相続や売買などで家の所有者が変わったときは、名義変更の手続きが必要です。
家の名義変更をするときは、必要書類を揃えて法務局で手続きをしなければなりません。
本記事では、家の名義変更が必要になる代表的なケースや変更方法、かかる費用などを解説します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
家を名義変更するのは持ち主が変わったとき
名義変更が必要となるのは、売買や相続などで「家の持ち主が変わったとき」です。
所有者が変わったときは、法務局で「所有権移転登記」をして不動産の名義を変更しなければなりません。
不動産を取得したにもかかわらず名義変更をしないと、その不動産の正確な所有者が自分自身であることを第三者に証明できなくなります。
不動産の所有権があることを第三者に証明できなければ、売却したり不動産を担保にお金を借りたりすることはできません。
家の名義変更が必要になるケース
家の名義変更が必要になる主なケースは、以下のとおりです。
- 家を相続するとき
- 生前贈与するとき
- 夫婦が離婚して財産分与をするとき
- 不動産の購入・売却
家を相続するとき
親や祖父母などが亡くなったときに不動産を相続した人は、所有権移転登記をして名義を変更します。
不動産を相続したときに行う所有権移転登記は「相続登記」ともいわれます。
相続登記をするのは、不動産を相続した相続人です。
これまで不動産を相続しても、相続登記は必須ではありませんでした。
しかし、2024年(令和6年)4月1日より、相続登記が義務化されます。
義務化されたあとは、相続によって所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
正当な理由がないにもかかわらず、期限までに登記をしなかった場合は、10万円以下の過料を科せられる可能性があります。
なお、相続した不動産を売却するとしても、相続登記をして家の所有者を一度相続人に変更する必要があります。
生前贈与するとき
生前贈与とは、現金や不動産、有価証券などの財産を生きているうちに贈与することです。
亡くなったときの遺産を減らすために、健在なうちに子どもや孫などに不動産を生前贈与することがあります。
生前贈与をして、亡くなったときの遺産を少なくすると、残された家族や親族が負担する相続税を軽減できる可能性があるためです。
生前贈与によって不動産を取得した人は、所有権移転登記が必要です。
夫婦が離婚をして財産分与をするとき
夫婦が離婚をすることになり、財産分与によって家の名義人が変わる場合は、所有権移転登記が必要です。
財産分与とは、夫婦が共同生活を送るなかで築き上げてきた財産を、離婚をするときにそれぞれの貢献度に応じて分配することです。
例えば夫婦が共有名義で所有している家を、離婚後に妻が単独で所有する場合は、所有権移転登記をして名義人を妻のみに変更します。
ただし住宅ローンの返済中である場合、不動産の名義変更をするときは、原則として金融機関の承諾を得なければなりません。
不動産の売却・購入
不動産を購入したときは、所有権移転登記をして名義人を売主から買主に変更します。
不動産売買時の所有権移転登記をするのは買主ですが、実際には司法書士が担当するのが一般的です。
売買代金のすべてが決済され、物件が買主に引き渡されると、司法書士は法務局にて所有権移転登記をします。
また、買主が住宅ローンを組んだ場合は「抵当権設定登記」も行われます。
抵当権設定登記は、住宅ローンを借り入れて取得する土地や建物を担保に設定する手続きのことです。
家の名義を変更する方法
家の名義を変更するときは、法務局で手続きをします。
ここでは、家の所有権移転登記をするときの流れをみていきましょう。
名義変更をするときの流れ
家の名義変更をするときの手順は、以下のとおりです。
- 必要書類を集める
- 登記申請書を作成する
- 法務局で申請をする
まずは、所有権移転登記をするために必要な書類を集めましょう。
必要書類は、相続や売却など名義人が変更される理由によって異なります。
必要書類を集めたら「登記申請書」を作成しましょう。
登記申請書は、法務局のホームページや最寄りの法務局の窓口などで入手できます。
申請書を作成したあとは、添付書類をそえて法務局に提出します。
提出方法は、法務局への持参や郵送の他にも、オンライン申請を選択することも可能です。
名義変更の手続きは司法書士に依頼することも可能
家の名義変更は、変更後の所有者自身でもできます。
しかし自分自身で手続きをしようとすると、必要書類の収集や申請書の作成、法務局での申請に多くの時間がかかる場合もあります。
そこで、所有権移転登記をする際は、司法書士に依頼するのもひとつの方法です。
法的手続きの専門家である司法書士に依頼すると、報酬はかかるものの、正確かつ迅速に家の名義変更を済ませることができます。
家の名義変更時に必要な書類
家の名義変更をするときに必要となる書類は、以下のとおりです。
必要書類 | |
共通 |
※申請書に住民票コードを記載した場合は不要
※相続登記では不要 ※不動産をもらう側は原則として認印で可 |
相続 |
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不動産の売買 |
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生前贈与 |
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財産分与 |
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登記識別情報と登記済権利証は、所有権を登録したときや名義変更によって所有権を持つ人が変更になったときに発行される書類です。
固定資産税納税通知書や固定資産税評価証明書などは、 所有権移転登記をする際の登録免許税を計算するために必要です。
また委任による代理人が所有権移転登記をする場合は、委任状も必要となります。
所有権移転登記をするときに必要となる書類は、家を取得した理由によって異なります。
家を取得したときは速やかに必要書類を確認し、所有権移転登記をしましょう。
家の名義変更時にかかる費用
家の名義変更をするときは、さまざまな税金や諸費用がかかることがあります。
また、必要書類を取得する際に費用がかかることもあるため、事前にいくらほどかかるのかを確認しておくことが大切です。
ここからは、家の名義変更時にかかる費用について、詳しく見ていきましょう。
登録免許税【共通】
登録免許税とは、所有権移転登記をするときに支払う税金のことです。
税額は「不動産の価額×税率」で計算をします。
不動産の価額とは、自治体が管理する固定資産課税台帳に記載された金額と、基本的には同額です。
税率は以下のとおりです。
土地 | 建物(住宅用家屋) | |
売買 | 1.5%※1 | 0.3%※2 |
相続 | 0.4% | 0.4% |
贈与・財産分与 | 2% | 2% |
※出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
※1:2026年(令和8年)3月31日までに登記をして税率の軽減措置を適用する場合
※2:2024年(令和6年)3月31日までに登記をして税率の軽減措置を適用する場合
必要書類の取得費用【共通】
印鑑証明書や住民票の写しなどを取得するときは、自治体ごとに定められた費用がかかります。
静岡県浜松市の場合、必要書類の取得にかかる費用は以下のとおりです。
- 住民票の写し:1通350円
- 印鑑登録証明書:1通350円
- 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本):1通350円
※出典:浜松市「印鑑証明、戸籍、住民票関係 証明書等交付手数料」
司法書士報酬【共通】
家の所有権移転登記を司法書士に依頼する場合は、報酬がかかります。
報酬の金額は、依頼する司法書士や不動産の価格、相続人の人数などで異なりますが、5万〜10万円程度が相場です。
不動産取得税【購入・生前贈与・財産分与の場合】
不動産取得税は、土地や建物などを取得した人が納める税金です。
不動産を購入しただけでなく生前贈与や財産分与で取得した場合も、不動産取得税はかかります。
不動産取得税の税額は「課税標準額×税率」で計算します。
課税標準額は、市区町村の固定資産課税台帳に登録されている価格と基本的には同じです。
ただし建物が建っている土地(宅地)の場合、特例措置が適用されると固定資産課税台帳に登録された価格の2分の1が課税標準額となります。
税率は基本的に4%ですが、2024年(令和6年)3月31日までに取得した土地や住宅用の家屋については3%となります。
相続税【遺産相続】
相続税とは、亡くなった人から受け継いだ財産が一定金額を超えるときに課せられる税金のことです。
預貯金や不動産などの財産から、借金や葬儀費用などを差し引いたあとの金額が、相続税の基礎控除額を上回るときに相続税がかかります。
基礎控除額は、民法で定められた 被相続人の遺産を相続する権利がある人(法定相続人)の数によって決まります。
贈与税【生前贈与】
贈与税は、個人から現金や不動産などの財産を取得したときに課せられる税金です。
1月1日から12月31日までに取得した財産の合計金額が110万円を超える場合、贈与税がかかります。
譲渡所得税【売却】
家の売却によって利益(譲渡所得)が発生したときは、所得税や住民税がかかることがあります。
譲渡所得にかかる税金は「譲渡所得税」ともいわれます。
譲渡所得にかかる税率は、家を売却した年の1月1日時点における所有期間で決まります。
具体的には、以下のとおりです。
- 5年以下(短期譲渡所得):39.63%(所得税率30.63%+住民税率9%)
- 5年超(長期譲渡所得):20.315%(所得税率15.315%+住民税率5%)
※2037年(令和19年)までは、所得税額の2.1%が復興特別所得税として徴収されます。上記は、復興特別所得税を合算した税率です。
【まとめ】家の名義変更が必要なときは早めに手続きをしよう
相続や売買、財産分与、生前贈与で不動産の所有者が変わったときは、所有権移転登記をして家の名義変更をする必要があります。
所有者が変わったにもかかわらず名義変更の手続きをしないと、不動産の売却や不動産を担保とした借り入れはできません。
家の所有者が変わったときは、速やかに名義変更の手続きをしましょう。
名義変更の手続きにおける負担を軽減したいときは、司法書士に代行してもらうことをおすすめします。
(執筆者:品木 彰)