「子どもに個室を与えたい」「マンションから戸建て住宅に引っ越したい」などの理由で、家の買い替えを検討している方もいるのではないでしょうか。
家を買い替えるときは、自宅の売却と新居の購入のどちらかを先に行うのが一般的です。
また事前に考えるべきことや決めるべきことがあります。
本記事では、家を買い替える方法や失敗を防ぐためのポイントをわかりやすく解説します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
家を買い替える際に決めること
まずは家を買い替える前に考えるべきことや決めるべきことをみていきましょう。
買い替える目的を考える
家を買い替える理由は、人によって異なります。
「通勤しやすいエリアの家に買い替えたい」と考える人もいれば「子どもが成長して家が手狭になった」という理由で買い替える人もいます。
まずはなぜ家を買い替える必要があるのかを、よく考えてみましょう。
目的を考えることで、新居に求める条件の優先順位が付けやすくなります。
予算を決める
予算を決めずに家を買い替えると、ローンの返済負担が重くなり新居での生活が苦しくなるかもしれません。
また家の買い替えには新居の購入費用だけでなく、売却と購入それぞれで手数料や税金などの諸費用がかかります。
そのため家を買い替えるときは、資産状況や今後のライフプランなどをもとに予算を決めましょう。
新居を探すときは、事前に決めた予算を超えないようにすることが大切です。
新居に求める条件を整理する
物件によって立地や間取り、広さ、築年数などが異なります。
すべての希望を叶えようとすると、簡単に予算をオーバーしてしまうでしょう。
予算を超えないようにするためには、買い替えの目的をもとに新居に求める条件を整理し、優先順位を付けるのが有効です。
例えば買い替えの目的が「子どもに個室を与えたい」である場合、立地や築年数よりも、間取りや広さの優先順位が高いと考えられます。
それに対して「通勤の利便性を高めたい」という買い替え理由であれば、立地や周辺環境が重要になります。
スケジュールを決める
家を買い替えるときは、自宅の売却と新居の購入をどのタイミングで行うのかを考えると良いでしょう。
1年のうちで不動産の取引が盛んになるのは、1〜3月または9〜11月といわれています。
この時期に自宅の売却活動をすることで、買主をスムーズに見つけられるかもしれません。
反対に取引が盛んになる時期に新居探しをすると、物件の選択肢を増やせる可能性があります。
自宅の売却と新居探しがスムーズにできれば、家の買い替えが1か月程度で終わるケースもありますが、手間取れば1年以上かかるケースもあります。
買い替えの際は、ご自身や家族の希望も踏まえて、余裕のあるスケジュールを組むことが大切です。
「売り先行」と「買い先行」のどちらで買い替える?
家を買い替えるときは、居住中の自宅の売却と新居の購入を同時に行うのが理想的です。
しかし実際に日程を合わせるのは困難であるため、自宅を先に売却する「売り先行」と新居を先に購入する「買い先行」のどちらかを選択するのが一般的です。
ここでは売り先行と買い先行それぞれの特徴をみていきましょう。
売り先行の特徴
売り先行は、自宅を売却したあとに新居を購入する買い替え方法です。
メリットとデメリットは、以下のとおりです。
売り先行のメリット | 売り先行のデメリット |
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売り先行では、納得がいく条件で自宅を買ってくれる人が見つかるまで売却活動ができるため、安値で買いたたかれるリスクは低いと考えられます。
また売却代金を新居の購入資金に充てられるため、資金計画が立てやすいのも特徴です。
住宅ローンを返済中の人や資金に余裕がない人は、売り先行を選ぶと良いでしょう。
ただし新居が見つかるまで仮住まいで生活する可能性もあるため、家賃や敷金、礼金、引っ越し費用が余分にかかる点には注意が必要です。
新居探しに時間がかかるほど仮住まいの費用負担は膨らんでいくため、焦って新居を決めてしまい失敗するリスクがあります。
買い先行の特徴
買い先行は、新居を購入したあとに居住中の家を売却する方法であり、以下のようなメリットとデメリットがあります。
買い先行のメリット | 買い先行のデメリット |
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買い先行のメリットは、自宅を売却するよりも先に新居を購入するため、納得がいくまで新居探しができることです。
また売り先行とは異なり、仮住まいが不要であるため、家賃や敷金、礼金などがかからず、引っ越しも1回で済みます。
その一方で旧居のローンを返済中であり、かつ新居もローンを組んで購入する場合は、一時的に二重の債務を抱えることになります。
自宅の売却に焦ってしまうと、購入希望者に足元を見られて安値で買いたたかれてしまうかもしれません。
そのため買い先行は、住宅ローンを完済している人や金銭的な余裕がある人向けの買い替え方法といえます。
住宅ローンが残っている場合は「住み替えローン」を検討する
不動産を売却するときは、売却代金と自己資金で住宅ローンを完済する必要があります。
しかし住宅ローンを完済できなくても「住み替えローン」を利用することで、買い替えできる場合があります。
住み替えローン(買い替えローン)とは、自宅を売却しても住宅ローンが完済できない場合に、残債の返済資金と新居の購入資金をまとめて借りることができるローンです。
ただし住み替えローンは、住宅ローンよりも金利が高い傾向にあるため、利用するのであればより入念に資金計画を立てることが重要です。
また新居の担保としての価値を上回る借り入れをするため、審査は厳しい傾向にあります。
買い先行の場合は「つなぎ融資」を利用する方法も
手持ち資金に余裕がないときに買い先行をするのであれば「つなぎ融資」を利用する方法があります。
つなぎ融資とは、新居の購入代金を賄える短期的な融資であり、融資で新居を購入したあと、旧居の売却代金で完済します。
つなぎ融資の注意点としては、通常の住宅ローンよりも金利が高い点が挙げられます。
また融資期間は1年以内であり、期間内につなぎ融資を返済できないと遅延損害金がかかることも理解したうえで、利用すべきか検討することが大切です。
後悔しない!買い替えの失敗を防ぐポイント
最後に家を買い替えるときに知っておきたい、失敗を防ぐポイントを3つご紹介します。
1. 基本的には売り先行をする
買い先行の場合、住んでいる自宅の売却金額や売却時期が決まる前に新居を購入します。
希望通りの価格で売却できず、当初と資金計画が変わってしまうと、手持ち資金に余裕がなければカバーするのは困難でしょう。
その点売り先行であれば、納得のいく価格で購入してくれる人が見つかるまで、じっくりと売却活動ができます。
家を買い替える人の多くが住宅ローンの返済中であり、手持ち資金に余裕がないことも少なくありません。
家を買い替えるのであれば、買い先行よりもリスクが低い売り先行を選ぶと良いでしょう。
2. 特別控除や特例を活用する
自宅を売却して利益(譲渡所得)が発生したときは、所得税や住民税がかかります。
そこで検討したいのが「居住用財産の3,000万円の特別控除(以下、3,000万円特別控除)」や「特定の居住用財産の買換え特例(以下、買換え特例)」です。
3,000万円特別控除は、マイホーム(居住用財産)を売却したときの譲渡所得が最大3,000万円まで非課税となる制度です。
買換え特例では、2023年(令和5年)12月31日までにマイホーム(居住用財産)を売却すると、譲渡所得にかかる税金を新居の売却時まで先送りできます。
3,000万円特別控除や買換え特例を利用するためには、所定の要件を満たしたうえで確定申告をする必要があります。
ただし、3,000万円特別控除と買換え特例は併用できません。
また新居に住み始める前後の一定期間に、3,000万円特別控除や買換え特例を利用していると、住宅ローン控除を利用できなくなります。
特別控除や特例の利用を検討する際は、税務署や不動産会社に相談すると良いでしょう。
3. 複数の不動産会社に査定を依頼する
不動産を売却するときは、不動産会社に査定を依頼し、結果をもとに売り出し価格を設定するのが一般的です。
同じ物件でも、不動産会社によって査定結果は異なります。
また仲介を依頼する不動産会社を選ぶ際は、査定結果やその根拠、さらには売却までの戦略などを聞いて判断することが重要です。
売り出し価格の設定に失敗をすると、家の売却期間が長引いたり相場よりも安い価格で売却したりするかもしれません。
家を売却するときは、複数の不動産会社に査定を依頼して適切な売り出し価格を設定しましょう。
また査定結果をもとに、売却が得意な不動産会社を選ぶことも重要です。
【まとめ】家の買い替えは計画的に行うことが大切
家を買い替えるときは目的を考え、それをもとに新居に求める条件や予算、スケジュールなどを決めましょう。
買い替えの方法には、自宅を先に売却する「売り先行」と新居を先に購入する「買い先行」があります。
資金に余裕があるのなら買い先行を選んでも良いですが、住宅ローンを返済中なのであればよりリスクが低い売り先行を選択すると良いでしょう。
家の買い替えでは、順序にかかわらず売却と購入のどちらにも失敗はできません。
そのため売買の実績が豊富な不動産会社にサポートしてもらうことをおすすめします。
(執筆者:品木 彰)