「親と同居している二世帯住宅は売却できるのだろうか」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
二世帯住宅は通常の住宅よりも売りにくいといわれていますが、売却方法や失敗を防ぐポイントを押さえることで、売却は十分に可能です。
本記事では、二世帯住宅が売却しにくいといわれる理由や売却方法などをわかりやすく解説します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
「親と同居している二世帯住宅は売却できるのだろうか」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
二世帯住宅は通常の住宅よりも売りにくいといわれていますが、売却方法や失敗を防ぐポイントを押さえることで、売却は十分に可能です。
本記事では、二世帯住宅が売却しにくいといわれる理由や売却方法などをわかりやすく解説します。
二世帯住宅が売却しにくいといわれる理由
二世帯住宅とは、複数の世帯が同じ建物内に住む住宅のことです。
親世帯と子ども世帯が暮らす住宅であるのが一般的です。
二世帯住宅は、一般的な場合住宅と比較して売却しにくいといわれることがあります。
主な理由は、以下の3点です。
- 需要が限られる
- 売却価格の相場が高い
- 同居人から売却の同意を得られないことがある
需要が限られる
住宅の購入を検討している人のうち、二世帯住宅を希望する人の割合はあまり多くありません。
特に建物の一部または全部を共有する二世帯住宅は、一般的な住宅とは間取りや広さが異なるため、需要が限られる傾向にあります。
こだわりが強い二世帯住宅ほど、買い手は見つかりにくくなるでしょう。
売却価格の相場が比較的高い
二世帯住宅は、2つの世帯が暮らすための広さが必要であるため、一般的な住宅と比較して部屋数が多く延べ床面積が広いのが特徴です。
またキッチンや浴室、トイレなどの水廻り設備が2つ以上あると、建築費が高くなりやすいです。
そのため、売却価格の相場が一般的な住宅よりも高い傾向にあり、マイホームの購入希望者から敬遠されることがあります。
同居人から売却の同意を得られないことがある
二世帯住宅を売却するときは、基本的に同居人の合意が必要です。
住宅を売却したいと考えていても、同居人が反対をして売却できないケースは少なくありません。
例えば子どもの独立を機に二世帯住宅を売却したいと思っても、同居する両親が反対して実現しないことがあります。
二世帯住宅の種類と主な売却方法
二世帯住宅は売却しにくい傾向にありますが、建物の種類に応じた戦略を練ることで売却できる可能性は高まります。
二世帯住宅には「完全共有型」「完全分離型」「一部共有型」の3種類があります。
それぞれの特徴や適していると考えられる売却方法をみていきましょう。
完全分離型の特徴と売却方法
完全分離型は、建物内で各世帯の暮らすスペースが完全に分離されている二世帯住宅です。
1階と2階で世帯が分かれているタイプと、左右で世帯が分かれているタイプがあります。
完全分離型の二世帯住宅には玄関が2つあり、設備や内装も世帯ごとに分かれているため、各世帯のプライバシーを守りながら暮らすことができます。
完全分離型であれば二世帯住宅だけでなく、一方の住宅を賃貸用に貸し出す「賃貸併用住宅」や2戸のアパートとしても売却が可能です。
また住戸の1つを、店舗や事務所に利用できる物件として売却する方法もあります。
完全共有型の特徴と売却方法
完全共有型とは、2つの世帯で建物全体を共有する二世帯住宅のことです。
建物のすべてを共有するため、家事や子育て、高齢者の介護などでお互いの世帯を助けやすいのが特徴です。
住宅の構造は一般的な住宅と変わらないため、他のタイプよりも建築コストがかかりにくく、売り出し価格は安い傾向にあります。
そのため他の二世帯住宅と比較して、価格を抑えてマイホームを購入したい人からも選んでもらいやすいでしょう。
また大人数で暮らしたい人や、同居する世帯人数が多い人からも購入してもらえる可能性があります。
一部共有型の特徴と売却方法
一部共有型とは、建物の一部を各世帯で共有する二世帯住宅です。
共有する部分は玄関や浴室などさまざまであり、ライフスタイルや家族構成によって異なります。
建物の一部を共有しているため、完全分離型と比較して世帯同士のコミュニケーションが希薄になりにくいというメリットがあります。
一部共有型であれば、二世帯住宅の他にもシェアハウスとして売却することも可能です。
二世帯住宅の売却時の失敗を防ぐポイント
二世帯住宅を売却するときに失敗を防ぐポイントは、以下のとおりです。
- 同居人の同意を得る
- 売り出し価格を適切に設定する
- 内覧期間中は物件の整理整頓を心がける
- 二世帯住宅の売却が得意な不動産会社に相談する
同居人の同意を得る
二世帯住宅を売却するときは、所有形態にかかわらず同居する人の同意を得るようにしましょう。
二世帯住宅の所有形態には「単有」「共有」「区分」があります。
- 単有:親もしくは子どもが単独名義で登記をする所有形態
- 共有:親と子どもの両方が名義人となって登記をする所有形態
- 区分:二世帯住宅を2戸の住宅とみなして登記をする所有形態
単有と共有は、二世帯住宅を1つの住宅とみなして登記をする点は共通しています。
単有であれば名義人の独断で住宅を売却できますが、同居人から同意を得ないまま売却してしまうとトラブルになりかねません。
所有形態が共有である場合は、原則として名義人全員の合意が必要です。
区分登記については、それぞれの名義人が自由に売却できます。
例えば1階と2階に分けて区分登記をした場合、法律上は2階部分のみを売却することも可能です。
しかし1階部分の名義人に許可を得ることなく売却すると、トラブルに発展する可能性があります。
トラブルを防ぐためにも、二世帯住宅を売却するときは同居人の同意を必ず得るようにしましょう。
売り出し価格を適切に設定する
売り出し価格の設定を誤ると、住宅の売却が難航しやすくなります。
例えば売り出し価格を相場よりも高く設定すると、物件が売れ残ってしまい、売却期間が長期化してしまいかねません。
二世帯住宅に限らず、不動産を売り出すときは、不動産会社にも相談して相場をもとに売り出し価格を適切に設定することが大切です。
内覧期間中は物件の整理整頓を心がける
利便性の高い立地に物件があったとしても、室内がモノで散乱していたり、内装のキズや汚れがそのままになっていたりすると、内覧時に購入希望者の印象を悪くしてしまいかねません。
物件の内覧を受け付けている期間中は、建物内の清掃や修繕を徹底しましょう。
二世帯住宅の売却が得意な不動産会社に相談する
売却を依頼する不動産会社によって、得意な分野が異なります。
買主を探してもらうときは、二世帯住宅の売却が得意な不動産会社に依頼することが大切です。
二世帯住宅の売却実績が豊富な不動産会社であれば、売却できる可能性が高まり、売却期間や売却価格の希望が実現しやすくなります。
ホームページを見たり、実際に担当者と話したりして、二世帯住宅の売却実績が豊富な不動産会社を探しましょう。
二世帯住宅を売却するときの費用
二世帯住宅を売却するときは諸費用がかかるため、あらかじめ不動産会社に金額の目安を確認しておくと良いでしょう。
売却時にかかる諸費用の例は、以下のとおりです。
相続税評価額 | 公示価格 (公示地価) |
基準地価 | 固定資産税評価額 | |
調査主体 | 国税庁 | 国土交通省 | 都道府県 | 市町村 |
調査時点 | 1月1日 | 1月1日 | 7月1日 | 1月1日 (3年に1度) |
公表日 | 7月1日 | 3月下旬 | 9月下旬 | 3月または4月 |
※1.不動産会社に仲介を依頼した場合
※2.軽減措置の適用後
※3.売却時に住宅ローンを一括返済した場合
※4.不動産を売却して利益が発生したとき
※5.復興特別所得税を合算した税率
住宅の売却によって利益(譲渡所得)が発生したときは、譲渡所得税と住民税がかかりますが、特例措置を適用すると税負担を軽減できることがあります。
例えば「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用できると、最大3,000万円までの譲渡所得が非課税となります。
マイホーム(居住用財産)を売却して利益を得た場合に「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(以下、3,000万円特別控除)」を適用できると、税負担を大きく軽減できます。 そのためマイホームを売却するときは、3[…]
【まとめ】二世帯住宅を売却するときは入念に戦略を練ることが重要
二世帯住宅は、需要が限られるうえに売却価格の相場が高く、一般的な住宅と比較して売却しにくいため、建物の種類に応じて適切な戦略を立てることが大切です。
とはいえ適切な戦略を考えるためには、二世帯住宅の売却に関する知識やノウハウが必要です。
そこで二世帯住宅を売却するときは、専門家に相談することをおすすめします。
二世帯住宅の売却実績が豊富な不動産会社を探し、売却のサポートを依頼すると良いでしょう。
(執筆者:品木 彰)