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自宅が競売にかけられたらいつまで住める?競売の流れと任意売却について

自宅が競売にかけられ買受人が見つかると、債務者は自宅から退去する必要があります。
しかし実際には、買受人が決まってもすぐに立ち退きを求められるわけではありません。

もし自宅が競売対象となった場合、いつまで元の家に住めるのでしょうか。

この記事では「競売になった家に住む期限」を中心に、競売のデメリットや回避方法を合わせて紹介します。

遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 影山 裕紀(かげやま ひろき)


宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、ITパスポート

競売とは

競売とは債権者が債権回収を行うために、裁判所に申し立てて担保となった物件を差し押さえ、オークション形式で売却することを指します。

住宅ローンの滞納が長期間にわたると、金融機関は残債を回収するため、担保となっている不動産を競売にかけて現金化します。
金融機関からの申し立てにより競売が開始すると、裁判所は購入希望者を公募します。
購入希望者が複数いれば、最も高い価格を提示した人が買受人になります。

競売では債務者の意思は一切反映されずに、対象物件の売却が行われます。

競売になったらいつまで住める?

自宅が競売にかけられてから住める期間は、最長で「買受人が家の代金を払ってから2か月」です。
裁判所内での手続きの進行状況によっては、1か月半程度がタイムリミットになることもあります。

なお最長2か月という期間は、あくまで強制執行で退去させられるまでの期限です。
基本的には、強制執行を受けるより前に自主的に退去するのが望ましいでしょう。

競売の流れ

住宅ローンの滞納から競売で買受人が決定するまでは、以下の流れで進行します。

督促状の郵送 滞納1か月目より
期限の利益(分割払いの権利)の喪失 滞納から6か月程度
差押通知書の郵送 滞納から8か月程度
競売開始決定通知書の郵送 滞納から9か月程度
裁判所執行官の現況調査 滞納から10か月程度
競売の期間入札通知書の到着 滞納から13か月程度
BIT(競売物件の情報サイト)への公開 入札開始から2・3週間前
入札開始 滞納から19か月程度
開札・買受人の決定 入札開始から最長1か月

段階が進むほど退去までの時間も短くなるため、流れを把握した上で自宅を手放したあとの生活を考えましょう。

強制退去の可能性も

買受人が家の代金を支払い、所有者の名義が移動すると、自宅は買受人のものとなります。
それ以降も債務者が家に住み続けている状態は「不法占拠」に該当します。

不法占拠が長期化すると、最終的に裁判所の執行官によって強制的に退去させられます。

強制退去になると家財道具や荷物は全て運び出され、鍵も交換されます。
また強制退去にかかった費用は、全て債務者が負担します。

経済的に苦しい状態で退去を強いられ、退去にかかる費用も請求されるため、強制退去が債務者に与える負担は大きいでしょう。
競売が決定した時点で引越しの準備を進め、自発的に退去した方が精神的・経済的なダメージは小さいといえます。

競売で自宅を手放すデメリット

競売による売却はデメリットが多く、可能な限り回避したい方法です。
競売で家を手放す場合、所有者にとってどのような点が不利になるのでしょうか。

売却価格が市場価格より安くなる

競売の売却価格は、市場価格より安くなるのが一般的です。
通常は市場価格の7割程度、安い場合は5割程度になることもあります。
市場価格より安く売却されるのは、買受人に対する競売特有のデメリットがあるからです。

競売物件は所有者が売却を希望していないため、内覧できません。
物件情報の公開から入札期間終了までの期間は短く、他の物件と比較検討する時間も限られます。

こういった点から売却基準価格が安く設定されており、相場価格での売却は難しいのが現状です。

引越しの時期を選べない

競売では、債務者の希望によって引越し時期を調整できません。
引渡し時期は裁判所での手続きの進行状況によって左右され、最長でも買受人が代金を支払ってから2か月後です。

通常の不動産売買は、購入希望者と協議の上で引渡しの時期を調整できます。
引越し先を決めてから引渡すなど、所有者の都合を優先することも可能です。

競売では、債務者側の事情で引渡しが遅れることは認められません。
引渡しに応じなければ、たとえ引越し先が決まっていなくても強制的に退去させられます。

引越し費用などを自分で捻出しなければならない

競売の売却代金は、全額債務の返済に充てられます。

代金の一部を引越しの費用や、滞納中の税金などの支払いに使うことは不可能です。
競売では債権者の権利が最優先されるため、通常の不動産売却のような融通は効きません。

経済状況が周囲に知られる可能性がある

競売の対象となる物件は、BIT(競売物件の情報サイト)や新聞などに詳細情報を公開し、購入希望者を広く募ります。

自宅を知っている人が見れば、物件所有者の経済状況を知られる可能性があります。

自宅が競売対象となると、債務者のプライバシーに配慮されない点に注意が必要です。

住宅ローンを滞納してしまったら「任意売却」も検討しよう

実は住宅ローンを返済できなくなったとしても、必ずしも競売で家を手放すわけではありません。
裁判所主導の競売ではなく、自分で売却を行う「任意売却」という手段を検討できます。

任意売却とは

任意売却とは、債権者である金融機関の同意を得て、担保になっている不動産を売却することです。

競売とは異なり、通常の不動産売却と同じように仲介会社に依頼して売却活動を行います。
任意売却には、以下のメリットがあります。

  • 差し押さえ物件とは分からない(経済状況を周囲に知られない)
  • 市場価格に近い価格での売却が期待できる
  • 引渡し時期を調整できる

任意売却を成功させるためには

任意売却の成功には「不動産会社選び」と「早めの相談」が重要です。

任意売却を進めるにあたっては、多くの場面で債権者である金融機関との交渉や調整が必要です。
任意売却の着手には金融機関の同意が必要ですが、そもそも同意してくれないケースも珍しくありません。
売却代金から引越し費用などを捻出したい場合も、了承が必要となります。

こういった交渉は債務者だけでは難しいため、任意売却の経験が豊富な不動産会社のサポートが必要不可欠です。

また任意売却を行うケースでは、競売との同時進行で売却活動を進めることも少なくありません。
任意売却への着手が遅れるほど、売却活動に使える時間が短くなります。
競売の買受人が決定すると任意売却できなくなるため、遅くとも入札開始までには購入者を見つけることが必要です。

住宅ローンの滞納が長引きそうであれば、早めに金融機関と不動産会社に相談しましょう。

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まとめ

担保になっている自宅が競売にかけられると、住み続けられるのは長くても買受人の代金の支払いから2か月程度です。
物件の引渡しを拒否すると最終的には強制退去させられるため、早めの引越し準備が必要です。

競売は「売却価格が安い」「債務者の事情が考慮されない」など、債務者にとってデメリットが大きい売却方法です。

競売による売却を望まないのであれば、金融機関の同意を得た上で任意売却も選択肢に入れましょう。
任意売却は、早めの相談と実績のある不動産会社選びが成功の秘訣です。
(執筆者:いちはらまきを)

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