マンションを売却するときは、手数料や税金などの諸費用を支払う必要があります。
諸費用の中でも特に高額なのが、不動産会社に対して支払う「仲介手数料」です。
仲介手数料の金額を把握していないと、マンションの売却後に手元に残るお金が想定よりも少なくなってしまい、今後の資金計画に狂いが生じるかもしれません。
本記事では、仲介手数料の計算方法や支払うタイミングなどを解説します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
マンション売却の仲介手数料とは?
仲介手数料とは、マンションの売却活動の対価として不動産会社に支払う報酬です。
マンションをはじめとした不動産は、不動産会社の仲介がなくても個人間で売買できます。
しかし不動産の売買には、法律も含めた専門的な知識が必要です。
また売主だけの力で、買主を探すのは容易ではありません。
マンションを売りたいときは、不動産会社に依頼するのが一般的です。
不動産会社は、インターネットに物件の情報を掲載したり、住宅のポストにチラシを配布したりして買主を探します。
営業担当者の人件費や物件の広告費などの経費をかけて、買主を探してくれた不動産会社への成功報酬として、売主は仲介手数料を支払うのです。
マンション売却の仲介手数料はいくらかかる?
ここではマンション売却時の仲介手数料の計算方法や、上限額について解説します。
仲介手数料の上限は法律で決まっている
仲介手数料は、不動産購入者の権利保護を目的として、不動産業者を規制する「宅地建物取引業法」によって上限額が決められています。
上限額は、以下の通り不動産の売却価格に応じて決まる仕組みです。
不動産の売却価格 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下の部分 | 売却額の5%+消費税 |
200万円を超え400万円以下の部分 | 売却額の4%+消費税 |
400万円を超える部分 | 売却額の3%+消費税 |
上限額を超える仲介手数料を、売主や買主に請求するのは違法です。
※2018年1月より不動産売却価格が400万円以下の場合について、仲介手数料の上限額が変更となっております。(変更後:最大で18万円まで)
仲介手数料の計算方法
仲介手数料の上限額は、どのように計算するのでしょうか。
売却価格が3,000万円であるときの上限額を計算してみましょう。
仲介手数料の上限を計算すると、結果は以下のとおりとなりました。
- 200万円以下の部分:200万円×5%=10万円(税抜)
- 200万円を超え400万円以下の部分:200万円×4%=8万円(税抜)
- 400万円を超える部分:(3,000万円-200万円-200万円)×3%=78万円(税抜)
→ 合計:10万円+8万円+78万円=96万円(税抜)
売却価格が3,000万円である場合、仲介手数料の上限額は、96万円(税抜)です。
消費税率を10%とすると、合計金額は105.6万円となります。
速算式を用いた仲介手数料のシミュレーション
多くの場合マンションの売却価格は、400万円を超えます。
また、仲介手数料を法定上限額に設定する不動産会社は少なくありません。
そのため仲介手数料を計算するときは、「物件価格×3%+6万円(税別)」という速算式を用いるのが一般的です。
例えば売却価格が3,000万円であった場合、仲介手数料は「3,000万円×3%+6万円=96万円(税別)」となります。
5,000万円のマンションを売却したときの仲介手数料は「5,000万円×3%+6万円=156万円(税別)」です。
仲介手数料には消費税がかかる
仲介手数料に消費税がかかるのは、不動産会社が「売主と買主を仲介する」というサービスを提供して得た対価であるためです。
そもそも消費税は「商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税」です。
また消費税は、消費者が負担して事業者が納税します。
※参考:国税庁「消費税のしくみ」
そのため仲介というサービスを提供された人は、仲介手数料とあわせて消費税を不動産会社に支払う必要があり、不動産会社は受け取った消費税を国に納めなければなりません。
仲介手数料の早見表
売却価格ごとの仲介手数料の上限は、以下のとおりです。
〇仲介手数料の上限
売却価格 | 税抜 | 税込(税率10%) |
1,000万円 | 36.0万円 | 39.6万円 |
1,500万円 | 51.0万円 | 56.1万円 |
2,000万円 | 66.0万円 | 72.6万円 |
2,500万円 | 81.0万円 | 89.1万円 |
3,000万円 | 96.0万円 | 105.6万円 |
3,500万円 | 111.0万円 | 122.1万円 |
4,000万円 | 126.0万円 | 138.6万円 |
4,500万円 | 141.0万円 | 155.1万円 |
5,000万円 | 156.0万円 | 171.6万円 |
1億円 | 306.0万円 | 336.6万円 |
マンション売却の仲介手数料が無料・値引きになるケース
仲介手数料は法律によって上限が定められている一方で、下限は定められていません。
不動産会社によっては、仲介手数料を無料にしているところがあります。
不動産会社は、売主だけでなく買主からも仲介手数料を請求できます。
買主から仲介手数料を受け取れる不動産会社は、売主側の仲介手数料を無料または半額にしていることがあるのです。
また不動産会社にマンションを買い取ってもらう場合、売主は仲介手数料を支払う必要はありません。
マンション売却の仲介手数料はいつ払う?
仲介手数料を支払うのは、不動産の売買契約が成立したときです。
一般的には媒介契約を結んでも、買主が見つからなければ仲介手数料を支払う必要はありません。
ただし不動産会社の中には、実際の不動産取引で「売買契約の成立時と物件を引渡時に半額ずつ支払う」と決めている会社もあるようです。
仲介手数料を支払うタイミングは不動産会社によって異なるため、仲介を依頼する前に確認しておきましょう。
仲介手数料以外にかかる費用
マンションの売却時には、仲介手数料以外にも手数料や税金の支払いが発生します。
手元に残る金額をより正確に計算したい方は、マンションの売却時に支払う諸費用の種類や金額を把握することが大切です。
ローン一括返済の手数料
マンションを売却するときは、基本的に住宅ローンを完済しておかなければなりません。
住宅ローンを一括返済する場合、借り入れた金融機関に対して一括返済手数料の支払いが必要です。
一括返済手数料の金額は数千円から数万円ほどで、金融機関によって異なります。
印紙税
印紙税とは、マンションの売買契約書に収入印紙を添付する形で納める税金です。
納税額は、契約書に記載された金額に応じて決まります。
なお、2024年(令和6年)3月31日までに作成された不動産の売買契約書については、以下の表のように、印紙税の軽減措置が適用されて税額が軽減されます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円超 50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超 100万円 | 1,000円 | 500円 |
100万円超 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超 1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超 5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超 1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超 5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円超 10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円超 50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円超 | 600,000円 | 480,000円 |
※出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」をもとに作成
登録免許税
登録免許税は、登記をする際に支払う税金です。
マンションを売却するときに住宅ローンを一括返済すると、抵当権抹消登記と同時に登録免許税の支払いも発生します。
抵当権とは、住宅ローンを借り入れた人が長期にわたって返済を滞納した場合に、金融機関が不動産を差し押さえられる権利です。
マンションをはじめとした不動産は、住宅ローンを完済して抵当権を抹消しなければ基本的に買い手は見つかりません。
抵当権抹消登記時の登録免許税は、不動産1個につき1,000円かかるので、マンション売却時に発生する登録免許税は、土地と建物合わせて2,000円です。
また抵当権抹消登記を司法書士に依頼すると、数万円程度の報酬の支払いが発生します。
譲渡所得税・住民税・復興特別所得税
マンションを売却して利益(譲渡所得)が発生した場合、所得税や住民税を納めなければなりません。
また2037年(令和19年)までは、譲渡所得税に加えて復興特別所得税も課せられます。
譲渡所得税の計算方法は、以下のとおりです。
- 譲渡所得=収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額
- 譲渡所得税=譲渡所得×税率
※収入金額:不動産を売却して買主から受け取った金銭
※取得費:売却したマンションの購入代金や購入時の仲介手数料など
※譲渡費用:仲介手数料や印紙税などマンションの売却時にかかった費用
※特別控除額:マイホームを譲渡した場合や、収用等、特定土地区画整理事業等、特定住宅遅造成事業等、農地保有の合理化等で土地や建物、農地を譲渡した場合に適用
譲渡所得に対して課せられる税金は、以下の通り売却したマンションの所有期間によって異なります。
- 5年以下(短期譲渡所得):39.63%(所得税率30.63%+住民税率9%)
- 5年超(長期譲渡所得):20.315%(所得税率15.315%+住民税率5%)
※上記は、復興特別所得税を合算した税率です。
なお所定の要件を満たすと税の優遇制度を適用できるので、譲渡所得に課せられる税金の負担を軽減できます。
引越し費用
売却したマンションから新居へ引越しをする際、引越し費用がかかります。
引越しの費用は、荷物の量や新居までの距離、時期などによって異なるため、マンションを売却する前に見積もりを取り寄せておきましょう。
その他費用
部屋のリフォームやクリーニングをする場合は、その費用もマンション売却の資金計画に入れておきましょう。
リフォームやクリーニング費用は、依頼する業者や施工内容によって異なります。
マンション売却の仲介手数料を抑える方法
前提として、仲介手数料の安さだけで不動産会社を選ぶのはおすすめできません。
仲介手数料は、買主を探してくれた不動産会社に対する報酬です。
また仲介手数料は、不動産会社にとっての売上にあたります。
安易に仲介手数料を値下げすると、不動産会社の担当者のモチベーションを下げてしまいかねません。
とはいえ仲介手数料を抑えたいと考えているのであれば、不動産会社と交渉するのも方法のひとつでしょう。
「御社と専任媒介契約(または専属専任媒介契約)を結ぶので仲介手数料を安くしてくれませんか」と交渉すると、値下げに応じてくれる可能性もあります。
専任媒介契約や専属専任媒介契約を結ぶと、契約期間が終了するまで売主は原則として他の不動産会社と契約を結べなくなり、他社に先を越されてしまうリスクを減らせるためです。
ただし値下げに応じてくれたとしても、担当者が売却活動に力を入れてくれなくなっては本末転倒であるため、無理な交渉は控えましょう。
マンション売却にかかる税金を抑える方法
譲渡所得にかかる税金は、所有期間5年以下で売却したときよりも、所有期間5年超で売却したときのほうが税率は低くなります。
そのため所有期間が5年を超えてからマンションを売却したほうが、税金を抑えられる可能性があります。
また「3,000万円特別控除の特例」や「所有期間が10年を超えているときの軽減税率の特例」を適用できると、税負担のさらなる軽減が可能です。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(以下、3,000万円特別控除の特例)は、マンションを含むマイホーム(居住用財産)を譲渡した場合、所定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。(平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間)
3,000万円特別控除の特例を適用できると、譲渡所得が3,000万円を超えない限り、譲渡所得税や住民税はかかりません。
ただし3,000万円特別控除の特例を適用できるのは、居住用財産を売却したときのみです。
投資用のマンションを売却したときは利用できません。
所有期間が10年を超えるときの軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるときの軽減税率の特例(以下、軽減税率の特例)は、所定の要件を満たすと譲渡所得にかかる税金を計算するときに軽減税率が適用される特例です。
計減税率の特例が適用されると、譲渡所得6,000万円以下の部分の税率が14.21%(所得税10.21%+住民税4%)に軽減されます。
6,000万円超の部分の税率は、長期譲渡所得と同様に20.315%(所得税率15.315%+住民税率5%)です。
※所得税率は、復興特別所得税を合算した税率
軽減税率の対象となるのは、売却した年の1月1日時点でマンションの所有期間が10年を超えていたときです。
3,000万円特別控除の特例と、軽減税率の特例を重複して適用することもできます。
マンション売却後に戻ってくるお金
マンションを売却したときは、以下の金銭が戻ってくることがあります。
- 住宅ローン保証料
- 火災保険料の返金
- 管理費や修繕積立金、固定資産税などの清算金
住宅ローン保証料
保証料とは、住宅ローンの契約者が保証会社に対して支払う手数料です。
住宅ローンを契約したときに保証料を一括で支払った場合、マンションを売却してローンを完済すると、残りの返済期間に応じた保証料を返還してもらえることがあります。
火災保険料の返金
購入時に火災保険に加入しており、保険期間中にマンションを売却したときは、残りの補償期間に応じた保険料が返金されることがあります。
管理費や修繕積立金、固定資産税などの清算金
中古マンションを売却するとき、売主はひと月分の管理費と修繕積立金や、1年分の固定資産税と都市計画税をすでに支払っている状況です。
売却したあとの管理費や修繕積立金、固定資産税は、原則として買主が負担しなければなりません。
そのためマンションの売却時は、売主と買主のあいだで精算が行われるのが一般的です。
買主が売主に支払う金額の決まり方は、以下のとおりです。
- 管理費・修繕積立金:引渡し日から月末までの日割り計算した金額
- 固定資産税・都市計画税:引渡し日から起算日(1月1日または4月1日)まで日割り計算した金額
【まとめ】マンション売却では仲介手数料などの費用も把握しよう
マンションを売却する際に、不動産会社に買主を探してもらったら、仲介手数料の支払いが発生します。
仲介手数料は「物件価格×3%+6万円(税別)」が法定上限額です。
一方で下限は定められていないため、仲介手数料を無料または低額に設定している不動産会社もあります。
ただし仲介を依頼する不動産会社は、仲介手数料の金額だけでなくサービス内容も含めて総合的に選ぶことが大切です。
またマンションの売却時には、印紙税や登録免許税などを支払う必要があります。
マンションを売却するときに発生する費用の種類や金額の目安を知りたい方は、売却実績が豊富な不動産会社に相談すると良いでしょう。
(執筆者:品木 彰)