マンションの売却では、売却後の税金の支払いや売却準備にかかる費用を除いた金額が手元に残ります。
そのため売却にはどんな費用がかかるのか、あらかじめ把握しておくことが大切です。
この記事では、マンションの売却で発生する費用と、売却後の節税のポイントを紹介します。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
マンション売却にかかる手数料や費用
マンションの売却では、以下の支払いが発生します。
- マンション売却にかかる手数料
- マンション売却にかかる税金
- その他売却準備にかかる費用
それぞれどのような費用がかかるのか、詳しく確認していきましょう。
マンション売却にかかる手数料
マンションの売却で発生するの、多くの場合「仲介手数料」「ローン一括返済の手数料」の2種類です。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産の売却時に仲介を依頼した不動産会社に支払う費用です。
成功報酬のため、複数社に仲介を依頼していた場合も、契約を成立させた1社にのみ支払います。
仲介手数料の金額は、売却金額ごとに上限が定められています。
詳細な計算方法は後述します。
ローン一括返済の手数料
住宅を売却した代金で住宅ローンを一括返済する際に、金融機関に支払う手数料です。
手数料の金額は金融機関ごとに異なり、5,000円台から5万円以上までさまざまです。
不明な場合は金融機関の公式サイトや窓口で確認してみましょう。
マンション売却にかかる税金
マンションを売却したときは、「印紙税」「登録免許税」「所得税・住民税・復興所得税(譲渡益に課税される税金)」といった税金がかかります。
印紙税
印紙税は、契約書や領収書に対して課される税金で、契約書の種類や金額に応じて税額が定められています。
不動産の売買契約書に課税される印紙税額は、平成26年4月1日から令和4年3月31日までに作成した場合、印紙税の軽減措置が適用され以下の金額となります。
契約書に記載の金額 | 印紙税額 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1千万円以下 | 5,000円 |
1千万円超5千万円以下 | 1万円 |
5千万円超1億円以下 | 3万円 |
登録免許税
マンションの売却時に住宅ローンの返済が残っている場合、金融機関の設定している抵当権の抹消登記が必要です。
その際「登録免許税」という税金がかかります。
マンション売却で発生する抵当権抹消登記の登録免許税額は、土地と建物それぞれに1,000円ずつかかるため、合計2,000円です。
抵当権抹消登記を司法書士に依頼する場合、別途報酬の支払いも必要です。
報酬額は事務所によって異なり、1件につき概ね14,000円から18,000円程度が相場となります。
所得税・住民税・復興特別所得税
マンションを売却して出た利益(譲渡益)には「所得税」「住民税」「復興所得税」がかかります。
それぞれ、税額は以下のとおりです。
所得税・住民税の税率
所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
5年以下 | 30% | 9% |
5年超10年以下 | 15% | 5% |
10年超 | 6,000万円までの部分:10% 6,000万円超の部分:15% |
6,000万円までの部分:4% 6,000万円超の部分:5% |
復興所得税率
基準所得税額の2.1%
マンション売却にかかる費用
税金や各種手数料の他、必要に応じて以下の費用が別途発生します。
引越し費用
売却するマンションから新居へ引っ越すときは、引越し費用も確認しておきましょう。
引越しの費用は「荷物量」「輸送コスト」「引越し時期」によって変化します。
条件しだいで高額になることもあるため、事前に見積もりを取得し、必要経費のひとつとして把握しておきましょう。
その他費用
売却前にリフォームやハウスクリーニングを行う場合、こちらも必要な費用として考慮しておきましょう。
マンション売却の仲介手数料の計算方法
不動産売却の仲介手数料には、以下の表の通りに上限が定められています。
仲介手数料の料率(上限) | |
200万円以下の部分 | 売却価格の5% |
200万円超400万円以下の部分 | 売却価格の4% |
400万円超の部分 | 売却価格の3% |
1,000万円で売却できたマンションの仲介手数料を計算すると、結果は次のとおりです。
A:200万円(200万円以下の部分)×5%=10万円
B:200万円(200万円超400万以下の部分)×4%=8万円
C:600万円(400万円超の部分)×3%=18万円
A(10万円)+B(8万円)+C(18万円)=36万円(消費税別)
以下の計算式にあてはめると、仲介手数料の上限額を求められます。
【売却価格が200万円超400万円以下】
売却価格の4%+2万円+消費税
【売却価格が400万円超】
売却価格の3%+6万円+消費税
マンション売却にかかる税金を抑えるためには?
マンション売却にかかる税金は、控除や特例制度を利用することで軽減できます。
居住していたマンションを売却する場合「居住用財産の3,000万円特別控除」および「居住用財産の買換え特例」を適用できる可能性があります。
居住用財産の3,000万円特別控除
居住用財産の3,000万円特別控除は、住んでいた家を売却する場合、譲渡所得のうち3,000万円までが非課税になる制度です。
居住用のマンションであれば、所有期間の長短に関わらず利用できます。
3,000万円特別控除にはいくつか適用要件があるため、あらかじめ確認しておきましょう。
- 居住用の家を売却すること
- 以前住んでいた家の場合、引っ越してから3年以内に売却していること
- 売主と買主が同居の親族や内縁相手など特別な間柄でないこと
- 同じ住宅に他の特例を適用していないこと など
居住用財産の買換え特例
居住用財産の買換え特例は、自宅を買い替える目的で売却する場合、売却時に発生する税金の支払いを先送りできる制度です。
本来売却時にかかる所得税や住民税などの支払いを、買い替える物件を売却するときまで先送りできます。
ただし居住用財産の買換え特例は、居住用財産の3,000万円特別控除と併用できないため、どちらか一方を選ぶこととなります。
居住用財産の買換え特例の適用要件を、一例ですが以下にご紹介します。
- 居住用の家を売却すること
- 以前住んでいた家の場合引っ越してから3年以内に売却すること
- 売却代金が1億円以下であること
- 居住期間が10年以上であること など
居住用財産の3,000万円控除と異なり、売却代金と居住期間に制限が設けられている点に注意しましょう。
【まとめ】マンション売却では手数料や費用も事前に把握しよう!
マンション売却では、仲介手数料やローン一括返済の手数料、印紙税や登録免許税などさまざまな費用がかかります。
売却の際は、支払項目と大まかな金額を整理してみましょう。
マンション売却で得た譲渡所得には「居住用財産の3,000万円特別控除」「居住用財産の買換え特例」を利用することで、税金を安くできる可能性があります。
自宅マンションの売却を考えたときは、特別控除や特例の適用要件をあらかじめ確認しましょう。
(執筆者:いちはらまきを)