不動産の売却方法は、不動産会社に買主を探してもらう「仲介」と、不動産会社に物件を直接買い取ってもらう「買取」の2種類です。
買取は、仲介のように買主を探す必要はありませんが、売却価格が相場の7割程度になってしまいます。
この記事では、不動産買取での売却価格が市場価格よりも安くなってしまう理由や、高値で買い取ってもらうコツを解説します。
不動産の売却に失敗したくない方は、ぜひご一読ください。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
不動産買取の相場が市場価格よりも安い理由
不動産買取が、売却価格が市場価格よりも安くなる理由を詳しく解説していきます。
修繕・リノベーション費用がかかる
不動産会社は、買い取った不動産を修繕またはリノベーションし、付加価値を与えたうえで再販して利益を得ています。
修繕やリノベーションには費用がかかるため、不動産会社が売主に提示する買取価格は、相場よりも低くなるのです。
また改修した物件を売り出す際に、人件費や広告費がかかるうえに、リノベーションを施したからといって必ず物件が売れる保証はありません。
不動産会社は、再販によって利益が出るように市場価格の7割で物件を買い取ります。
仲介手数料がない
仲介手数料とは、不動産会社が売主や買主から受け取る報酬です。
しかし不動産買取では、売主を買主と仲介しないため、不動産会社は仲介手数料を得られません。
売主から仲介手数料を得られない代わりに、買い取った不動産を再販して利益を得ているので、不動産会社は市場価格の7割程度で買い取っているのです。
不動産買取はメリットも大きい
不動産買取での売却は、売却価格は安くなりますが、次の3つのメリットがあります。
そのため状況によっては有効な手段となるでしょう。
スピーディに物件を売却できる
不動産買取では、買主を探す必要がありません。
不動産会社が提示する売却価格に合意すれば、仲介よりも短期間で物件を売却できます。
需要が見込める物件であれば、買主は見つかりやすいでしょう。
しかし、築年数の経過した物件や利便性の低い場所に建っている物件、事故・事件のあった訳アリ物件は買主探しに時間がかかります。
不動産買取であれば、売却が困難な物件でも短期間で売却できる可能性があります。
契約不適合責任が免除され場合がある
契約不適合責任とは、物件を引き渡してから一定期間内に雨漏りやシロアリ被害などの欠陥が発覚した場合、修繕費用を売主が負担しなければならないというものです。
契約不適合責任が適用されるのは、買主が個人の場合です。
不動産会社が買主である場合、売主は契約不適合責任を負わないため、売却後に不具合が見つかっても修繕費用を負担する必要はありません。
内覧対応によるストレスがない
不動産買取では、売主が内覧に対応する必要はありません。
購入希望者の対応でストレスを感じる心配のない点が、不動産買取のメリットです。
仲介では、売主が購入希望者の内覧対応をおこないます。
購入希望者が物件や売主に良い印象を持たなければ物件は売れないため、売主の多くは購入希望者への内覧対応に気を使ってストレスを感じてしまうのです。
また、生活を営んでいる状態の家を他人に見られることが、ストレスに感じる人もいます。
不動産買取の相場の調べ方
不動産売却の失敗を防ぐには、不動産会社に買取の査定を依頼する前に不動産の価格相場を調べることが大切です。
ご自身で不動産の買取相場をあらかじめチェックしておくことで、安値で物件を買い取られてしまうリスクを防げます。
ここでは、ご自身で不動産の買取価格を調べる方法を解説します。
レインズマーケットインフォメーション
レインズマーケットインフォメーションでは、実際に取引された価格(成約価格)を検索できます。
より正確な買取相場を調べたいのであれば、レインズマーケットインフォメーションを利用すると良いでしょう。
またレインズマーケットインフォメーションは、沿線や最寄り駅、駅からの距離、土地・建物の面積、間取り、築年数など、詳細な条件を設定して、売却を予定している物件と近い条件の価格相場を調べることも可能です。
土地総合情報システム
土地総合情報システムとは、国土交通省が運営しているサイトで、過去の不動産取引情報から相場を調べられます。
宅地や中古マンションなど、不動産の種類別に相場を検索可能です。
ただし土地総合情報システムで検索できるのは、不動産取引をした人のアンケート結果と国土交通省が算出した地価公示、都道府県が調査した地価調査の結果です。
実際の価格相場とは、異なる可能性があります。
不動産ポータルサイト
もっとも手軽に価格を調べられるのが「SUUMO」や「at home」などの不動産ポータルサイトです。
不動産ポータルサイトは、ユーザーが物件情報を検索しやすいように工夫されているため、調べやすい点がメリットといえます。
情報は頻繁に更新されており、最新の価格を調べられます。
ただし不動産ポータルサイトに掲載されているのは、あくまで物件の売り出し価格です。
実際の成約価格ではない点に注意が必要です。
不動産の高額買取を成功させるポイント
不動産買取でも、高額で買い取ってもらえる方法があります。
ここでは、不動産を高額で買い取ってもらうための3つのコツを解説します。
見積もりは複数の不動産買取会社に依頼
複数の不動産会社に買取査定を依頼し査定結果を比較することは、高額買取を実現させるポイントの1つです。
1社に買取査定を依頼しただけでは、査定結果や不動産会社の説明の是非を判断できません。
不動産会社は、物件をできるだけ安く仕入れたいと考えています。
相場から考えられる妥当な買取価格よりも、低い金額を提示してくる可能性はゼロではありません。
複数の不動産会社に買取査定を依頼して査定の根拠を聞くことで、誤って安値で売ってしまうリスクを防げます。
また複数の不動産会社に査定を依頼して買取価格を競わせることで、買取価格を引き上げることも可能です。
周辺相場を調べて交渉
不動産会社の提示した買取価格が、再販によって利益を出せる限界の金額であるとは限りません。
ご自身で不動産ポータルサイトなどで周辺相場を調べて、不動産会社に買い取ってもらえる金額を予想しておくと価格の交渉がしやすくなります。
また、不動産会社の提示した買取価格が、相場から考えて妥当かどうか判断するためにも周辺相場の調査は大切です。
買取保証のある不動産会社に依頼
買取保証とは、所定の期間内に物件の買主が見つからなかった場合に不動産会社が買い取ってくれる制度です。
不動産買取で高く売却できる可能性はあるものの、仲介で売却するときほど高額にはなりません。
できるだけ物件を高い価格で売却したいのであれば、買取の前に不動産会社へ仲介を依頼して買主を探してもらう必要があります。
買取保証のある不動産会社に仲介を依頼すると、相場と同程度の価格で売却できる可能性を残しつつ物件を確実に売却できます。
まとめ
不動産買取の価格が相場よりも安くなってしまうのは、不動産会社が物件を再販して利益を得ているためです。
一方で不動産買取は、物件を手早く売却できるだけでなく訳アリ物件も売却可能です。
内覧対応によるストレスを感じることもありません。
たとえ売却価格が安くても、状況によっては不動産買取が有効な手段です。
買取と仲介のどちらで売却すれば良いか迷う場合、住宅のプロである不動産会社に相談してみてはいかがでしょうか。
(執筆者:品木彰)
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