マンションの買い替えでは、売却と新居の購入を同時にしなければならないため、状況にあわせて計画を練ることが大切です。
とはいえマンションの買い替えは、生涯のうちに何度も経験するものではないため、タイミングや流れが分からない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、マンション買い替えのタイミングや流れ、資金計画などを分かりやすく解説します。
遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 影山 裕紀(かげやま ひろき)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、ITパスポート
マンションを買い替えるタイミング
最初にマンションを買い替えるタイミングの例を解説します
ライフスタイルが変化したとき
ライフスタイルの変化は、マンション買い替えのもっとも代表的なタイミングです。
買い替えのきっかけとなるライフスタイルの変化は、以下の通りです。
- 子どもが生まれた
- 老後生活が始まる
- 転職や転勤で通勤場所が変わった など
ライフスタイルの変化をきっかけにマンションを買い替えることで、ご自身や家族の生活に適したマンションに住み替えられます。
住んでいるマンションが古くなったとき
マンションの築年数が10年前後になったあたりで、買い替えをするケースもあります。
住宅ローンを組んでマンションを購入した人は、住宅ローン控除を申請すると所得税や住民税の負担を軽減できることがあります。
とくに新築マンションを購入した人は、住宅ローン控除の適用が終わる築10年ごろで買い替えを検討するケースもあるでしょう。
また大規模修繕の実施が予想される築10〜15年でマンションを買い替える人もいます。
築年数の経過にともなう修繕積立金の値上がりや、積立金不足による修繕費の一括請求などを避けるためです。
マンションの買い替え時は売却と購入どちらを優先する?
マンションの買い替えは、売却を優先する「売り先行」と、購入を優先する「買い先行」があり、ご自身の状況に合った選択をすることが大切です。
売り先行
売り先行は、住んでいる家を売却したあとに新居を購入する買い替え方法です。
先にマンションの売却代金を得られるため、新居の購入予算を決めやすく資金計画が立てやすい点が売り先行のメリットです。
また焦らずに売却できるため売り急いでしまう心配が少なく、購入希望者との価格交渉を有利に進められます。
マンションの売却に失敗したくない方は、売り先行を選択するのがおすすめです。
ただし売り先行では、新居が決まるまでのあいだ、仮住まいでの暮らしが必要となります。
家賃や引っ越し費用などが余分に発生する可能性がある点に注意しましょう。
買い先行
買い先行は、先に新居を購入してから居住中のマンションを売却する方法です。
マンションに住みながら住み替え先を探すため、じっくり時間をかけて新居を選べます。
また仮住まいの家賃を支払う必要がなく、引っ越し代も余分に支払わずに済むのも買い先行の良い点です。
一方で住宅ローンの返済中に買い先行をすると、新居を購入してから居住中のマンションを売却するまでの間は、住居費用を2重に支払うことになります。
売り急いでしまい希望の価格で売却できない可能性があるのも、買い先行のデメリットです。
買い先行は、住宅ローンを完済している人や資金に余裕がある人におすすめの買い替え方法です。
マンション買い替え時の資金計画
マンション買い替えの資金計画を立てるときは、住宅ローンの理解が不可欠です。
買い替えを検討するときに知っておきたい住宅ローンの注意点や種類を解説します。
買い替え時はローンの一括返済が必要
住宅ローンが残っていても、マンションの売却は可能です。
ただし売却時に住宅ローンを完済して「抵当権」を外す必要があります。
抵当権は、住宅ローンを払えなくなったときに、金融機関が担保となっている物件(居住中のマンション)を差し押さえる権利です。
抵当権が付いたままのマンションは基本的に売却できません。
マンションの売却代金で住宅ローンが完済できない場合は、自己資金で補う必要があります。
一括返済が困難な場合は「住み替えローン」を検討する
売却代金と自己資金で住宅ローンを完済できないときは「住み替えローン」を利用する方法もあります。
住み替えローンとは、マンションの売却後に残ってしまった債務を、新居の住宅ローンに上乗せして返済していくローンです。
住み替えローンを利用すると、ローンを完済できなくてもマンションを買い替えられます。
ただし売却と購入のタイミングを合わせる必要があるため、買い替えのスケジュールを慎重に練らなければなりません。
また多額の残債があると、住み替えローンを利用できないことがあります。
買い先行では「つなぎ融資」を利用するのも方法
つなぎ融資は、マンションの売却価格に相当する額の新居費用を一時的に借りるローンです。
借入金で新居を購入し、マンションの売却代金でつなぎ融資を一括返済します。
つなぎ融資を利用できると、手持ち資金が少なくても買い先行で買い替えが可能です。
ただし「融資期間が1年以内」「事務手数料や保証料などの諸費用がかかる」「金利が住宅ローンよりも高い」などの注意点があります。
マンションの買い替えで発生する税金・手数料と減税措置
マンションの買い替えでは、税金や手数料の支払いが発生します。
買い換えの資金計画を立てるときは、売却と購入でいくらの支払いが発生するのか把握することが重要です。
マンションの売却時にかかる税金・手数料
マンションを売却するときは、契約書に添付する「印紙税」や、抵当権抹消登記をする際の「登録免許税」を納めます。
また売却して得た利益は、所得税と住民税の課税対象です。
売却時の手数料には、不動産会社に支払う「仲介手数料」や、住宅ローンの「一括返済手数料」などがあります。
マンション売却時の税金・手数料は、売却価格の5〜7%程度です。
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マンションの購入時にかかる税金・手数料
新居を購入するときも、契約書に添付する「印紙税」や、不動産登記をする際に必要な「登録免許税」を支払います。
住宅ローンを組むのであれば、事務手数料や保証料などを支払わなければなりません。
中古マンションを購入するときは、不動産会社への仲介手数料や固定資産税・都市計画税の清算金などを支払います。
購入時に支払う税金・手数料の目安は、新築マンションの場合は物件価格の3%、中古マンションの場合は物件価格の5〜10%が一般的です。
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買い替え時に利用できる主な減税措置
マンションを買い替えるときは、減税制度で税負担を軽減したり、特例によって課税を先送りにしたりできる場合があります。
買い替え時の減税制度や特例は、以下のとおりです。
- 3,000万円の特別控除:
所定の要件を満たしたマイホームを売却すると3,000万円までの利益が非課税になる制度 - 特定居住用財産の買換え特例:
売却益に課せられる税金の支払いを、買い替え先の売却時に先送りできる制度
ただし3,000万円の特別控除と買換え特例は、併用できません。
マンションの買い替えで失敗しないためのポイント
買い替えの失敗を防ぐためには、どのような点に気をつけると良いのでしょうか。
ひとつずつ解説します。
マンションの売却時に意識するポイント
マンションを売却するときは、以下の3点を意識してできるだけ高値で売却することが大切です。
- 適切な売り出し価格に設定する
- 内覧対応は丁寧に行う
- 余裕を持ったスケジュールを設定する
マンション売り出し時の価格は、相場をもとに適切に設定することが大切です。
売り出し価格が相場よりも安いと、マンションを安く手放すことになるでしょう。
また相場よりも高く設定してしまうと、売れ残ってしまうかもしれません。
売却期間中は、いつ購入希望者が内覧に来ても良いように、室内を整理整頓し清潔な状態に保ちましょう。
また内覧対応時は、購入希望者に良い印象を抱いてもらえるよう丁寧に接することが大切です。
売却期間を十分に設けないと、売り急いでしまい売却価格が安くなる可能性があるため、余裕のあるスケジュールに設定しましょう。
住み替え先の購入時に意識するポイント
新居を購入するときに意識すべきポイントは、以下の3点です。
- マンションの管理状況や修繕計画をチェックする
- 今後のライフプランに合った立地や間取りを選ぶ
- 慎重に資金計画を立てる
管理が行き届いているマンションや、計画通りに修繕が施されているマンションは、将来的に売却が必要になった際も、購入希望者が現れやすくなります。
新居の立地や間取りを選ぶ際は、今後のライフプランをもとにすることが大切です。
例えば子育てをするためにマンションを買い替えるのであれば、学校や公園、 病院などの施設が近い物件を選ぶと良いでしょう。
買い替えでは、一般的に数千万円の資金が必要になるため、多くの方がローンを利用します。
住み替え先での生活で金銭的な不安を抱えるのを防ぐためにも、慎重に資金計画を立てることが重要です。
頼りになる不動産会社を選ぶことが大切
買い替えを検討しているのであれば、マンションの売買に強い不動産会社を探すと失敗を防げるでしょう。
マンションの売買に強い不動産会社に依頼すると、売り先行と買い先行のうち適切なほうを提案してくれます。
また居住中のマンションを高値で売却しつつ、希望に沿った新居を見つけてくれるでしょう。
【まとめ】マンション買い替え時は慎重に計画を立てる
マンションを買い替えるときは、売却を優先する「売り先行」と購入を優先する「買い先行」のうち、ご自身の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
また買い替え時に支払う税金や手数料を把握したうえで、入念に資金計画を立てる必要があります。
買い替えでは、売却と購入のどちらも慎重にすすめなければなりません。
マンションを買い替えるときは、マンション売買の実績が豊富な不動産会社に相談することが成功の秘訣です。
(執筆者:品木 彰)