住宅ローンを組んで家を購入したとき、一定の要件を満たせば住宅ローン控除が受けられます。
しかし「新築ではなく中古住宅の場合でも、控除の対象になるの?」と、不安に思う人もいるのではないでしょうか。
この記事では中古住宅の住宅ローン控除について、適用期間や条件、手続きの方法、必要書類について解説します。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
住宅ローン控除(住宅ローン減税)とは
住宅ローン控除(または住宅ローン減税)とは、住宅ローンを利用してマイホームを新築・購入したり、リフォームをしたりする際に受けられる減税制度です。
毎年末の「住宅ローン残高」または「住宅の取得対価額」の、いずれか少ない方の金額に控除率をかけた金額が所得税から控除されます。
これまで控除率は1%でしたが、取得したマイホームに2022年1月以降に入居する場合は0.7%となります。
家の購入やリフォームにかかる費用は、決して安いものではありません。
控除が受けられる住宅ローン減税制度を利用すれば、住宅購入時の経済的負担を軽減できます。
控除が受けられる期間
取得したマイホームに2022年1月以降に入居する場合、住宅ローン控除を受けられる期間は以下のとおりです。
- 新築住宅・買取再販の中古住宅(要件を満たすもの):13年 or 10年
- 中古住宅(既存住宅):10年
以前は、住宅ローン控除の控除期間が最長10年であり、消費税増税にともなう特例措置を適用した場合のみ、最長13年に延長されました。
それが2022年1月以降は、売主が個人である中古住宅を購入した場合、控除期間は最長10年、買取再販住宅の場合は最長13年に変更されています。
住宅ローン控除の申請方法と必要書類
住宅ローン控除を受けるには、初年度は必ず確定申告が必要です。
確定申告による還付申請の期間は、居住した翌年の1月1日~3月15日までの間です。住宅ローン控除申請の流れと必要書類については、下記をご覧ください。
【初年度】確定申告の流れと必要書類
手順1:税務署もしくは国税庁のサイトより次の書類を入手します。
- 確定申告書
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
手順2:確定申告の際に添付が必要な次の書類を準備します。
【新築・中古住宅共通】
- 金融機関から交付される住宅ローンの年末残高証明書
- 建物・土地の登記事項証明書
- 建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し
- マイナンバーカード(もしくはマイナンバー記載の住民票など)
会社員や公務員などの給与所得者の場合、申告書類の作成時には勤務先から発行される「源泉徴収票」が必要です。
ただし申告書類を提出する際に、源泉徴収票の原本を添付する必要はありません。
補助金を受けた場合や、贈与の特例を適用して親族から資金提供を受けた場合は、以下の書類を添付します。
- 国または地方公共団体などから補助金の交付を受けた場合:補助金額を証明する書類(例:補助金決定通知書)
- 住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合:住宅取得等資金の金額を証明する書類の写し(例:贈与税の申告書)
他にも、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅などを取得した場合は、住宅の種類や環境性能を証明する書類を提出しなければなりません。
また買取再販住宅や中古住宅を購入する場合は、住宅の耐震性能が分かる書類を添付する必要があります。
住宅ローン控除の申請に必要な書類については、下記記事もご覧ください。
「住宅ローン控除はどのように申請すればよいのだろうか」 住宅ローンを組んでマイホームを購入した方は、一定の条件を満たすと、住宅ローン控除を適用できます。 住宅ローン控除を受けるためには、必要書類をそろえて確定申告をしなければ[…]
手順3:添付書類を参考にしながら、確定申告書と住宅借入金等特別控除額の計算明細書に必要事項を記入します。
手順4:記入もれや不備がないかを確認し、すべての書類を税務署に提出しましょう。
【2年目以降】確定申告の場合
自営業やフリーランスなどは、2年目以降も確定申告で住宅ローン控除を申請します。
また会社員や公務員などの給与所得者であっても「年間の給与総額が2,000万円以上」など、年末調整の対象にならない人は2年目以降も確定申告で申請をしなければなりません。
2年目以後は、確定申告書と次の書類の提出だけで手続きが完了します。
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書または住宅借入金等特別控除証明書
- 住宅ローンの年末残高証明書
住宅借入金等特別控除証明書は、1年目の住宅ローン控除を申告した後に税務署から送られてくる書類です。
給与所得者が年末調整で住宅ローン控除を申請する際に使用する「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」と合わせて送付されてきます。
【2年目以降】年末調整の場合
給与所得者の場合、確定申告が必要なのは最初の年だけです。
2年目以降は、勤務先の年末調整で住宅ローン控除の適用が受けられます。
年末調整で住宅ローン控除を申請するときは、次の2つの書類を準備して、勤務先へ提出しましょう。
- 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書(年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書)
- 住宅ローンの年末残高証明書
給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書(年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書)は、1年目に確定申告をしたあと、税務署より控除年数分がまとめて送付されます。
毎年の申請に必要な書類なので、大切に保管しておきましょう。
住宅ローン控除の上限額は?
入居するタイミングが2022年1月〜2025年末までである場合、住宅ローン控除の対象となる借入限度額や年間控除額の上限は、住宅の種類によって異なります。
新築住宅・買取再販住宅の上限額
新築住宅や所定の要件を満たす買取再販住宅を購入した場合、住宅ローン控除の上限額は以下のとおりとなります。
〇新築住宅・買取再販の控除額の年間上限額(借入限度額×控除率)
2022〜2023年に入居 | 2024〜2025年に入居 | |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円×0.7%=35.0万円 | 4,500万円×0.7%=31.5万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円×0.7%=31.5万円 | 3,500万円×0.7%=24.5万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円×0.7%=28.0万円 | 3,000万円×0.7%=21.0万円 |
その他の住宅 | 3,000万円×0.7%=21.0万円 | 2,000万円×0.7%=14.0万円※ |
※2023年までに新築の建築確認がされていた場合のみ
新築住宅や買取再販住宅の場合、入居するタイミングによって制度の対象となる借入限度額や年間の控除上限額が異なります。
なお2024〜2025年に「その他の住宅」に入居する場合、新築の建築確認が2023年までにされていなければ住宅ローン控除の対象になりません。
また住宅ローン控除の対象になる場合でも、控除期間は最長10年となります。
中古住宅の上限額
中古住宅(既存住宅)の年間控除額は、以下が上限となります。
〇既存住宅の控除額の年間上限額(借入限度額×控除率)
2022〜2025年に入居 | |
長期優良住宅・低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円×0.7%=21万円 |
その他の住宅 | 2,000万円×0.7%=14万円 |
中古住宅は、新築住宅や買取再販住宅よりも全体的に制度の対象となる借入限度額や年間の控除上限額は低くなります。
一方で新築住宅や買取再販住宅とは異なり、入居するタイミングによって借入限度額や年間の控除上限額は変わることはありません。
住宅ローン控除額が所得税を上回った場合
住宅ローン控除は、まず所得税から控除されます。
所得税から控除しきれなかった差額分は、翌年の住民税から控除されます。
住宅に入居するタイミングが2022年以降である場合、翌年の住民税から控除される金額は
「前年の課税所得金額の5%(上限97,500円)」となります。
住宅ローン控除の計算例
実際にいくらの住宅ローン控除が受けられるのか、次の条件でシミュレーションしてみましょう。
- 年末の住宅ローン残高:3,000万円
- 取得する住宅の種類:長期優良住宅(新築)
- 本来支払うべき所得税:9万円
- 翌年の住民税:18万円
住宅ローン控除の可能額は、3,000万円×0.7%=21万円です。
本来支払うべき所得税が9万円なので、所得税は全額控除されます。
所得税で控除しきれなかった残りの「21万円−9万円=12万円」は、翌年の住民税から控除されます。
ただし住民税から控除できる金額は、前年の課税総所得金額の5%(上限97,500円)が限度です。
中古住宅で住宅ローン控除を受けるための条件
住宅ローン控除を受けるためには、新築・中古ともに一定の要件を満たす必要があります。
新築と中古住宅それぞれの条件について、みていきましょう。
新築と中古住宅の共通条件
- 新築または取得日より6か月以内に居住している
- 各年の12月31日まで継続して居住している(死亡したときはその日まで)
- 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以
※2023年末までに建築確認を受けた新築住宅で「床面積が40㎡以上かつ、床面積の半分以上が居住用」の場合、合計所得金額が1000万円以下であること - 購入した住宅の床面積が50㎡以上かつ、床面積の半分以上が居住用
※登記事項証明書に表示されている床面積で判 - 10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築または取得のための一定の借入金または債務(住宅とともに取得するその住宅のように供される土地等の取得のための借入金等を含みます。)があること
- 2以上の住宅を所有している場合には、主として居住の用に供すると認められる住宅である
- 居住年およびその前2年の計3年間に次に掲げる譲渡所得の課税の特例の適用を受けていない
- 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の3①)
- 居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35①)
※被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35③)により適用する場合を除く - 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2)
- 財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の5)
- 既存市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例(措法37の5)
- 居住年の翌年以後3年以内に居住した住宅(住宅の敷地を含む)以外の一定の資産を譲渡し、当該譲渡について上記7に掲げる譲渡所得の課税の特例を受けていない
※一定の資産を譲渡したことにより上記4に掲げるいずれかの特例の適用を受ける場合において、その資産を譲渡した年の前3年分の所得税について住宅借入金等特別控除を受けているときは、当該譲渡をした日の属する年分の所得税の確定申告期限までにその前3年分の所得税について修正申告書または期限後申告書を提出し、かつ、当該確定申告期限までに当該修正申告書または期限後申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければならない - 住宅の取得(その敷地の用に要する土地等の取得を含む)は、その取得時および取得後も引き続き生計をともにする親族や特別な関係のある者からの取得でない
- 贈与による住宅の取得でない
※出典:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
中古住宅の特有条件
中古住宅の場合、新築の適用条件に加えて次の要件を満たす必要があります。
- 建築後使用されたことのある家屋で次のいずれかに該当すること
(1)昭和57年1月1日以後に建築されたものである
(2)上記以外の場合は、次のいずれかに該当すること
・取得の日前2年以内に、地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準に適合するものであると証明されたもの(耐震住宅)である
・上記(1)および(2)に該当しない一定の住宅(要耐震改修住宅)のうち、その取得の日までに耐震改修を行うことについて申請をし、かつ居住の用に供した日までにその耐震改修により家屋が耐震基準に適合することにつき証明がされたものであること
※租税特別措置法41条の19の2(既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除)第1項または41条の19の3(既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除)第6項もしくは第8項の適用を受けるものを除く
※出典:国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除」
また、2023年末までに新築住宅の場合、年間の合計所得金額が1,000万円以下であれば、床面積が40㎡以上50㎡以下の住宅を取得したときも住宅ローン控除の対象となりましたが、中古住宅ではこの取り扱いはありません。
中古住宅購入で住宅ローン控除が受けられないケース
住宅ローンを組んで中古住宅を購入しても、住宅ローン控除を受けられない場合があります。
例えば、合計の所得金額が3,000万円を超える人は、住宅ローン控除を利用できません。
控除期間中であっても、合計所得が3,000万円を超えている年は、住宅ローン控除の対象外となります。
また返済期間が10年未満の住宅ローンを組んだ場合や、床面積が50平方メートル未満である住宅を購入した場合も、住宅ローン控除は利用できないのです。
中古住宅の場合は、所定の耐震基準を満たしていなければ、住宅ローン控除を受けられません。
中古住宅を購入する際は、検討している物件が住宅ローン控除の条件に合致しているかを入念に確認したうえで購入しましょう。
住宅ローンを組んでマイホームを購入しても、住宅ローン控除を受けられるとは限りません。 住宅を購入した人や住宅ローンの借入条件、建物の床面積など、住宅ローン控除にはさまざまな適用要件が設けられているためです。 また2022年の[…]
住宅ローン控除とリフォーム減税は併用できる?
中古住宅の購入と同時にリフォーム工事をすると、リフォーム減税を利用して税負担を軽減できる場合があります。
リフォーム減税には、以下の2種類があります。
- ローン型減税:金融機関から返済期間5年以上の借り入れて所定の増改築工事を行うと受けられる減税制度
- 投資型減税:自己資金で所定の増改築工事を行うと受けられる減税制度
それぞれ耐震・省エネ・バリアフリーなどのリフォーム工事が減税対象です。
リフォーム減税のうち、住宅ローン控除との併用が可能なのは、自己資金で所定の耐震工事を実施した場合に利用できる投資型減税のみです。
それ以外のリフォーム減税と、住宅ローン控除は原則として併用できません。
住宅ローン控除と医療費控除は併用できる?
住宅ローン控除と医療費控除の併用は可能です。
医療費控除とは、毎年1月1日から12月31日までに、自分自身や生計を共にする配偶者などが支払った医療費が、一定金額を超えると受けられる税の優遇制度です。
年間で支払った医療費から、公的医療保険制度や加入している生命保険・医療保険などから受け取った給付金額と、10万円(※)を差し引いた金額が所得から控除されます。
※年間の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
住宅ローン控除と医療費控除は併用できますが、医療費控除が「所得控除」であるのに対し、住宅ローン控除は「税額控除」である点に注意が必要です。
- 所得控除:税額を計算する前の所得から一定金額が差し引かれる
- 税額控除:計算された税額から一定金額が直接差し引かれる
例えば医療費控除額が10万円、住宅ローン控除額が30万円であったとしましょう。
まず給与所得や一時所得などの合計金額から、医療費控除の10万円と他の所得控除が差し引かれて、所得税と住民税が計算されます。
所得税額から、住宅ローン控除の30万円が差し引かれ、余った金額は一定金額を上限に住民税から差し引かれる仕組みです。
【まとめ】中古住宅購入時は住宅ローン控除の条件を確認しよう
住宅ローン控除はローンを組んで家を購入・リフォームした際に、各年の所得税より税額控除できる減税制度です。
【住宅ローン控除利用時のポイント】
- 一定の要件を満たせば、新築・中古住宅ともに利用できる
- 中古の場合、特有の条件(築年数や耐震性など)がある
- 住宅ローン控除を受けるためには確定申告が必要
- 住宅ローン控除とリフォーム減税の併用は基本的に不可(投資型減税の耐震工事のみOK)
中古住宅購入の際は、住宅ローン控除の適用条件について不動産会社や金融機関に相談してみましょう。
(執筆者:茶谷利津子)