立地条件がよくお手頃価格の物件が多いなどの理由から、中古住宅の人気が高まっています。
中古住宅といえば「目に見えない瑕疵」について、気になる人も多いのではないでしょうか。
一見きれいにみえても、隠れた場所に不備があると後悔することになり兼ねません。
そこで知っておきたいのが「中古住宅の瑕疵保険」です。
この記事では「瑕疵保険って何?」「費用は誰が払うの?」などの疑問について解説します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
中古住宅の瑕疵保険とは?
中古住宅の瑕疵保険は、正式名称「既存住宅売買瑕疵保険」といいます。
安心して中古住宅を購入できるよう、消費者保護を目的につくられた保険制度です。
瑕疵保険に入っていれば、万が一売買した中古住宅に瑕疵(欠陥)が見つかった場合でも、保険機関が売主に代わって補修費用を負担してくれます。
保証の対象となるのは、柱や基礎などの「構造耐力上主要な部分」と、屋根や外壁などの「雨水の浸入を防止する部分」です。
保険期間は1~5年、支払金額の上限は500万円または1,000万円です(保険の種類による)。
保険法人によって、保証対象部位や保険期間は異なります。
現在、国土交通大臣より指定を受けた瑕疵保険法人は5つあります。
詳しくは国土交通省の住宅瑕疵保険のサイトをご覧ください。
中古住宅の瑕疵保険は「売主が誰か」によって内容が異なります。
売主が宅建業者と個人の場合について、順にみていきましょう
売主が宅建業者の場合(不動産会社など)
売主が宅建業者の場合、保険契約の手続きの流れは次のとおりです。
【手続きの流れ】
- 宅建業者は保険法人へ保険を申し込む
- 保険法人が建物の検査実施後に保険契約を締結
- 瑕疵により発生した補修費は、保険法人より宅建業者へ支払われる
宅建業者より申込を受けた保険法人は、建物に瑕疵がないか検査をおこないます。
検査に合格後、物件は「瑕疵保険付き既存住宅」として販売されます。
宅建業者が売主の場合の保険期間は、5年間または2年間です。
物件の引渡し後に欠陥が見つかったときは、かかった補修費が保険金として宅建業者へ支払われます。
万一売主である宅建業者が倒産した場合、保険金は買主に直接支払われます。
売主が個人(宅建業者以外)の場合
売主が個人の場合、保険契約の手続きの流れは次のとおりです。
【手続きの流れ】
- 売主は検査機関に検査・保証を依頼する
- 検査機関は保険法人へ保険を申し込む
- 保険法人・検査機関が建物の検査実施後に保険契約を締結
- 瑕疵により発生した補修費は、保険法人より検査機関へ支払われる
売主が個人の場合は「第三者の検査機関」が保証者となります。
検査機関への検査・保証の依頼は基本的に売主がおこないますが、買主から依頼することも可能です。
依頼を受けた検査機関は、保険法人へ瑕疵保険を申し込みます。
その後検査機関と保険法人で、建物に瑕疵がないか検査をおこないます。
検査に合格後、物件は「瑕疵保険付き既存住宅」として販売されます。
個人が売主の場合の保険期間は、5年間または1年間です。
物件の引渡し後に欠陥が見つかった際の補修費は、保険法人から検査機関へ支払われます。
万一検査機関が倒産した場合でも、買主は保険法人から直接保険金を受け取れます。
中古住宅の瑕疵保険、費用は誰が払うの?
瑕疵保険の加入者は、宅建業者もしくは検査機関です。
そのため保険料は、売主が支払います。
ただし実際の費用負担は、売主と買主の間で協議します。
保険の加入にかかる費用は、保険期間にもよりますが検査料を含めて6~7万が目安です。
中古住宅の瑕疵保険は、買主・売主双方にメリットがあります。
ここからは詳しい内容についてみていきましょう。
瑕疵保険のメリット
瑕疵保険は、買主が安心して中古住宅を購入できるようにサポートする保険です。
一定の基準をクリアしていれば、万一瑕疵がある場合も補修費が支払われます。
瑕疵保険のメリットには、次のようなものがあります。
中古住宅の基本性能が保証される
瑕疵保険付きの中古住宅は、検査基準をクリアした物件ということです。
建物の柱や屋根など、目に見えない瑕疵はないか事前に建築士がチェックをしています。
中古住宅にありがちな「隠れた瑕疵はない?」という不安を持たずに、安心して家を購入できます。
基本性能が保証された物件であることは、スムーズな売買活動の促進につながります。
そのため買主だけではなく、売主にとってもメリットになります。
購入後の不具合を保険金対応できる
瑕疵保険では、物件購入後の不具合も保証の対象です。
引渡し後でも瑕疵を保険金でまかなえることは、買主にとって大きなメリットといえるでしょう。
宅建業者が売主の住宅は、宅地建物取引業法において2年間の「契約不適合責任」が義務付けられています。
物件の引き渡し後2年間は、建物の瑕疵について保証するというものです。
そのため瑕疵保険は必要ないと考えがちですが、そうとも限りません。
もし売主である会社が倒産してしまった場合は、契約不適合責任を履行してもらえない可能性があるからです。
万一会社が倒産しても瑕疵保険に加入していれば、補修費は買主が直接保険会社へ請求できます。
売主が個人の場合は、契約不適合責任の取り決めはありません。
売買契約書に盛り込むことが一般的で、期間は数ヶ月という短期間の場合や、物件によっては契約不適合責任を負わないケースもあります。
瑕疵保険に加入していれば、契約不適合責任の有無に関わらず補修費などを保険金として受け取れます。
住宅ローン控除の対象になる
瑕疵保険への加入は「住宅ローン控除」の適用条件のひとつでもあります。
中古住宅で住宅ローン控除を受ける条件のひとつとして、国税庁は次のいずれかに該当していることと定めています。
- 築年数が20年以下である(マンションなどの耐火建築物の場合は25年以下)
- 耐震基準適合証明書を取得している
- 建設住宅性能評価書(耐震等級1級以上)を取得している
- 既存住宅売買瑕疵保険契約が締結されている
参考:国税庁「中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」より
▼住宅ローン控除についての詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。
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すまい給付金の対象になる
瑕疵保険に加入していれば「すまい給付金」も受給の対象となる可能性があります。
国土交通省は「すまい給付金」を受ける条件のひとつとして、次のいずれかに該当していることと定めています。
- 既存住宅売買瑕疵保険へ加入した住宅
- 既存住宅性能表示制度を利用した住宅(耐震等級1以上のものに限る)
- 建設後10年以内であって、住宅瑕疵担保責任保険(人の居住の用に供したことのない住宅を目的とする住宅瑕疵担保責任任意保険を含む)に加入している住宅又は建設住宅性能表示を利用している住宅
ただし中古住宅の売主が個人の場合は「すまい給付金」の対象外です。
▼すまい給付金について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
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中古住宅を売買するうえで、瑕疵保険は買主・売主双方にメリットがあります。
瑕疵保険へ未加入の場合は、加入してもらえるかどうか売主に相談してみましょう。
引渡し後のリフォームも対象となる特約も
瑕疵保険に「引渡し後リフォーム特約」をつければ、引渡し後のリフォームも瑕疵保険の対象となります。(※住宅種別・広さにより諸条件あり)
ただし保険の手続きは、物件の引渡し前におこなわなければなりません。
さらに物件の引渡し日より半年以内にリフォーム工事を実施のうえ、現場検査に合格する必要があります。
中古住宅購入後にリフォームを検討している方は、リフォーム特約についても不動産会社に相談してみましょう。
まとめ
瑕疵保険付き中古住宅のメリットは、次のとおりです。
- 欠陥住宅である可能性が低い
- 引渡し後の瑕疵も保証される
- 条件に適合すれば減税制度が利用できる
- 状況によって「リフォーム特約」を付帯できる
既存住宅売買瑕疵保険は、買主・売主の双方にメリットがあります。
中古住宅を売買の際には、ぜひ加入しておきたい保険です。
売主が宅建業者と個人では、保険の仕組みが若干異なります。
不明な点があれば、不動産会社や仲介業者に確認しましょう。
(執筆者:茶谷利津子)