‌ ‌ ‌ ‌

ストーリーを持ち歩く:遠州織物と天竜ジビエ革でつくる〈テアトリーノ〉のトートバッグ

遠州は、泉州(大阪)、三河(愛知)と並ぶ、日本三大織物・遠州織物の産地です。
その魅力は、何といってもバリエーション豊かな素材や織り方と、それを可能にする高い技術力。でもその多彩さゆえに、地元の人でも遠州織物のことをよく知らない方も多いはず。そこで今回は、遠州織物のオリジナル帆布や天竜ジビエ革を使った浜松発のバッグブランド<テアトリーノ(teatrino)>さをご紹介します。
遠鉄百貨店をはじめ、県内外のイベントで人気を博してきたテトリーノさんが、この秋、満を持してアトリエ「.COMME(ドットコゥム)」をオープン。早速お邪魔してきました。

 

新居町にOPEN    アトリエ「.COMME(ドットコゥム)」

 

テアトリーノさん初の実店舗は、浜松市のお隣、JR浜松駅から車で40分ほどの静岡県湖西市新居町にあります。浜名バイパスの新居弁天ICを下りてすぐ、海の町らしくJR東海道線の側にある釣り具店の裏手にオープンしました。

テアトリーノは、遠鉄百貨店での企画展【Comfort】への出展をはじめ、県内外のイベントに出店する人気のバッグブランド。
人気の秘密はなんといっても、遠州織物のオリジナル帆布です。丈夫で使い勝手が良いだけでなく、テクスチャーの個性が際立つ生地が魅力。そして、素材の持つストーリーを形にするエシカルなものづくりが人々を惹きつけています。

テアトリーノの代表を務める増田 美由紀さんは、アパレル企業に20年勤めた経験を活かし、2014年にトートバッグのプロデュースをスタート。遠州織物に出会った2017年からは、本格的に地元の遠州織物や天竜ジビエレザーを活用したものづくりをしながら、遠州織物の魅力を発信する活動を続けています。

「バッグづくりを通じてお客様や機屋さんなど、人とのつながりが増えてきたことで、テアトリーノのホームとなる場所を構えたいなと思っていました。ここは少しわかりづらい場所ですが、あえて隠れ家のような店舗にしてみました。アトリエ「.COMME(ドットコゥム)」は、イタリア語で「来る」、フランス語で「お気に入り」を表す言葉。ここまで来ていただいたお客様と新しいつながりが生まれる場所、みなさんのお気に入りが見つけられる場所になれたらと思っています」

店内には、テアトリーノさんの代名詞である遠州織物オリジナル帆布バッグをはじめ、国内産の良質な帆布や天竜ジビエ革を使用したプロダクトがフルラインで揃います。

左:オリジナル帆布トートバッグ M(リネン×キナリ)右:オリジナル帆布トートバッグ L(キナリ×黒)

 

アルバートン帆布トートバッグシリーズ

 

HACO BAG シリーズ

また作家さんによるポップアップショップや、遠州織物の生地販売も開始。いつ来ても新しい発見がある場所として、今後もさまざまな展示会やイベントを開催する予定です。

遠州織物の魅力を再発見

遠州織物の歴史

遠州地方は、温暖な気候と天竜川の豊かな水に恵まれた綿花の産地。江戸時代から生産をはじめた綿織物によって、泉州(大阪)、三河(愛知)と並び日本三大織物産地として栄えた地域です。近代になり織物技術が進歩すると、浜松でも動力織機の開発が進み、のちのオートバイメーカーや楽器メーカーの創業につながる会社が次々と創業。浜松の「ものづくりのまち」としての礎を築きました。
その後、大きく発展したオートバイ産業や楽器産業に押される形で、繊維産業の大企業が他の地域より早く撤退していった遠州では、小さな機屋が独自の強みを育てて発展。「他の産地で織れないものは遠州に持っていけば織れる」と言われるほどの高い技術力を持つようになりました。

遠州織物の特徴

遠州織物と聞くと、遠州綿紬を思い浮かべる方も多いと思います。遠州綿紬は遠州織物の中のひとつ。紬のような小幅から広幅まで遠州で織られた生地はすべて遠州織物と呼んでいます。
遠州では、小さな機屋が産元の注文に細かく対応し、技術力を磨いてきたことで、多彩で高度な技術力を持つようになりました。
そのため、ひと言で表せるような分かりやすさはありませんが、シャツ生地や、コーデュロイ生地、麻織物、帆布など、それぞれの機屋が個性を生かしたバリエーション豊かな生地を生産できることが、他の地域にはない遠州織物の最大の特徴なのです。
また、ものづくりへのこだわりが強い職人が集まる地域として知られ、生産性は高くないものの、独特の風合いが生まれる旧式のシャトル織機の保有台数は国内最大級海外のメゾンからも高い評価を受けています。

 

テアトリーノ オリジナル帆布誕生ものがたり

オリジナル帆布トートバッグ 横長 L(ネップツイードグレー×キナリ)

遠州織物 髙田織布工場

 

浜名湖の舘山寺温泉からほど近い髙田織布工場は、昭和11年創業の歴史ある機屋です。三代目となる髙田素宏さんが得意とするのは、レピア織機を使った難易度の高い麻織物や太番手の糸を使った厚手高密度の綿生地。同じ織機を使って薄手の麻と厚みのある綿を織り分ける仕事は、どこにも真似できない高度な技術を要します。
髙田織布のオリジナル生地は、髙田さんが自分が着たいものを追求したワーク系の肉厚なキャンパス生地です。なかでも縦縞が美しいウォバッシュストライプを使った生地は、髙田さんのお気に入りです。

テアトリーノ × 髙田織布  オリジナル帆布ができるまで

左:高田さん 右:増田さん

テアトリーノの増田さんがひとめぼれした遠州織物も、髙田さんが作るオリジナルキャンパス生地でした。
増田さんがはじめて髙田さんの織物に出会ったのは2017年。家族を持ち、年齢を重ねることで、物事をより深く掘り下げて考えるようになったという増田さん。“日常使いのバッグ”をつくる延長線上にある、さまざまな社会問題や環境問題に目を向けるようになります。テアトリーノのバッグに相応しい生地とはどんなものなのかとあちこちの機屋を巡っていた時期に出会ったのが髙田織布でした。

「長年、アパレルに携わり、遠州織物の産地に生まれ育ちながら、遠州織物について自分が何も知らなかったことに愕然としました。髙田織布の工場にお邪魔し、生地作りを知ることで、あらためて遠州織物と職人さんへの敬意が深まると同時に、このままではもったいない、もっと遠州織物を知ってもらいたい、という気持ちが強くなったんです」

増田さんは、遠州織物への想いを伝えるため、髙田織布さんで工場のお手伝いを開始。同時に遠州織物の販売会ではアパレルの経験を活かして売り場でのコーディネートや接客を請け負うなど、積極的に遠州織物のものづくりの現場に関わっていきました。

オリジナル帆布トートバッグ 横長 L(ネップツイードベージュ×キナリ)

「私にできることは、遠州織物が持っている魅力を一つひとつ繋げて、ストーリーとして伝えていくこと。そのためにも魅力あるプロダクトを生み出していくことが大事です。そしてストーリーを伝える発信力の源として誕生したのが、髙田織布さんと共同開発したオリジナル帆布です」

テアトリーノの遠州織物オリジナル帆布は、厚手で高密度なのに軽くて丈夫。使い込むほどに味が出ます。綿の帆布のほかに、麻と綿を合わせたオリジナル帆布など、色や素材で違った表情や風合いが楽しめます。

 

もっとエシカルに。  天竜ジビエ革を使ったものづくり

 

天竜鹿革名刺ケース

浜松市北部に位置する天竜区は、面積の9割を森林が占める自然豊かな土地。いま日本の森林で問題になっているのが、生息数が急激に増加したことにより、田畑や植林の苗木を荒らしてしまう野生動物たちの存在です。浜松市の野生動物の捕獲計画数はイノシシで年間1100頭、シカが年間820頭。害獣駆除として捕獲された動物の肉は、食用として活用されるものの、その革のほとんどは破棄されています。

「レザー製品のために殺される命がある一方で、害獣駆除として殺される命があります。なんとかこの命を無駄にせず、革を活用できないだろうかとはじめたのが、天竜ジビエ革のシリーズです」

浜松では、天竜区二俣の国産ジーンズ専門店 GENUINE JEANS SHOP Spiral〉のオーナー・福澤さんが、天竜の野生動物の革を使ったレザー製品づくりに取り組んでいます。テアトリーノでは、Spiralさんの協力のもと、2018年から天竜ジビエ革の取り扱いを開始。トートバッグの留め具やバッグ、名刺ケースなどを制作しています。

「野生動物の革は飼育されたものと違い、野山で走り回った時のキズや虫刺されの跡まで残っています。プロダクトとしては欠点とも言えるキズや跡を、彼らが生きていた証としてそのまま伝えていけたらと思います」

人と人を結び、つなぐ。

「私のやりたい事は人と人をつなげること。何でも包み込んでくれる「カバン」のように、人の心に寄り添うものづくりを心がけていきたいです」

モノが生まれるまでの過程や、人と人のつながり、環境や社会への配慮。プロダクトが持つストーリーを片手に、まちに出かけてみませんか?

【遠鉄百貨店 企画展Comfort  開催】
12月8日(水)より、遠鉄百貨店 本館3F 特設会場にて、テアトリーノさんが参加する企画展Comfortが開催されます。
県内7人の作家による、バッグや洋服、アクセサリー、ラワーアレンジメントなど、クリスマス前にぴったりな品が見つかる展覧会です。ぜひご来店ください。

会場:遠鉄百貨店本館3F 特設会場
期間:2021年12月8日(水)~12月14日(火)
時間:10:00~19:00(最終日は10:00~16:30)

お問い合わせ電話番号:053-457-6555

 

teatrino (テアトリーノ)
■https://teatrino-mode.com/
■Instagram
アトリエ「.COMME(ドットコゥム)」
住所:静岡県湖西市新居町新居3444-7
アトリエのオープンスケジュールはホームページよりご確認ください。

参考資料:遠州さんち ー広幅機屋のことー (発行:遠州地域振興協議会)

売りたい人も買いたい人も
▼遠鉄の不動産へお問合せください▼