マンションの売却を考えたとき、「いつ何を準備すればいいの?」「どのような流れで進むの?」と疑問を感じる方は多いものです。
そこでこの記事では、マンションの売却がどのような流れで進行するのかをご紹介します。
進行状況別に何が必要なのか、どのように準備すればよいのかも合わせて解説します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
マンションの売却の流れは7ステップ
マンションの流れは、大きく分けて以下の7つのステップで進行するのが一般的です。
- マンション売却の準備をする
- マンションの査定依頼をする
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- マンションの売却活動を行う
- 売買契約を結ぶ
- マンションの引渡し・決済を行う
- 必要に応じて確定申告を行う
次項より、マンション売却で必要となる書類や手続きを、ステップごとに解説していきます。
1.マンション売却の準備をする
マンションの売却は、査定依頼から始めることもできますが、事前に準備をしておくことで、以降の工程をスムーズに進められます。
必要な準備内容を見てみましょう。
必要書類の準備
マンションの売却では、媒介契約時と売買契約時に、それぞれ物件情報に関する書類が必要です。
取得に時間がかかったり、マンション購入時に片付けて行方不明になっていたりすることもあるため、早めに準備しておきましょう。
通常、マンションの売却では以下の書類が必要となります。
- 登記済権利証(登記識別情報)
- 間取図
- 新築販売時のパンフレット(あれば)
- 建築設計図書・工事記録書(工事の履歴がある場合)
- 耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書(あれば)
- 管理規約や使用細則
- 固定資産税と都市計画税の納税通知書
- 実印と印鑑登録証明書
- 固定資産評価証明書
- 登記済権利証
そのほか、必要に応じて戸籍の附表や身分証明書の提出が求められる場合があります。
ローン残債の把握
住宅ローンの未返済分が残っている場合、売却代金で完済できなければマンションを売却できません。
そのため、売却の際にローン残高を把握しておきましょう。
ローンの残債は以下の方法で確認できます。
早めに調べておきましょう。
- 金融機関のWEBサイト
- ローン残高証明書
- 返済予定表
- 窓口で問い合わせる
売却相場の調査
マンションがどの程度の金額で売れそうか、だいたいの相場を調べておきましょう。
買い替え時の資金計画が立てやすくなり、不動産会社から提示された査定価格が適正かも判断しやすくなります。
相場調査の最も手軽な方法は、インターネットを利用することです。
公的機関提供の以下のサイトから、実際の不動産取引のデータを閲覧できます。
似た条件の売買履歴を探してみましょう。
2.マンションの査定依頼をする
次に不動産会社に査定を依頼します。
査定には、マンションの表面的な情報のみで価格を出す「簡易査定」と、不動産会社の担当者が訪問して行う「訪問査定」の2種類が存在します。
簡易査定は手間をかけずに査定価格を確認できる方法で、不動産売却の一括査定依頼も利用可能です。
ただし実際の物件の状態を確認しながら査定するわけではないため、訪問査定に比べると正確性に欠けています。
状況に応じて、希望の査定方法を選びましょう。
また媒介を依頼する不動産会社を選ぶ際も、妥当な売り出し価格を決定するために、最低1社からの訪問査定を受ける必要があります。
査定の方法の詳しい内容は、こちらの記事をご参照ください。
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3.不動産会社と媒介契約を結ぶ
媒介契約とは、所有者に変わって不動産会社が不動産の売却活動(宣伝・営業)を行う契約です。
媒介契約を結んだ不動産会社は、WEBサイトへの物件情報の公開や、マンションを探している人への斡旋など、さまざまな方法で買主を探します。
媒介を依頼する不動産会社は、査定を依頼した会社の中から選ぶのが一般的です。
媒介契約の種類
媒介契約は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類の形態があり、取り決めの内容や不動産会社からの報告頻度などが異なります。
有利に売却するためにも、各形態の特徴を把握した上で、適したものを選びましょう。
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4.マンションの売却活動を行う
媒介契約を締結したら、いよいよ買主探しが始まります。
物件の営業自体は不動産会社に任せておいてよいのですが「売り出し価格の決定」「内覧対応」「条件交渉」の3つは、売主側で対応しなければなりません。
売り出し価格の決定
売り出し価格とは、物件情報を公開する際につけられる最初の価格です。
安すぎる価格を付けると損をする可能性がある一方、価格が高すぎても敬遠されます。
売り出し価格は査定結果のほか、エリアの需要や市場のトレンドなども考慮し、適正価格で決定しましょう。
内覧対応を行う
内覧では、購入希望者が実際のマンションの現状をチェックするので、掃除や整理整頓が重要になります。
購入希望者から質問されそうなことを洗い出しておき、回答を用意しておくことも必要です。
売主に対する心証は購入希望者の意欲を左右するため、内覧では丁寧な対応を心掛けましょう。
諸条件の交渉
購入希望者が物件を気に入った場合、具体的な条件交渉に入ります。
価格に関する交渉のほか、引渡し日時や設備の修繕などの希望が出る場合もあります。
実際の交渉では不動産会社が間に入りますが、条件については売主側でも事前に目安を決めておきましょう。
交渉がまとまると、いよいよ売買契約の締結です。
5.売買契約を結ぶ
売買契約の締結は、売主、買主、不動産会社の担当者で交わされます。
そこであらためて契約内容や各種条件を確認し、重要事項説明も合わせて行います。
契約書に売主と買主が署名・捺印すれば、売買契約の締結は完了です。
この際、マンションの代金の一部が手付金として支払われます。
契約締結後は、正当な理由なく契約をキャンセルすると違約金が発生するため注意してください。
6.マンションの引渡し・決済を行う
事前に合意した引渡し日に、物件引渡しと決済を行います。
引渡しと決済は同日に行われることが一般的で、契約当事者のほか「不動産会社の担当者」「買主が住宅ローンを契約した金融機関の担当者」が同席します。
引渡しと決済は、おおまかに以下の流れで進行します。
- 残金(手付金を除いた残りの金額)を決済する
- 受け取った代金で売主の住宅ローンを返済
- 抵当権抹消登記を行う
- 売主からの所有権移転と買主の抵当権設定を行う
- 物件の状態を確認し鍵を引き渡す
その後、媒介を依頼した不動産会社に売主が仲介手数料を支払って、売却完了です。
7.必要に応じて確定申告を行う
売却で利益が出た場合は「譲渡所得」が発生するため、所得税・住民税の課税対象となり、確定申告が必要です。
また、利益が出ない場合でも、翌年に損失を繰り越す場合は確定申告が必要となります。
マンション売却での確定申告の概要はこちらの記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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【まとめ】マンション売却の流れをチェックしてスムーズな売却を
マンションの売却活動の多くは、売主側での対応も求められます。
売却活動を始めてから慌てないよう、マンション売却の流れを把握し、準備を進めましょう。
特に物件情報に関する書類は、取得や準備に時間がかかることもあるため、売却を決めた時点で申請を始めておきましょう。
(執筆者:いちはらまきを)