土地の価値を知る方法には「鑑定」と「査定」の2種類があり、価値の調べ方や調査をする人、料金の有無などが異なります。
土地の価値を調査する目的を考えたうえで、適切な方法を選びましょう。
本記事では、土地の鑑定を依頼するケースや費用、依頼するときの流れなどをわかりやすく解説します。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
土地の「鑑定」と「査定」はどう違う?
まずは土地の鑑定と査定の違いをみていきましょう。
土地の査定は「不動産会社」が行う
査定とは、不動産会社が不動産の価格を算出することをいいます。
書類やデータをもとに土地の査定をする簡易査定(机上査定)と、現地調査も加えてより厳密に価格を査定する訪問査定の2種類があります。
不動産会社による査定は、基本的に無料です。
土地を含む不動産を売却するときは、まず不動産会社に査定を依頼して価格相場を調べるのが一般的です。
土地の鑑定は「不動産鑑定士」が行う
不動産の鑑定とは、国家資格である不動産鑑定士を有する人が「不動産鑑定評価基準」にもとづいて価値を評価することです。
不動産会社による査定は「その土地がいくらで売れるのか」を調べるのに対し、鑑定は「その土地にいくらの価値があるのか」を調べる点が異なります。
不動産鑑定士が作成する「不動産鑑定評価書」は、不動産の価値を証明する公的な書類として裁判所などに提出することも可能です。
不動産鑑定士に土地の鑑定を依頼する場合は、鑑定料を支払わなければなりません。
土地を鑑定評価するケース
土地がいくらで売れるのかは不動産会社の査定で分かりますが、土地の本質的な価値を知りたいのであれば鑑定を依頼する必要があります。
では不動産鑑定士に土地の鑑定を依頼するのは、どのような場合なのでしょうか。
代表的なケースをご紹介します。
相続や贈与で土地の詳細な価格を知りたいとき
相続が発生したときは、亡くなった人が残した遺産を相続人がどのようにわけるのかを決めなければなりません。
また遺産が一定額を超える場合、相続税を納める必要があります。
遺産の分け方を決めるときや相続税を計算するときは、土地の評価額を算出する必要があります。
土地を贈与してもらった人は、土地の評価額と同じ年に贈与された財産の合計金額が110万円を超える場合、贈与税を納めなければなりません。
相続によって土地を取得したときや、土地を贈与してもらうときは、その土地の価値を適切に評価するために不動産鑑定士に鑑定を依頼する場合があります。
親族間で土地の売買をする可能性があるとき
親族間で土地を売買する場合、相場よりも著しく低い金額で売却をしてしまうと「みなし贈与」と判断されて贈与税の課税対象になる可能性があります。
そこでみなし贈与とならないように、売却価格を適切に設定するために土地の鑑定を依頼することがあります。
土地の鑑定を依頼する際にかかる費用と報酬基準
土地を鑑定する際は、20万〜30万円程度の費用がかかるのが一般的です。
また土地の価値が高くなるほど、鑑定料金も高額になる傾向にあります。
料金設定は「報酬基準型」「積み上げ型」「定額型」のいずれかであり、不動産鑑定士事務所によって異なります。
それぞれの特徴をみていきましょう。
報酬基準型
報酬基準型は、主に土地の種類や価格に応じて決まる料金体系であり、不動産鑑定士事務所の多くが採用しています。
契約の段階で支払額が決まるため、依頼主にとっても分かりやすい料金体系といえます。
積み上げ型
積み上げ型は、鑑定の作業量に応じて段階的に料金が加算される仕組みの料金体系です。
面積が大きい土地や鑑定作業が複雑になりそうな土地などは、積み上げ型で鑑定料金が決まる場合があります。
定額型
定額型は、土地の種類や鑑定作業の量にかかわらず一律である料金体系です。
依頼主にとっては支払う金額が分かりやすい反面、鑑定に手間や時間がかかっても料金は変わらないためか、定額型を採用する不動産会社はあまりありません。
不動産鑑定士は土地をどのように鑑定する?
土地を含む不動産の鑑定は、どのような方法を用いて行われるのでしょうか。
不動産価格に影響する要素も含めて解説します。
不動産の鑑定方法
不動産を鑑定するときは「取引事例比較法」「収益還元法」「原価法」という3つの評価方法を組み合わせるのが一般的です。
それぞれの特徴は、以下のとおりです。
取引事例比較法 | 対象となる不動産と似た条件の不動産の取引情報をもとに鑑定する方法 |
収益還元法 | 対象である不動産が将来的に生み出せる可能性がある利益をもとに鑑定する |
原価法 | 対象となる不動産を新たに建築するときの価格をもとに鑑定する方法 |
上記のうちどの評価方法を優先するかは、土地の特性によって異なります。
鑑定に影響する要素
不動産の価値は、多くの要因が相互に作用して形成されるものです。
価値に影響する主な要素は、以下の3点です。
- 一般的要因:地質や地盤の状態、気象条件、法的な規制など不動産の使われ方や価格水準に影響を与える要因
- 地域要因:都心からの距離や交通の利便性など地域の特性が価格に影響を与える
- 個別的要因:地質や接道状況、建物の築年数や構造、耐震性など土地または建物が個別に持つ要因
- 不動産を鑑定する際は、以上の要因が価値にどのように影響しているかを分析することが重要であるといわれています。
不動産鑑定士に土地の鑑定を依頼する流れ
不動産鑑定士に土地の鑑定を依頼するときの流れは、一般的に以下のとおりです。
- 複数の事務所に見積もりを依頼する
- 委託契約を結ぶ
- 実地調査が行われる
- 鑑定報告書が交付される
1.複数の事務所に見積もりを依頼する
まずは土地があるエリアを鑑定の対象とする不動産鑑定士事務所を探しましょう。
不動産鑑定士事務所によって料金体系が異なるだけでなく、初回相談を無料にしているケースもあります。
複数社から見積もりを取り寄せて比較をしたうえで、依頼先を選ぶと良いでしょう。
最寄りの不動産鑑定士事務所を探す際は「日本不動産鑑定士協会連合会」のホームページを利用する方法があります。
2.委託契約を結ぶ
鑑定を依頼する不動産鑑定士事務所が決まったら、委託契約を結びましょう。
契約の際は、登記簿謄本や固定資産税証明書などの提出が求められます。
3.実地調査が行われる
委託契約を結んだあとは、不動産鑑定士による実地調査が行われます。
依頼者の同行をお願いされるケースもあるため、調査当日の段取りは入念に確認しておきましょう。
4.鑑定報告書が交付される
鑑定が終了し、土地の鑑定結果が判明したら「不動産鑑定評価書」が作成・発行されます。
鑑定の依頼から結果が分かるまでの期間はおおむね1〜2週間程度ですが、鑑定する土地や依頼の混雑状況によっては2か月以上かかることもあります。
土地を鑑定する際に必要な書類
土地の鑑定を依頼する際は、以下のような土地の所有者や権利関係などが分かる書類を提出する必要があります。
- 登記事項証明書(全部事項証明書)
- 固定資産税(都市計画税)納税通知書
- 住宅地図
- 公図
- 地積測量図
- 実測図 など
書類の多くは、不動産鑑定士に収集を任せられますが、中には自分自身で取得が必要なものもあります。
土地の鑑定を依頼するときは、自分自身で取得する必要がある書類の種類や取得方法などを不動産鑑定士に確認しておきましょう。
【まとめ】鑑定を依頼するのは土地の適正価格を知りたいとき
相続や贈与、親族間売買などで土地の適正な価格を知りたいときは、不動産鑑定士に依頼をすると良いでしょう。
鑑定料金はかかりますが、土地の価値を鑑定したうえで「不動産鑑定報告書」という公的な書類を作成してくれます。
一方で土地を売却するときに価格相場を知りたいのであれば、不動産会社による査定で問題ありません。
土地の価格や価値を調べる目的に応じて、鑑定と査定を使い分けることが大切です。
(執筆者:品木 彰)