売却価格や利益の額によっては負担が重くなってしまうかもしれません。
本記事では、土地の売却でかかる税金の計算方法や、税負担を軽減する方法などをわかりやすく解説します。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
土地売却でかかる税金は4つ
土地を売却する際の税金は、以下の通りです。
- 印紙税
- 登録免許税
- 所得税
- 住民税
それぞれの税額の計算方法や、税負担が発生するケースを解説していきます。
印紙税
印紙税とは、土地の売買契約書に収入印紙を添付して納める税金です。
契約書に貼付する収入印紙の金額は、以下の通り売買契約書に記載された金額によって異なります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円超 50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超 100万円 | 1,000円 | 500円 |
100万円超 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超 1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超 5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
>5,000万円超 1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超 5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円超 10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円超 50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円超 | 600,000円 | 480,000円 |
※出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」をもとに作成
土地の売買契約書が2022年3月31日までに作成されていると、印紙税の軽減税率の対象となり税負担が軽減されます。
印紙税はいつ払う?
印紙税を支払うタイミングは、土地の売買契約が成立し契約書を取り交わすときです。
所得税
土地を売却して発生した利益は、譲渡所得となり所得税の課税対象となります。
譲渡所得が発生した場合は、確定申告をして所得税を納めなければなりません。
なお2037年(令和19年)までは、所得税額の2.1%が復興特別所得税として徴収されます。
所得税はいつ払う?
所得税と復興特別所得税は、売却をした翌年の2月中旬から3月中旬の間に行う確定申告で支払います。
土地を含む不動産を売却して譲渡所得が発生した場合、確定申告をしなければなりません。
確定申告をしたあと、振替納税(口座振替)やクレジットカードなどで、所定の期日までに所得税を納付します。
住民税
住民税とは、所得税と同じく所得が発生した人に課せられる税金です。
ただし所得税は、国に対して支払う国税であるのに対し、住民税は都道府県や市区町村など地方自治体に対して支払う地方税です。
住民税はいつ払う?
住民税の納税方法には、普通徴収と特別徴収の2種類があります。
納税通知書は、確定申告をした年の6月ごろに送付されてきます。
普通徴収で住民税を納める場合は「一括払い」と「分割払い(年4回)」が選択できます。
特別徴収を選択した場合、住民税額を12分割した金額が毎月の給与から天引きされます。
なおボーナスからの天引きはありません。
普通徴収と特別徴収のどちらで住民税を支払うかは、確定申告時に提出する確定申告書で指定します。
登録免許税
登録免許税とは、不動産に関する登記をする際に支払う税金です。
住宅ローンを組んだ不動産を売却する場合、抵当権抹消登記をするために登録免許税を支払う必要があります。
土地に限らず不動産を売却する場合は、原則として住宅ローンを一括返済して抵当権を抹消する必要があります。
登録免許税額は、土地一筆につき1,000円です。
ただし抵当権抹消登記は、法律で専門家である司法書士に依頼するのが一般的であるため、数万〜十数万円程度の報酬も合わせて支払う必要があります。
登録免許税はいつ払う?
登録免許税を支払うのは、抵当権抹消登記をするときです。
司法書士に抵当権抹消登記を依頼する際は、司法書士への報酬と合わせて登録免許税を支払うのが一般的です。
土地売却で発生する所得税・住民税の計算方法
土地を売却した場合の所得税や住民税は、以下の手順で計算します。
- 譲渡所得額の計算
- 課税譲渡所得額の計算
- 所得税・住民税の計算
1.譲渡所得の計算方法
譲渡所得の計算方法は、以下の通りです。
譲渡所得額=譲渡価額−譲渡費用−取得費
- 譲渡価額:土地の売却価格
- 譲渡費用:仲介手数料や測量費、建物の取壊し費用などの諸経費
- 取得費:土地の購入価格
例えば譲渡価額が2,000万円、譲渡費用が160万円、取得費が1,700万円である場合、譲渡所得額は2,000万円-160万円-1,700万円=140万円です。
なお土地を売却したときの譲渡所得を計算する際、減価償却費は差し引かれません。
減価償却費とは、築年数の経過によって目減りしたと考えられる建物部分の資産価値を、費用として差し引く考え方です。
土地は基本的に経年劣化しないため、取得費の計算時に減価償却費は差し引かれないのです。
2.課税譲渡所得額の計算
課税譲渡所得額は、譲渡所得から特別控除を差し引いて計算します。
特別控除とは、所定の要件を満たした場合に、一定の金額を譲渡所得から差し引いて、所得税や住民税の計算対象外とする金額です。
3.所得税・住民税額の計算方法
不動産売却時の譲渡所得は「分離課税」の対象です。
給与所得や事業所得など他の所得と分けたうえで、譲渡所得のみに以下の税率をかけて所得税や住民税を計算します。
- 5年以下(短期譲渡所得):39.63%(所得税率30.63%+住民税率9%)
- 5年超(長期譲渡所得):20.315%(所得税率15.315%+住民税率5%)
※復興特別所得税を合算した税率。
例えば所有期間が7年の土地を売却し、200万円の譲渡所得が発生した場合、所得税と住民税の税額は、200万円×20.315%=406,300円です。
所有期間は、土地を売却した年の1月1日時点で判定されます。
なお居住していた家屋と一緒に土地を売却した場合、所有期間が10年を超えていると、以下の「軽減税率の特例」が適用され、税負担が軽減されます。
- 6,000万円以下の部分:14.21%(所得税率10.21%+住民税率4%)
- 6,000万円超の部分:20.315%(所得税率15.315%+住民税率5%)
※上記税率には、復興特別所得税が含まれています。
土地売却時の税金対策
ここでは、土地を売却したときの税負担を軽減する方法を解説します。
相続税の取得費加算の特例
相続によって取得した土地や建物、株式などを一定期間内に売却した場合、相続税のうち一定金額を取得費に加算できます。
取得費に相続税額の一部が加算されることで、譲渡所得の金額が減って所得税や住民税の負担を軽減できます。
取得費加算の特例を受けられるのは、以下の要件を満たした人です。
- 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
- その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
※出典:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
居住用財産の3000万円の特別控除
居住用財産の3000万円の特別控除(以下、3000万円特別控除)とは、居住していた家屋と土地を売却し所定の要件を満たした場合に、譲渡所得が3000万円まで非課税となる制度です。
3000万円の特別控除が適用されると、譲渡所得が3000万円を超えない限り、所得税や住民税を支払う必要はありません。
ただし3000万円特別控除を適用するためには、売主自身が居住していた建物を土地と一緒に売却する必要があります。
土地のみを売却した場合は、3000万円特別控除を適用できません。
【まとめ】土地売却では税金の計算や節税方法の把握が重要
土地の売却時に想定よりも手元に残るお金が少なくなってしまう事態を防ぐためには、税金の種類や計算方法、節税効果が期待できる特例制度を把握しましょう。
- 印紙税:土地の売買契約書に収入印紙を添付して納める税金
- 所得税・住民税:土地の売却で譲渡所得が発生した場合に納める税金
- 登録免許税:ローンを一括返済し、抵当権抹消登記をするときに納める税金
土地を売却して利益が発生した場合は、税負担が高額となる可能性があります。
そこで売却時の税負担を抑えるために「取得費加算の特例」や「3000万円の特別控除」など、特例制度が実施されています。
税金の計算方法や、特例制度の要件は複雑です。
土地を売却する際は、売却実績が豊富な不動産会社に相談するとよいでしょう。
(執筆者:品木 彰)