所有している家を、売るべきか貸すべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。
家を売るか貸すか判断するときは、それぞれのメリットとデメリットを把握したうえで、もっとも有利な選択をすることが大切です。
本記事では、家を売却するときと賃貸に出したときそれぞれのメリットとデメリットや、判断するときのポイントについて分かりやすく解説します。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
家を売るメリット・デメリット
まずは家を売却するメリットとデメリットを見ていきましょう。
家を売るメリット
家を売るメリットは、主に以下の2点です。
- まとまった現金が手に入る
- 管理の手間やコストがかからなくなる
まとまった現金が手に入る
家を売却すると、まとまった売却代金を得られます。
得られたお金は、新居を購入するための費用や賃貸物件に入居するときの敷金・礼金、家具・家電の購入費用などに充てられます。
管理する手間やコストがかからなくなる
家を所有しているあいだは、土地や建物を管理しなければなりません。
家から離れた場所で暮らしているなどの理由で管理を専門会社に委託したときは、管理委託費用がかかります。
また家の所有者は、固定資産税を毎年納める必要があります。
家に誰も住んでおらず管理が放置されていると、自治体から「特定空き家」に指定されて固定資産税に優遇措置が適用されなくなり、税負担が重くなることもあるのです。
家を売却することで管理やコストがかからなくなり、所有者の負担が軽減されます。
家の管理が面倒なのであれば、売却を検討すると良いでしょう。
家を売るデメリット
家を売却するデメリットは、以下の2点です。
- 家を手放すことになる
- 住宅ローンの完済が必要になる
家を手放すことになる
家を売却して手放してしまうと、その家は自分の資産ではなくなります。
資産として活用したい、今後も住む可能性がある、といった場合は家を手放さないほうが良いでしょう。
住宅ローンの完済が必要になる
住宅ローンを組んで家を購入した場合、抵当権が設定されています。
抵当権とは、ローンを借りている人が長期間にわたって返済を滞納したとき、金融機関が担保にしている土地や建物を差し押さえできる権利です。
抵当権が残ったままの物件は、基本的に売却できません。
そのため家を売却するときは、住宅ローンを完済して抵当権を外す必要があるのです。
住宅ローンを完済していないと、売却代金から残債が差し引かれるため、手元に残る金額が少なくなります。
売却代金でローンを完済できないときは、自己資金で賄うことになるでしょう。
家を貸すメリット・デメリット
次に家を賃貸に出すメリットとデメリットを確認していきましょう。
家を貸すメリット
家を貸すメリットは、主に以下の2点です。
- 家賃収入を得られる
- 家を手放さずに済む
家賃収入を得られる
家を賃貸に出すと、家賃収入を得られます。
毎月の給与所得や事業所得とは別の収入源を得られるため、生活に余裕が生まれるだけでなく、老後資金や子どもの教育資金なども準備しやすくなります。
立地が良く安定した家賃収入が見込めるのであれば、家を賃貸に出すと良いでしょう。
家を手放さずに済む
賃貸に出したあとも、家の所有権は持ち続けられます。
賃貸契約の期間が満了し、家を明け渡してもらうことで、再び住むことも可能です。
将来的に家に戻る予定なのであれば、決まった期間のみ貸し出す「定期借家契約」を結ぶと良いでしょう。
例えば賃貸の契約期間を2年と決めた定期借家契約を結べば、貸してから2年が経過すると家に戻って再び住むことができます。
家を貸すデメリット
家を賃貸に出すデメリットは、以下の2点です。
- 管理の手間やコストがかかる
- 入居者が決まらなければ家賃は得られない
管理の手間やコストがかかる
賃貸に出したあとも固定資産税を支払うのは、家の所有者です。
また家の管理を専門会社に任せている場合は、管理委託費も負担しなければなりません。
さらに家の状態によっては、賃貸に出せるようにするために、クリーニングやリフォーム、 修繕などの費用がかかることもあります。
入居者が決まらなければ家賃は得られない
賃貸に出したとしても、入居者が決まらないと家賃収入は得られません。
入居者が決まらず家賃収入が0円であるあいだも、固定資産税や管理委託費用のコストはかかり続けます。
そのため賃貸需要がないエリアの家を所有しているのであれば、借り手は見つからず家賃収入を得られない可能性が高いため、賃貸には出さないほうがよいでしょう。
家を貸すか売るか判断するときのポイント
売却と賃貸にはそれぞれに一長一短があるため、所有する家の状況に応じて適切に判断しなければなりません。
家を売却するか賃貸に出すか判断するときは、売却代金・家賃収入の相場や費用を調べたうえで収支を比較することが大切です。
売却と賃貸の相場を確認する
売却価格や家賃の相場は、SUUMOやat Homeなどのインターネットの不動産ポータルサイトで調べられます。
立地や間取り、広さなどの条件が似た物件の相場を調べてみましょう。
また売却価格については、以下の方法でも調べられます。
- 不動産会社に査定してもらう
- レインズマーケットインフォメーションで調べる
- 土地総合情報システムで調べる
不動産流通機構が運営するレインズマーケットインフォメーションでは、エリアや沿線、面積などの条件を指定して住宅の成約価格を検索できます。
国土交通省が提供する土地総合情報システムでは、取引の時期やエリアなどを指定して不動産価格の検索が可能です。
売却と賃貸の費用を確認する
次に売却と賃貸それぞれで、発生する費用を確認しましょう。
売ったきにかかる費用
家を売却したときは、以下のような費用がかかります。
- 仲介手数料:売却を仲介した不動産会社に支払う手数料
- 印紙税:売買契約書に収入印紙を貼付して納める税金
- 登記費用:登録免許税・司法書士への報酬
- 住宅ローンの一括返済手数料
- 不用品の処分にかかる費用
- 譲渡所得に対する所得税・住民税
譲渡所得とは、簡単にいえば住宅の売却によって得た利益です。
譲渡所得に対する所得税や住民税は、他の所得とは合算されず以下のとおり家の所有期間に応じた税率をかけて算出されます。
- 5年以下(短期譲渡所得):39.63%(所得税率30.63%+住民税率9%)
- 5年超(長期譲渡所得):20.315%(所得税率15.315%+住民税率5%)
※2037年(令和19年)までは、所得税額の2.1%が復興特別所得税として徴収されます。上記は、復興特別所得税を合算した税率です。
ただしマイホームを売却したときは、所定の要件を満たすと3,000万円までの譲渡所得が非課税となる特例を適用できます。
また相続した空き家を売却するときも、所定の要件を満たせば特例を適用して3,000万円までの譲渡所得が非課税となります。
貸したときにかかる費用
家を貸したときは、以下のような費用がかかります。
初期費用 | ・リフォーム費用
・クリーニング費用 など |
維持・管理費用 | ・固定資産税・都市計画税
・建物や設備の修繕費用 ・管理費・修繕積立金(マンションの場合) ・火災保険料・地震保険料 など |
不動産会社に支払う費用 | ・管理委託費用 |
不動産所得にかかる税金 | ・所得税
・住民税 |
年間の家賃収入から必要経費を差し引いた金額は不動産所得となり、所得税や住民税の課税対象となります。
ただし不動産所得の所得税や住民税は、譲渡所得とは異なり、給与所得や事業所得などと合算されたうえで税額が算出されます。
売却と賃貸の収支を比較する
最後に以下の計算式で、売却と賃貸それぞれの収支を比較しましょう。
- 売却:想定される売却代金−売却にかかる費用
- 賃貸:(年間の家賃収入−年間の維持管理費用・税金)×賃貸に出す年数−初期費用
売却と賃貸の収支を比較し、より利益が高いほうを選ぶのもひとつの方法でしょう。
一方で利益よりも、ご自身や家族の意向を優先することが大切です。
例えば将来的に再び住みたいと考えているなら、売却したときの利益のほうが大きいとしても、手放さずに賃貸に出したほうが良いでしょう。
なお売却代金や家賃収入に課せられる所得税や住民税の税額について詳しく知りたい方は、最寄りの税務署に相談したり無料の税務相談を利用したりするのがおすすめです。
【まとめ】収支をもとに家を売るか貸すか総合的に判断しよう
家を売ったときと賃貸に出したときのメリットとデメリットは、以下のとおりです。
〇売却のメリット・デメリット
メリット |
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デメリット |
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〇賃貸のメリット・デメリット
メリット |
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デメリット |
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売却と賃貸それぞれのメリットとデメリットを理解して収支を比較し、ご自身や家族の意向も踏まえて総合的に判断することが大切です。
とはいえ、専門知識のない方だけで売却と賃貸のどちらが有利か判断するのは簡単ではありません。
家を売るか貸すか判断に迷う場合は、信頼できる不動産会社に相談するのがおすすめです。
(執筆者:品木彰)