再建築不可物件は、建物を取り壊すと再び建物を建てられないため、一般の物件と比較して売却しにくいといわれています。
しかし再建築不可物件でも、ポイントを押さえることで売却できる可能性は十分にあります。そのため、所有する物件に応じた対策を検討することが大切です。
本記事では、再建築不可物件を売却するときのポイントをわかりやすく解説します。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
再建築不可物件とは
再建築不可物件とは、すでに建っている建物を取り壊して更地にすると、新たに建築できない物件のことです。
再建築不可物件があるのは、都市計画法で定められる「都市計画区域」と「準都市計画区域」です。
建物を建てる場合、建築基準法で定められる「接道義務」を満たさなければなりません。
接道義務は、原則として「幅員が4m以上である建築基準法上の道路に2m以上接した土地でなければ建物を建てられない」という規定です。
建築基準法や都市計画法が定められる以前に建てられた建物の中には、接道義務を満たしていない物件があります。
接道義務を満たしていない敷地にある物件は、再建築不可物件となります。
再建築不可物件が売却しにくい理由
再建築不可物件は売却しにくく、たとえ売却できたとしても売却価格は一般の物件の5〜7割程度になるといわれています。
その主な理由は、以下のとおりです。
- 自然災害などで倒壊しても再建築できない
- 土地を有効活用しにくい
- 住宅ローンを組みにくい
自然災害などで倒壊しても再建築できない
再建築不可物件は、地震や津波などで建物が倒壊したとしても、敷地が接道義務を満たせないのであれば再び建物を建てることができません。
また建物の老朽化が進み、住居としての使用が困難になったときは、建物を取り壊して更地にすることになるでしょう。
建物が倒壊したり使用できなくなったりしたあと、建物の再建築ができない土地を所有することになるため、再建築不可物件を欲しがる人は少ないのが実情です。
土地を有効活用しにくい
再建築不可物件は、敷地が接道義務を満たせない場合、現在ある建物を取り壊して賃貸アパートや賃貸マンションを建てることもできません。
すでに建っている住宅を賃貸に出す方法もありますが、建物が寿命を迎えてしまうと貸し出せなくなるでしょう。
更地にして駐車場や駐輪場などを設置する方法もありますが、一般的な物件よりも活用する際の選択肢が限られる分、再建築不可物件は売れにくくなります。
住宅ローンを組みにくい
住宅ローンの審査では、申し込んだ人の年収や勤続年数などの返済能力だけでなく、物件の担保としての価値も審査されます。
担保として十分な価値がなければ、金融機関はローンの返済を滞納されたとき、担保となる物件を売却しても融資金を回収できない可能性があるためです。
再建築不可物件は担保としての価値が低いため、住宅ローンの審査に通過しにくいです。
不動産を購入するためには一般的に多額の資金が必要であり、多くの方が住宅ローンを組むため、融資の承認が下りにくい再建築不可物件は買い手が見つかりにくいといえます。
再建築不可物件の売却が困難なときの対処方法
再建築不可物件の売却が困難なときは、以下のうち売却予定の物件に応じた方法で対処すると良いでしょう。
- 再建築を可能な状態にして売却する
- リフォームして売却する
- 隣地の所有者に売却する
- 空き家バンクに登録する
- 再建築不可物件専門の買取業者に売却する
- 売却実績が豊富な不動産会社に相談をする
再建築を可能な状態にして売却する
再建築不可物件であっても、敷地の一部を後退させる「セットバック」をすることで接道義務を果たせるのであれば、再建築が可能となります。
また隣地をつなげることで接道義務を満たせるのであれば、その隣地を購入してから売却をするのも方法の1つです。
隣地の購入費用や所有者との交渉が必要となりますが、隣地を買い取ることで再建築が可能となり高値で売却できる可能性が高まるのであれば、有効な手段といえるでしょう。
リフォームして売却する
増築や改築の規模が一定以上である場合、建物を新築するときと同様に「建築確認」が必要となります。
再建築不可物件は「建築確認」が必要となる増築や改築は認められていません。
一方で建築確認が不要な規模であれば、再建築不可物件でもリフォームやリノベーションができます。
建築確認が不要な範囲のリフォームやリノベーションで物件の付加価値を高めることができれば、そのままの状態で売却するよりも買い手は見つかりやすくなるでしょう。
隣地の所有者に売却する
物件がある隣地の所有者に、土地の買取を打診するのも方法の1つです。
「増改築したい」「庭を広くしたい」などの理由で、隣地の所有者が購入を承諾してくれる可能性があるためです。
また隣地の所有者が、駐車場や農地として活用するために、再建築不可物件を購入してくれるケースもあります。
空き家バンクに登録する
物件を「空き家バンク」に登録する方法もあります。
空き家バンクは、空き家を利用したい人や購入したい人などに向けて、自治体が主体となって情報を提供するサービスです。
空き家バンクを閲覧する人のほとんどは、空き家に興味がある人です。
そのため空き家となっている再建築不可物件を所有しているのであれば、空き家バンクに情報を登録することで買い手が見つかりやすくなると考えられます。
再建築不可物件専門の買取業者に売却する
物件を早く現金化したいときは、不動産買取業者に買い取ってもらうのも方法です。
再建築不可物件の取り扱いが多い不動産買取業者であれば、買い手が見つかりにくい物件でも買い取ってもらえる可能性があります。
ただし不動産買取業者に買い取ってもらう場合、買取価格は不動産会社による仲介で売却したときの売却価格の7割程度となります。
まずは不動産会社に仲介をしてもらって売却できないかを検討してみましょう。
売却実績が豊富な不動産会社に相談をする
再建築不可物件を売却する際も、通常の不動産売却と同様に売却実績が豊富な不動産会社に依頼をすることが大切です。
売却実績は、不動産会社のホームページで確認できます。
また複数の不動産会社に査定を依頼し、査定結果とその根拠、販売戦略を聞き比べるのもおすすめです。
売却実績が豊富な不動産会社ほど、査定結果の根拠が明確であり、売れるまでの道筋をわかりやすく提案してくれます。
査定結果や算出の根拠、販売戦略を聞いて比較することで、信頼できる不動産会社が見つかりやすくなるでしょう。
不要な再建築不可物件は早急に処分すべき3つの理由
所有する再建築不可物件に誰も住んでいないのであれば、早急に売却することをおすすめします。
主な理由は、以下の3点です。
- 税金がかかり続ける
- 空き家の場合は悪用される恐れがある
- 建物の倒壊によって損害賠償責任が発生することがある
税金がかかり続ける
再建築不可物件を所有しているあいだは、通常の物件と同様に固定資産税を支払わなければなりません。
また空き家となっている物件の管理を怠ると、固定資産税の負担が重くなる可能性があります。
空き家の管理が不十分であり、自治体から「特定空き家」に認定されると、固定資産税の軽減措置が適用されなくなり、土地部分の税額が最大6倍になるためです。
空き家となっており管理が困難な再建築不可物件を所有しているのであれば、早急に売却をするのが懸命でしょう。
空き家の場合は悪用される恐れがある
再建築不可物件を空き家のまま管理せずに放置していると、草木が伸びたままとなったり、ゴミが不法投棄されたりする可能性があります。
草木やゴミなどの燃えやすいものが散乱していると、不審者が放火をする危険性が高まりかねません。
また家具や布団などが残されている場合は、不審者が侵入して寝泊まりをしたり、家の中にあるものを盗難されたりすることもあります。
今後住む予定がない再建築不可物件は、悪用される前に早急に売却することをおすすめします。
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建物の倒壊によって損害賠償金が発生することがある
再建築不可物件の多くは築50年を超える木造住宅であり、新築住宅や築浅住宅と比較して老朽化が進んでいます。
建物が適切にメンテナンスされていなければ、地震や台風、洪水などの自然災害で倒壊してしまうかもしれません。
自然災害で建物が倒壊したり建物の一部が外れたりしたことで、近隣の住宅を損傷させてしまった場合は、高額な損害賠償義務を負う恐れがあります。
【まとめ】再建築不可物件を売却するときは不動産会社に相談しよう
再建築不可物件は、地震や洪水などで建物が倒壊をしても、敷地が接道義務を満たせないと新たに建物を建てられません。
また一般的な物件よりも担保価値が低い傾向にあり、購入する人が住宅ローンを組みにくいことも、再建築不可物件を売却しにくい主な理由です。
そこで再建築不可物件を売却するときは「再建築可能な状態にする」「リフォームをする」「隣地の所有者に相談する」などの対策を検討することが大切です。
再建築不可物件の売却実績が豊富な不動産会社に相談をし、売却予定の物件の特性に応じた対処方法を考えましょう。
(執筆者:品木 彰)