣化した部分を新築と同様の状態に戻すことが主な目的です。
一方のリノベーションは、設備の入れ替えや間取りの変更、断熱材の導入などを実施し、物件に新しい価値を吹き込む工事です。
リフォームとリノベーションに明確な線引きはありませんが、修繕の意味が強いリフォームに対して、リノベーションは「新しい価値を付与する」という点が特徴といえます。
部分的なリフォームは比較的短い期間で工事が終わるのに対し、大規模なリノベーションは工期が長い傾向にあります。
費用面については、リフォームは数十万から数百万円ほどですが、大規模なリノベーションの場合は数百万〜1,000万円以上と高額な傾向にあります。
リノベーション物件のメリット
リノベーション物件の主なメリットは、以下のとおりです。
- 新築物件よりも価格が割安
- 設備やデザインが新築と同等
- 物件の資産価値が高められる
新築物件よりも価格は割安
リノベーション物件の販売価格は割安な傾向にあるため、新築物件よりも少ない予算で購入が可能です。
新築物件は、設備や内装が新しく間取りもトレンドに沿っていますが、一般的に価格が高くなりがちです。
とくに「最寄り駅から徒歩5分」「間取りが3LDK以上」などの人気が出やすい物件は高額で、予算オーバーとなるかもしれません。
価格が割安なリノベーション物件を選択肢に加えることで、立地や間取り、広さなどの条件が希望に合った物件が予算内で見つかりやすくなるでしょう。
設備やデザインが新築と同等
リノベーション物件の多くは、古い設備が最新のものに交換され、間取りが現代のライフスタイルに合うように変更されています。
例えば、オープンキッチンやアイランドキッチン、最新の給湯設備などが設置されており、新築のように快適な暮らしができる物件も少なくありません。
断熱性・耐震性が高められているケースや、バリアフリー構造に改修されているケースもあります。
リノベーション物件であれば、設備やデザインが刷新されていることにより、新築物件と同等の快適な暮らしができる可能性があります。
古い家の良さを活かせる
リノベーション物件の中には、築年数を重ねた趣のある建材を活かして、古民家風に仕上げているものもあります。
また、全体としては現代的なデザインにリノベーションしていても、部分的に古い建物の建材を活かし、新築では実現できないような味のあるデザインを実現しているものも少なくありません。
物件の資産価値が高められる
一般的に住宅は、築年数の経過とともに建物部分の価値が低下し、築20〜25年あたりで下落幅が大きくなり、築30年を超えるとゼロになるといわれています。
リノベーションによって設備を更新し、耐震性や断熱性なども高められていると、築年数が古い物件の資産価値を高める効果が期待できます。
劣化した部分が適切に修繕されており、購入後も長年にわたって使用できる可能性があれば、割高な価格で売却することも可能でしょう。
リノベーション物件のデメリット
リノベーション物件の主なデメリットは、以下のとおりです。
- 見えない部分で劣化が進んでいる可能性がある
- 耐震性や断熱性が優れない場合がある
- 住宅ローンが組みにくいことがある
見えない部分で劣化が進んでいる可能性がある
リノベーション物件は、内装や設備は新しくなっているものの、建物の構造や配管、配線などの見えない部分の劣化がそのままにされていることがあります。
見えない部分の劣化が進んでいると、物件で暮らし始めたあとにさまざまな支障が生じるかもしれません。
例えば、排水管や給水管の老朽化が進んでいると、漏水やつまりが生じることがあります。
劣化した部分を修繕するためには費用がかかります。放置すると劣化がさらに進み、大規模な修繕が必要になって高額な費用がかかるかもしれません。
耐震性や断熱性が優れない場合がある
1981年5月31日以前に建築確認された住宅には「旧耐震基準」が適用されており、現行の耐震基準で建てられた建物よりも耐震性能が劣る可能性があります。
旧耐震基準は震度5程度の地震が起きても倒壊しないように建てられているのに対し、現行の耐震基準は震度6強〜7でも耐えられるように建てられているためです。
また、断熱材の性能が低い、あるいは劣化が進んでいることもあります。
断熱性能が低いと、夏は暑く冬は寒いだけでなく、冷暖房の効率が悪化して光熱費の負担が重くなる可能性もあります。
住宅ローンが組みにくいことがある
住宅ローンの審査では物件の「担保評価」が確認されます。担保評価とは、物件が融資額に見合うだけの価値があるかを評価したものです。
築年数が古い物件は、建物や設備の老朽化により、資産価値が低く見積もられやすく、新築と比べて担保評価が低い傾向にあります。
物件の担保評価が低いと、金融機関の融資審査に通過しにくくなります。
借入金が返済できなくなったときに、金融機関は担保である物件を差し押さえて、競売により強制的に売却しても、貸し付けたお金を回収できなくなるリスクが高まるためです。
たとえ審査に通過できたとしても、金利の上乗せや融資金額の減額などが提示され、希望通りのローンが組めない可能性があります。
リノベーション物件の購入時に確認すべきポイント
リノベーション物件を購入する際は、以下を確認しておくとよいでしょう。
- 工事が実施された部分や建物の状態
- 保証内容や保証期間
工事が実施された部分や建物の状態
物件の購入を検討するときは、どの部分がどのように工事されたのかを不動産会社によく確認することが大切です。
施工された部分や建物の状態・性能を確認して購入することで、購入後の生活に支障が生じたり、高額な修理費用がかかったりするリスクを軽減できます。
基礎や柱・梁などの主要構造部の改修の有無や、配管・配線などの更新状況をよく確認しましょう。
旧耐震基準で建てられている場合は、耐震補強により現行の耐震基準に適合しているかも確認することをおすすめします。
保証内容や保証期間
中古住宅の売主は契約不適合責任を負っています。
購入後、不動産売買契約書に記載されていない欠陥が見つかった場合、買主は売主に対して補修やその費用の請求、売買代金の減額などを求めることができます。
契約不適合責任を負う期間は、売主が不動産会社(宅建業者)の場合は引き渡しから最低2年、個人の場合は3か月程度が目安です。
不動産会社によっては、購入後に発覚した欠陥の修理費用を保証するサービスを実施していることがあります。
リノベーション物件を購入するときは、契約不適合責任が適用される期間や不動産会社の保証内容、保証金額などを確認しておきましょう。
また、売買契約書や重要事項説明書、物件状況確認書を慎重に確認し、不明点や疑問点があれば売主や不動産会社に質問をすることが大切です。
【まとめ】リノベーション物件で理想の住まいを手に入れよう
リノベーション物件であれば、立地や広さなどの条件が希望に合っており、かつ新築と同等の設備とデザインを備えた理想の住まいを見つけられる可能性があります。
改修工事の内容や建物の状態、不動産会社の保証内容をよく確認することで、購入後のトラブルは防ぎやすくなるでしょう。
マイホームの購入を検討している方は、新築や築浅の物件だけでなくリノベーション物件も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
(執筆者:品木 彰)