住み替えをするタイミングは「子どもが成長して家が手狭になったとき」「転勤が決まったとき」などさまざまです。
住み替えをするときは、家族構成や叶えたいことに加えて、住宅ローンの金利相場や物件の築年数なども踏まえてタイミングを決めると失敗しにくくなるでしょう。
本記事では、住み替えをする代表的なタイミングや失敗を防ぐためのポイントをわかりやすく解説します。
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
住み替えを検討する代表的なタイミング
実際に住み替えをした人は、どのような理由で新居に移り住むことを決めたのでしょうか。
国土交通省が行った調査によると、直近5年間で住み替えをした目的は以下のとおりです。
- 通勤・通学の利便:35.1%
- 広さや部屋数:21.4%
- 世帯からの独立(単身赴任、離婚などを含む):18.2%
- 新しさ・きれいさ:16.2%
- 結婚による独立:14.1%
- 住居費負担の軽減:13.2%
- 家族等との同居・隣居・近居:11.8%
- 使いやすさの向上:10.8%
- 日常の買物、医療などの利便:10.3%
- 子育てのしやすさ:9.3%
※出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査(確報)」
調査結果をみると「通勤・通学の利便」や「広さや部屋数」という回答が多く、日ごろの暮らしの利便性を高めるために、住み替えをする人が多いことがうかがえます。
また「世帯からの独立」「結婚による独立」と回答した人も多く、ライフスタイルの変化を理由に住み替えをする人も少なくないようです。
住み替えに適していると考えられるタイミング
住み替えをするときは、住宅ローンの金利や住宅ローン控除を受けられる期間、ローンの残高などをもとにタイミングを検討すると良いでしょう。
住宅ローンの金利相場が低い
金利が低いときに、新居を購入するための住宅ローンを組むことができれば、毎月の返済額や返済総額を抑えられるでしょう。
とくに2023年8月現在の住宅ローン金利は、引き続き低水準で推移しています。
住み替えを検討しているのであれば、金利相場が低いうちに新たな住宅ローンを組んでしまうのも1つの方法です。
住宅ローン控除の控除期間が終わる
住宅ローンを組んだ人は、所定の要件を満たすと住宅ローン控除を申請することで、所得税や一部の住民税を減税してもらえます。
控除金額は「年末時点の住宅ローン残高×控除率」です。
取得した住宅に入居するタイミングが、2022年1月〜2025年12月末である場合、控除率は0.7%となります。
住宅ローン控除の控除期間は、最長10年または13年です。
控除期間が終了して減税が受けられなくなったときは、住み替えをするのも1つのタイミングといえるでしょう。
再び住宅ローンを組んで新居を購入する場合、所定の要件を満たせば、申請をすることで再度住宅ローン控除の対象となり、一定期間の減税を受けることができます。
建物の築年数が浅い
建物は、築年数の経過にしたがって基本的には資産価値が下がっていきます。
日本では新築物件の人気が高いこともあり、築古の物件は敬遠されやすいです。
築年数があまりにも古いと、売りに出しても買い手が見つからずに苦労するかもしれません。
その点、築年数が10年以内の築浅物件であれば、資産価値が高いため築古の物件よりも高値で売却しやすいです。
自宅を高値で売却することができれば、新居を購入するための予算を多く確保できるでしょう。
住み替えをするのであれば、自宅の築年数が浅いうちに売却してしまうのも選択肢の1つといえます。
住み替えの売却と購入のタイミング
住み替えをするときは、自宅の売却と新居の購入のどちらを先に行えば良いのでしょうか。
自宅を先に売却する「売り先行」と、新居を先に購入する「買い先行」のメリット・デメリットをみていきましょう。
売り先行のメリット・デメリット
売り先行での住み替えとは、現在の住まいを先に売却してから新しい住宅を購入する方法のことです。売り先行の主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
【売り先行の主なメリット】
・資金計画が立てやすい
・二重のローン負担を避けられる
【売り先行の主なデメリット】
・仮住まいを確保する必要がある
・新居をじっくり検討できない可能性がある
売り先行では、住んでいる家を先に売却するため、売却代金を得られます。得られた売却代金をもとに、新居を購入するときの資金計画をじっくりと立てることができるでしょう。
また、自宅を先に売却して住宅ローンを完済したあとに新居を購入するため、ローンの返済が2重になる心配もありません。
ただし、現在の住まいを売却してから新しい住宅が決まるまでのあいだ、一時的に仮住まいでの生活となり、家賃や引越し代金が余分にかかる可能性があります。
仮住まいの入居時には、敷金や礼金、前払家賃などの支払いが発生するでしょう。
また仮住まいを経由する分、引越し費用が1回分多くなります。
新居をじっくりと探そうにも、仮住まいの費用がかかることから焦りが生じてしまい納得がゆくまで新居探しができない可能性もあります。
買い先行のメリット・デメリット
買い先行とは、新しい住宅を先に購入したあとに、現在の住まいを売却する方法のことです。買い先行の主なメリットとデメリットは、次のとおりです。
【買い先行の主なメリット】
・引越しのストレスが少なくて済む
・新居を落ち着いて探せる
【買い先行の主なデメリット】
・二重のローンが負担になりやすい
・旧居を安値で売却するリスクがある
買い先行では、新しい住宅を先に購入するため、売り先行とは異なり仮住まいで暮らす必要がありません。
仮住まいに入居するためのコストがかからず、引越しも1回分で済みます。
また、売り先行と比較して立地や広さ、間取りなどの条件に合致する物件を、納得できるまで探しやすい点もメリットのひとつです。
一方で、住んでいる自宅の売却が想定よりも遅れてしまうと、新居と旧居のローン返済が一時的に重なり、金銭的な負担が重くなる可能性があります。
旧居の売却を急いでしまうと、新居の購入時に想定したときよりも低い金額での売却となってしまい、資金計画が大幅に狂ってしまうかもしれません。
住み替えの失敗を防ぐポイント
続いて、住み替えの失敗を防ぐうえで押さえておきたい4つのポイントをご紹介します。
1.売り出し価格を適切に設定する
住み替えの失敗を防ぐためには、自宅をできる限り高値で売却することが大切です。
そのためには、相場をもとに売り出し価格を適切に設定しなければなりません。
売り出し価格が相場よりも高いと売れ残ってしまい、結局は値下げをしなければ売却できなくなるでしょう。
一方で、売り出し価格が相場よりも安いと、安値で売却するリスクを高めてしまいます。
住み替えをするときは、不動産会社ともよく相談して価格相場をもとに適切な売り出し価格を設定しましょう。
2.余裕を持ったスケジュールを組む
住み替えをするときは、自宅の売却と新居の購入のそれぞれで余裕のあるスケジュールを設定すると良いでしょう。
売却のスケジュールに余裕がないと、購入希望者との価格交渉の際に足元を見られてしまい、安値で買いたたかれてしまうかもしれません。
また新居を購入するための期間が限られると、希望する条件に合う物件を見つけられずに、妥協を余儀なくされる可能性があります。
スケジュールに余裕があれば、売却期間を十分に確保することができ、購入希望者との価格交渉で不利な状況になりにくくなるでしょう。
新居探しのスケジュールにも余裕があれば、希望に合致する物件が見つかるまでじっくりと新居を探すことができます。
3.住宅ローンの仮審査を済ませておく
住み替えでは、新居を探す前に住宅ローンの仮審査を済ませておくと良いでしょう。
事前審査を受けていれば、自分自身がいくらの借入ができていくらまでの物件を購入できるのかを把握することができるため、資金計画が立てやすくなります。
また、事前審査に通過していれば、新居の契約を結んで住宅ローンの正式な申し込みをしたあとに、本審査で落ちてしまう確率を下げることができます。
4.事前に資金計画を立てる
住み替えでは、新居の購入費用だけでなく、自宅の売却と新居の購入のそれぞれで手数料や税金といった諸費用もかかるため、一般的に多額の資金が必要です。
資金計画を立てずに住み替えをすると、新居に入居したあとの返済負担が重くなってしまったり、手元に残る資金が著しく少なくなったりする可能性があります。
また引越し費用や、新居で使用する家具・家電の購入費用などがかかることも想定しておかなければなりません。
そのため住み替えをするときは、不動産会社や金融機関の担当者、ファイナンシャルプランナー(FP)などにも相談のうえ、慎重に資金計画を立てることが重要です。
【まとめ】住み替えのタイミングは目的に合わせて決める
生活の利便性を向上させたいときやライフスタイルが変化したときは、住み替えをする代表的なタイミングと考えられます。
一方で、住宅ローンの金利が低いときや住宅ローン控除の控除期間が終了したときなど、金銭的な側面から住み替えのタイミングを検討するのも1つの方法です。
住み替えの失敗を防ぐためには、自宅をできる限り高く売却することが大切です。
不動産の売却実績が豊富な不動産会社に相談し、周辺の価格相場をもとに慎重に売り出し価格を決めて自宅の売却活動を始めましょう。
(執筆者:品木 彰)