マンションの売却を考える際、重要な基準となるのが「いつ売るのか」という点。
同じマンションであっても、売却のタイミングによって手元に残るお金が増減することは珍しくありません。
では、マンションを売却する最適な時期は、どのように考えればよいのでしょうか。
この記事では、マンションの売却のタイミングをさまざまな観点から紹介します。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
マンションの価格は右肩上がり
2013年以降、区分所有マンション(分譲マンション)の価格相場は右肩上がりの状況が続いています。
国土交通省の発表データによると、マンションの価格相場は以下のように変動しています。
図表引用:国土交通省
※不動産価格指数:不動産の価格相場を数値化したもので、2010年の平均値を100とする。
この調査では、2020年の区分所有マンションの価格指数は150を突破しています。
右肩上がりの状況は2021年も継続すると考えられており、マンション所有者にとっては売りやすい状況だといえるでしょう。
マンション売却のタイミングの見極め方
マンション売却には、高く売れて手元に残るお金が多くなりやすいタイミングが存在します。
ただし適切なタイミングにはさまざまな要素が関係するため、一概に「ここで売れば得をする」とはいえません。
「時期」「築年数」「住宅ローン残債」「節税」の4つの観点から、マンション売却に最適なタイミングを考えてみましょう。
売却時期から考える売却のタイミング
不動産には、季節によって需要の波があります。
1年のうち、マンションのニーズが最も伸びるのは1月から3月です。
この期間は新しい年度を迎える前の時期にあたり、引越しが増加すると同時に、マンション購入に踏み切る人もいるためです。
購買意欲が高まる1月から3月に売却を考える場合は、1月に物件情報を公開できるよう、準備を進めましょう。
築年数から考える売却のタイミング
築年数から売却時期を考えた場合、築20年ごろまでがひとつの基準となります。
中古マンションの売却価格は、通常築年数が浅いほど高くなります。
しかし住居として購入したマンションを、理由もなく早期に売却するのは適切な判断とはいえない場合もあるでしょう。
建てられてから20年経過までの物件は、比較的設備の消耗が少なく、しばらくは使用に耐えられることが多く見られます。
ローン残債から考える売却のタイミング
ローン残債と売却金額から、売却の時期を検討することもできます。
住宅ローンの支払いが終わっていれば、抵当権が外されているため、売却はスムーズに進みます。
またローン残債があったとしても、売却代金で完済できる、完済しても手元にお金が残る、というタイミングであれば安心です。
不動産流通機構の公開データによると、マンションの面積あたりの価格は築年数を経るごとに低下する傾向にあります。
そのため、価格の下落率を自分のマンションに当てはめると、売却代金でローン残債を支払っても、手元に残る金額が多くなる売却タイミングをある程度予測できます。
マンションの価格は1年ごとに均等に下がるのではなく、以下のように波があります。
図表引用:中古マンションの築年帯別平均価格|東日本不動産流通機構
「成約物件」の平均売却価格を見ると、築20年までは比較的価格の下落が緩やかで、21年目から30年目までは急激に価格が低くなることがわかります。
所有中のマンションの価格に当てはめ、住宅ローンの返済予定表などと比べながら売却時の収支を確認してみてください。
節税対策から考える売却のタイミング
マンションを売却して売却益が出た場合、所得税や住民税の支払いが発生します。
支払う税金を抑えたい場合、購入して11年目以降に、マンションの売却を行うのがよいでしょう。
所得税や住民税の税率は所有期間によって変化し、所有期間が10年を超えると軽減税率が適用されるためです。
【所有期間と税率】
短期譲渡所得 (所有期間5年未満) |
所得税:30% 住民税:9% |
長期譲渡所得 (所有期間5年から10年) |
所得税:15% 住民税:5% |
長期譲渡所得 (軽減税率の特例 所有期間10年超) |
【6,000万円までの部分】 所得税:10% 住民税:4%【6,000万円超の部分】 所得税:15% 住民税:5% |
売却のタイミングによっては、税額だけで100万円以上の差が出ることもあります。
税率の変化を考慮した上で、マンション売却を検討しましょう。
なお、居住していたマンションを売却した場合、利益の一部が非課税になる、もしくは税金が全額免除される税金の特例も存在します。
ライフステージに合わせたマンション売却のタイミング
ライフステージの変化も、マンションの売却を検討するタイミングのひとつです。
マンションを購入する際は、ライフスタイルの将来的な変化と売却の可能性も視野に入れておきましょう。
子育てのため
子どもの成長を機に、マンションの売却を考えることがあります。
それまで暮らしていた家が手狭になったので買い替えたい、子どもにかかる費用を考慮し、高く売れるうちに手放したい、子供の教育に合わせた地域に引越したい、といった需要があるためです。
特に出産前後のタイミングでは、両親のどちらかが産休・育休を取得する場合は収入が減少することもあるため注意してください。
仕事のため
転職や転勤による引越しも、マンション売却のきっかけのひとつです。
この場合、新たな職場での仕事の開始時期との兼ね合いから、売却活動にあまり時間を使えないことも珍しくありません。
そのため、サポートを受ける仲介会社選びが重要なポイントとなります。
老後のため
マンション売却には、老後の生活環境の変化や、終活の一環がきっかけになるケースもあります。
前者はマンションを売却し、よりコンパクトな物件に買い直すといった場合が見られます。
後者は遺産相続防止のため、存命のうちに分割しやすい現金に換えておくことを目的とします。
マンション売却を成功させるポイント
マンションの売却を成功させるには、タイミングの見極めの他にも、いくつか注意すべきポイントがあります。
複数社に査定を依頼する
不動産会社によって査定価格に差があるため、査定は複数社に依頼しましょう。
ときには、数百万円差が出ることもあります。
ただし査定金額の高さだけで不動産会社を選んでしまうと、うまくいかないケースもあります。
「周辺相場と比べても納得できる査定額か」「金額の根拠を明確に説明してくれるか」などをポイントに、複数社から絞り込みながら不動産会社を選びましょう。
所有マンションの条件に合う不動産会社に依頼する
不動産会社にはそれぞれ売却の得意なジャンルがあるため、所有マンションの条件に合う不動産会社に仲介を頼むのが売却成功の近道です。
「単身者向け物件の造詣が深く売却実績が豊富」「富裕層の顧客に強く高級マンションの売却が得意」など、不動産会社によって得意なジャンルはさまざまです。
自分のマンションの特徴をしっかり把握して、適切な不動産会社を選びましょう。
【まとめ】マンション売却はタイミングの見極めが重要!
マンションは、売却時期によって、売却価格や有利・不利が変わってきます。
将来的に売却を見越しているのであれば、自分にとってどのタイミングでの売却が得なのか、さまざまな観点から評価してみましょう。
タイミングの見極めのほか、仲介を依頼したい不動産会社選びも重要です。
有利な売却に繋げられるよう、会社選びも慎重に行ないましょう。
(執筆者:いちはらまきを)