不動産売却には、不動産会社に買主を見つけてもらう「仲介」という方法があります。
しかし仲介は、物件を高値で売却できる可能性はありますが、買主が見つかるまでに数ヶ月かかることもあります。
そこで手早く物件を売却したい方は、不動産の「買取」を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事では、不動産の買取再販を利用するメリットやデメリット、高値で売却する方法を解説します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
不動産の買取再販業とは?
買取再販業とは、不動産会社が買い取った物件を再販して利益を得る事業です。
売主から不動産会社が不動産を買い取り、間取りや床材、壁紙、水回り設備などを改装し、付加価値を与えたうえで売り出して利益を得ます。
中古住宅の買取再販市場は右肩上がり
株式会社矢野経済研究所の調査によると、中古住宅の買取再販市場規模は、2014年に21,400件であったのに対し、2018年には32,500件に増加しました。
※出典:株式会社矢野経済研究所「中古住宅買取再販市場に関する調査を実施(2019年)」
買取再販市場が拡大している理由は、中古住宅に対する需要が増加しているためです。
改修されているとはいえ、中古住宅の方が新築物件よりも安価です。
また需要の見込める土地には、すでに戸建て住宅やマンションが建っており、新築住宅の選択肢は限られています。
新築住宅よりも改修済みの中古住宅を探した方が、予算内で希望にあった物件を見つけやすいため、中古住宅の需要が増加しているのです。
そのため中古住宅を手放したい人にとっては、物件を高値で売却できる可能性があるでしょう。
需要が高まっている今が、中古住宅の売りどきであるとも考えられます。
買取で不動産を売却するメリット
ここでは、買取で不動産を売却するメリットについて解説していきます。
すぐに現金化できる
買取では、仲介で物件を売却するよりもスピーディーに不動産を現金化できます。
仲介では、買取よりも高値で売却できる可能性はあるものの、買主を見つけるまでに数か月かかることもあります。
早いケースでは、1週間で取引が完了するケースもあります。
「住み替え先の物件が決まっている」「急遽転勤が決まった」などの理由で、物件をできるだけ売却したい方にとって、不動産買取は有効な選択肢といえるでしょう。
契約不適合責任が免除される
契約不適合責任とは、不動産を引渡した後に、雨漏りやシロアリ被害などの欠陥・不具合が生じた場合に売主が負う責任です。
売主が契約不適合責任を負うのは、買主が個人の場合のみだからです。
不動産会社に買い取ってもらった不動産に、欠陥や不具合が生じても売主は修繕費用を負担する必要はありません。
仲介手数料がかからない
仲介で不動産を売却した場合は、不動産会社に仲介手数料を支払います。
例えば、売却価格が3,000万円では、仲介手数料は税込みで105.6万円と決して安い金額ではありません。
買取では不動産会社が売主と買主を仲介しないため、仲介手数料の支払いは不要です。
内覧が不要
不動産買取では、買主が不動産会社であるため、売主は販売活動をする必要はありません。
購入希望者の内覧対応も不要です。
売主の中には、居住中の物件を他人に見られることにストレスを感じてしまう方もいます。
また物件の売却期間中は、住居内をきれいに保つ必要があるため、普段通りの暮らし難しいケースもあるでしょう。
買取であれば、不動産会社による内覧は1度しかなく、内覧対応による負担もありません。
買取で不動産を売却するデメリット
買取のデメリットは、売却価格が市場価格の7割程度に下がってしまう点です。
例えば仲介であれば3,000万円で売却できる不動産でも、買取では2,100万円程度になる可能性もあります。
不動産会社は、買い取った物件に費用をかけて修繕やリフォームを施し、自社の「商品」に仕上げて再販します。
また改修した物件を売り出す際には、人件費や広告費もかかります。
市場価格の7割り程度で買い取らなければ、不動産会社は物件の再販で利益を得られないのです。
買取と仲介の違い
買取と仲介では、ビジネスモデルが大きく異なります。
買取は、売主から買い取った物件をリフォーム・リノベーションして再販します。
再販による売却価格から、物件の仕入れ費用や改修費用、人件費、広告費などを差し引いた金額が、不動産会社の利益です。
一方で仲介は、売主の代わりに不動産会社が売却活動をして買主を探します。
無事に買主が見つかり物件の売買契約が成立すると、売主または買主、あるいは両者から仲介手数料が得られます。
仲介手数料から、不動産ポータルサイトや折込チラシなどに掲載するための広告費、職員の人件費などを差し引いた金額が、仲介をした場合の利益です。
このように買取と仲介は、利益を得る構造が異なるため、売却価格や売却期間などに差が出ます。
買取で不動産を売却する際のポイント
ここで紹介するポイントを押さえることで、高値で買い取ってもらえる可能性があります。
詳しくみていきましょう。
複数の不動産会社に見積もりを依頼する
買取を利用する場合、複数の不動産会社に買取価格の見積もりを依頼することが大切です。
1社だけの見積もりでは、査定結果や担当者の発言が妥当か判断できません。
複数の不動産会社から査定結果や査定の根拠を聞くと、買取価格の相場や根拠を把握できます。
また査定結果を複数の不動産会社から取り寄せると、買取価格の交渉材料にできる可能性もあります。
不動産買取の相場をチェックする
不動産ポータルサイトや折込チラシなどで、ご自身でも買取価格の相場を調べておきましょう。
「レインズマーケットインフォメーション」や国土交通省の「土地総合情報システム」で、実際の取引価格を確認するのも有効です。
できるだけ多くの情報を手にすることで、不動産会社との交渉を有利に進めやすくなります。
不動産買取の相場について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
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「買取保証」のある仲介も検討する
買取保証とは、一定期間中に売主が希望する金額で不動産が売れなかった場合、不動産会社が事前に約束した金額で買い取ってくれる制度です。
どれだけ不動産会社と買取価格の交渉をしても、仲介よりも高値で売却するのは困難です。
できるだけ高値で不動産を売却したいのであれば、不動産会社に仲介してもらい買主を見つけてもらう必要があります。
買取保証のある不動産会社に仲介を依頼すると、物件が売れずに終わるリスクを回避しつつ、相場と同程度の価格で売却できる可能性があります。
まとめ
買取再販を行う不動産会社に買取を依頼すると、物件を手早く現金化でき、契約不適合責任が免除されるなどのメリットがあります。
ただし買取は、売却価格が相場の7割程度に下がる点がデメリットです。
もし買取と仲介のどちらで売却すればよいか迷う場合は、買取保証のある不動産会社を利用する方法がおすすめです。
できるだけ多くの不動産会社から話を聞き、ご自身に合った方法を選ぶことが不動産売却を成功させる秘訣でしょう。
(執筆者:品木彰)
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