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中古マンションの減価償却費とは?計算方法をわかりやすく解説

減価償却という言葉を聞いたことがあっても、具体的な内容や計算方法をよく理解していない方も多いのではないでしょうか。

不動産投資をする方だけでなく、ご自身が住むためにマンションを購入するときも、減価償却を理解しておく必要があります。

本記事では、中古マンションの「減価償却費」について計算が必要になるタイミングや計算方法などをわかりやすく解説します。

遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)


宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

中古マンションの減価償却費とは

中古マンション 減価償却

減価償却とは、建物や設備が経年劣化によって失ったと考えられる価値を経費として計上する会計処理です。
計上する経費を「減価償却費」といいます。

減価償却費を計算するのは、建物や設備など経年によって価値が減少すると考えられる資産です。
土地については、経年劣化しないため減価償却費の計算対象にはなりません。

減価償却費を計算するタイミング

中古マンション 減価償却

減価償却費を計算するタイミングは、以下のとおりです。

  • 不動産所得を求めるとき
  • マンションを売却するとき

不動産所得を求めるとき

不動産投資をするためにマンションを購入した場合、不動産所得を計算するときに減価償却費を用います。

不動産所得は、年間で得られた家賃収入をはじめとした収入から、修繕費や管理委託費などの必要経費を差し引いて計算します。

投資用マンションの購入費用は、購入した年に一括で経費に計上するのではありません。
建物部分の購入費用をもとに計算する減価償却費を、毎年少しずつ経費計上していきます。

減価償却費は、実際の支出をともないません。
そのため実際の収支が黒字であっても、帳簿上では赤字が発生することがあります。

マンションを売却するとき

中古マンションを売却して利益(譲渡所得)が発生したときは、所得税を納めます。
譲渡所得は、マンションの売却代金から、購入費用や売却する際の諸費用(仲介手数料・印紙税など)を差し引いて計算します。

減価償却費を計算するのは、マンションの購入費用を求めるときです。
売却までの減価償却費の累計額を、購入金額から差し引いて計算します。

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マンション売却 減価償却

中古マンションの減価償却費の計算方法

中古マンション 減価償却

中古マンションの減価償却費の計算方法と、計算時に必要な耐用年数の求め方をみていきましょう。

基本的には「定額法」で計算する

減価償却費の計算方法には「定額法」と「定率法」の2種類があります。
中古マンションを取得したのが平成28年4月1日以降である場合、減価償却費は基本的に定額法で計算をします。

定額法とは、以下のとおり建物の購入価格に、建物の耐用年数に応じて決まる償却率を乗じて減価償却費を計算する方法です。

定額法:建物の購入価格×償却率

償却率は、建物の法定耐用年数に応じて決まります。
マンションをはじめとした鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造である建物の場合、法定耐用年数と償却率は以下のとおりです。

法定耐用年数 償却率
事業用 47年 0.022
居住用 70年 0.015

※出典:国税庁「減価償却費の計算について」「減価償却資産の償却率等表
※事業用の償却率については、不動産を平成19年4月1日以後に取得した場合

例えば、不動産投資をするために建物価格が4,000万円の新築マンションを購入した場合、4,000万円×0.022=88万円の減価償却費を毎年経費に計上します。

中古マンションの耐用年数の求め方

中古マンションの減価償却費を計算するときは、耐用年数を再計算する必要があります。
築年数が法定耐用年数をすべて経過していない場合、耐用年数は以下の計算式で求めます。

取得時の耐用年数=(新築時の耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2

例えば経過年数が15年の中古マンションを購入した場合、耐用年数は(47年-15年)+15年×0.2=35年であり、償却率は0.029となります。

中古マンションの減価償却費をシミュレーション

中古マンション 減価償却

モデルケースをもとに、不動産投資をするために購入した中古マンションの減価償却費をシミュレーションしてみましょう。
試算の条件は、以下のとおりです。

  • 中古マンションの建物購入価格:2,000万円
  • 構造:鉄筋コンクリート造
  • 経過年数(築年数):20年

マンションの構造は鉄筋コンクリート造であるため、新築時の耐用年数は47年です。
耐用年数を計算すると(47年-20年)+20×0.2=31年となります。

耐用年数が31年である場合、償却率は0.033であるため、中古マンションの減価償却費は、2,000万円×0.033=66万円となります。

よってモデルケースの中古マンションを購入した場合、法定耐用年数である31年が経過するまで66万円の減価償却費を毎年経費に計上していきます。

建物の取得価額が分からないときの対処方法

中古マンション 減価償却

減価償却費を計算するためには、建物部分の取得価額がわかっていなければなりません。
新築マンションであれば、売買契約書に建物価格が記載されていますが、中古マンションについては記載されていないこともあります。

建物価格がわからないときは、以下の方法で計算できる場合があります。

  • 消費税をもとに計算する
  • 固定資産税評価額をもとに計算する

消費税をもとに計算する

消費税は建物部分にのみ課せられる税金であり、土地部分にはかかりません。
そのため売買契約書に記載された消費税をもとに、建物価格を計算できることがあります。

例えば消費税額が100万円、消費税率が10%であった場合、建物部分の価格は100万円÷10%=1,000万円と計算できます。

中古マンション価格が2,500万円と記載されていたのであれば、建物部分の価格が1,000万円、土地部分の価格は1,500万円となります。

固定資産税評価額をもとに計算する

売主が個人である場合、マンションの購入価格に消費税が課せられません。
売買契約書に消費税額が記載されていないときは「固定資産税評価額」をもとに建物価格を計算する方法があります。

固定資産税評価額とは、不動産を所有している人が納める税金である固定資産税を計算する際に用いる金額です。

毎年4〜5月にかけて税務署から送られてくる「課税明細書」や各市町村の窓口で入手できる「固定資産評価証明書」には、土地と建物の固定資産税評価額が記載されています。

建物価格は「中古マンションの購入価格×(建物部分の固定資産税評価額/土地と建物の固定資産税評価額の合計)」で計算できます。

ここで以下のケースにおける建物価格を計算してみましょう。

  • 中古マンションの購入価格:3,000万円
  • 土地部分の固定資産税額:800万円
  • 建物部分の固定資産税評価額:700万円

上記ケースにおける建物価格を計算すると3,000万円×(800万円/1,500万円)=1,600万円となります。

なお中古マンションの場合、課税明細書や固定資産税評価証明書には、マンションがある敷地全体の固定資産税評価額が記載されるのが一般的です。
個人の固定資産税評価額は「敷地全体の固定資産税評価額÷持分割合」で計算できます。

【まとめ】中古マンションの購入時には減価償却の理解が不可欠

減価償却費は、投資用の中古マンションを購入して家賃収入を得たときだけでなく、物件の売却時にも計算します。
中古マンションの減価償却費を計算するためには、建物の耐用年数やそれをもとに決まる償却率を調べなければなりません。
また減価償却費の計算方法は、新築マンションと中古マンションで異なります。

中古マンションの購入を検討している方は、不動産会社の担当者に相談して減価償却費の理解を深めると良いでしょう。
(執筆者:品木 彰)

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