マンションを売却すると、税金の支払いが発生します。
マンションの売却時に発生する税金を考慮していないと、手元に残るお金が想定よりも少なくなってしまうかもしれません。
今回はマンションを売却したときに課せられる税金の種類や計算方法、税負担を軽減する制度などについて分かりやすく解説していきます。
遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 影山 裕紀(かげやま ひろき)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、ITパスポート
マンション売却にかかる税金の種類
マンションの売却時に発生する税金の種類は、以下の通りです。
- 所得税・住民税
- 印紙税
- 登録免許税
それぞれについて解説します。
所得税・住民税
所得税や住民税は、給与所得や一時所得など1年間の所得に対して課せられる税金です。
マンションを売却した場合、以下の計算式で求められる金額を譲渡所得といい、所得税や住民税の課税対象となります。
- 譲渡所得額=譲渡価額−譲渡費用−取得費
それぞれの定義は、以下の通りです。
- 譲渡価額:マンションの売却価格
- 譲渡費用:仲介手数料や印紙税など、マンションの売却時に発生した諸経費
- 取得費:マンションの購入価格から減価償却費を差し引いた金額
減価償却費とは、築年数の経過によって目減りしていく、マンションの建物部分の資産価値を費用として引いていく考え方です。
築古の物件ほど経年劣化が進んでいるため、購入価格から差し引かれる減価償却費は高くなります。
譲渡所得を計算した結果がプラスであり、マンションの売却によって利益が出ていれば、確定申告をして所得税を納める必要があります。
住民税の納税は、確定申告後に送付されてくる納付書で行いましょう。
印紙税
印紙税とは、マンションの売買契約書に収入印紙を添付して納める税金です。
貼付する収入印紙の額は、契約書に記載されている契約金額によって異なります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円超 50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超 100万円 | 1,000円 | 500円 |
100万円超 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超 1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超 5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超 1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超 5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円超 10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円超 50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円超 | 600,000円 | 480,000円 |
※出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」をもとに作成
2022年(令和4年)3月31日までに作成された契約書は軽減措置の対象となるため、添付する収入印紙の金額が本来よりも少なくなります。
例えば契約金額が2,000万円であった場合、契約書に添付する収入印紙は10,000円分です。
登録免許税
登録免許税とは、登記をする際に支払う税金です。
ローンが残っている物件を売却する場合、残債を完済し抵当権の抹消登記をする必要があるため、登録免許税の支払いが発生します。
抵当権とは、ローンの返済が滞ったときに、金融機関が担保となっている物件を差し押さえて競売にかける権利です。
抵当権が設定された物件は、基本的に売却できません。
抵当権付きの物件を売却したいときは、ローンを完済して、抵当権の抹消登記をしましょう。
抵当権の抹消登記時に支払う登録免許税の額は、マンション1室あたり1,000円です。
なお、司法書士に抹消登記を依頼すると、数万円〜十数万円程度の報酬の支払いも発生します。
マンション売却にかかる税金の計算方法
マンションを売却したときに得られた、譲渡所得に対する税金は「分離課税」で計算します。
計算の際には、給与所得や事業所得などと分けます。
特別控除が適用される条件に該当すれば、譲渡所得から特別控除額を差し引いた金額に税率をかけて税額を算出するのです。
税率は、売却したマンションの所有期間によって異なります。
- 5年以下(短期譲渡所得):39.63%(所得税率30.63%+住民税率9%)
- 5年超(長期譲渡所得):20.315%(所得税率15.315%+住民税率5%)
※2037年(令和19年)までは、所得税額の2.1%が復興特別所得税として徴収されます。上記は、復興特別所得税を合算した税率です。
例えば所有期間が8年のマンションを売却し、300万円の譲渡所得が発生した場合、納税額は300万円×20.315%=609,450円です。
またマンションの所有期間が売却した年の1月1日時点で10年を超えていれば、「軽減税率の特例」が適用されます。
軽減税率の特例が適用された場合の税率は、以下の通りです。
- 6,000万円以下の部分:14.21%(所得税率10.21%+住民税率4%)
- 6,000万円超の部分:20.315%(所得税率15.315%+住民税率5%)
※上記税率には、復興特別所得税が含まれています。
マンション売却時に使える特例や控除
マンションを含む不動産を売却したときは、以下の制度を利用して譲渡所得に対する税負担を軽減できます。
- 居住用財産の3,000万円の特別控除
- 特定の居住用財産の買換え特例
- 居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除
なお上記の税負担を軽減する制度を受けるためには、原則としてマンションを売却した翌年に、確定申告で所定の申請が必要です。
居住用財産の3,000万円の特別控除
居住用財産の3,000万円の特別控除(以下、3,000万円特別控除)とは、所定の要件を満たすマイホームを売却すると、3,000万円までの譲渡所得が非課税となる制度です。
3,000万円の特別控除を適用できるのは、原則として売り手が住んでいた不動産を売却するときです。
投資用のマンションや別荘などを売却しても、3,000万円の特別控除を適用できません。
特定の居住用財産の買換え特例
特定の居住用財産の買換え特例(以下、買換え特例)とは、譲渡所得に対する税金の支払いを、住替え先の住居を売却するときまで先送りできる制度です。
例えば、以下のようにマンションから戸建て住宅に買換えたとしましょう。
A:戸建住宅に住み替えるためにマンションを売却して500万円の譲渡所得が発生
B:買換えた戸建て住宅を売却し300万円の譲渡所得が発生
買換え特例を利用すると、Aのタイミングでは課税されず、Bのタイミングで500万円+300万円=800万円の譲渡所得に対してまとめて課税されます。
ただしマンションを売却した年から数えて2年以内に、3,000万円の特別控除や居住用財産の譲渡損失の損益通算などを受けていると、買換え特例の適用対象外です。
居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除
居住用財産の譲渡損失の損益通算とは、譲渡所得の計算結果がマイナスであり、譲渡損失も発生している場合に、給与所得や一時所得などと相殺できる制度です。
例えばマンションを売却して、300万円の譲渡損失が発生したとしましょう。
マンションを売却した年の給与所得が500万円であった場合、300万円を損益通算することで、課税の対象となる所得が200万円となります。
また譲渡損失は、最大3年間繰り越せます。
譲渡損失額が、マンションを売却した年の他の所得合計よりも多かった場合、引ききれなかった金額は、翌年以降の所得と相殺できるのです。
住宅ローン控除との併用は要注意
住宅ローン控除とは、居住用の不動産をローンで購入した人が受けられる税の優遇制度です。
年末時点におけるローン残高の1%分を、所得税や住民税から直接差し引けます。
新居を購入する場合、そこに住み始めた年から数えて、前2年と後3年に3,000万円の特別控除や買換え特例などを受けていると、住宅ローン控除の適用対象外となります。
例えば、購入した新居に2021年から住み始めたとしましょう。
2021年の前2年である2019年と2020年、後3年である2022〜2024年の計6年間に、3,000万円の特別控除を受けると住宅ローン控除は利用できません。
なお居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除については、住宅ローン控除と併用可能です。
【まとめ】マンション売却時は税金と控除を把握することが重要!
マンションを売却して譲渡所得が発生した場合、所得税や住民税を納めなければなりません。
ただし譲渡所得が発生した場合「3,000万円の特別控除」や「買換え特例」を受けると税負担を軽減可能です。
譲渡損失が発生した場合は、他の所得と相殺することで税金の支払額を抑えられます。
マンションを売却するときは税金の計算方法や、税負担の軽減可能な制度の適用要件を把握しておくことが大切です。
売却時により多くのお金を手元に残したい方は、マンション売却の実績が豊富な不動産会社に相談するとよいでしょう。
(執筆者:品木彰)