建売住宅は、注文住宅よりも売却しやすいといわれています。
売却手順や必要書類、かかる費用を把握していれば、希望する価格でスムーズに売却することが可能です。
本記事では、建売住宅を売却するときのポイントや手順などをわかりやすく解説します。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長 石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
建売住宅が売却しやすい理由
建売住宅とは、建物と土地がセットで販売されている住宅のことです。
一方、間取りやデザインなどを自由に設計できる住宅は「注文住宅」といいます。
建売住宅が売却しやすいといわれる主な理由は、以下のとおりです。
- 間取りやデザインが万人受けしやすい
- 注文住宅よりも価格が手ごろ
- 近隣住民と境界線のトラブルになりにくい
間取りやデザインが万人受けしやすい
建売住宅は、シンプルでバランスがよく使いやすい間取りが一般的です。
主にファミリー層を想定した間取りが多く、住宅購入を検討する年齢層からも指示されやすいといえます。
デザインもシンプルで、多くの人に受け入れられやすいテイストになっています。
建売住宅は個性が強すぎないため買主を限定しにくく、売却しやすいといえるでしょう。
注文住宅よりも価格が手ごろ
建売住宅は、基本的に同じ規格で建てられるため、建材や資材を大量に仕入れて調達コストを削減することが可能です。
建築コストが安く済む分、新築時の販売価格は注文住宅よりも安い傾向にあります。
中古住宅として売りに出すときも、注文住宅より割安な売却価格に設定できるため「できるだけ安くマイホームを手に入れたい」と考えている人の需要が期待できます。
近隣住民と境界のトラブルになりにくい
隣地との境界が曖昧なまま住宅を売却すると、あとで買主や近隣住民とトラブルになってしまいかねません。
また境界を確定させるために測量が必要となるため、手間や費用がかかります。
その点、建売住宅は新築物件として販売される時点で、不動産会社によって境界が確定されているケースがほとんどです。
売却後に境界のトラブルとなる心配は基本的になく、確定測量をする必要もありません。
建売住宅を売却するときの必要書類・費用
続いて、建売住宅を売却するときに準備する書類や、発生する費用を解説します。
売却時の必要書類
建売住宅の売却時に必要な書類は、以下のとおりです。
書類の名称 | 書類の概要 |
本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカードなど |
印鑑登録証明書 | 発行から3か月以内のもの |
登記済権利証 (登記識別情報) |
物件を取得したときに法務局から交付される書類 |
固定資産税納税通知書 | 毎年4月上旬に市区町村役場から送付される書類 |
建築確認済証・検査済証 | 建物や設備の概要が記載された書類 |
地積測量図・境界確認書 | 隣地との境界線を明確に記載した証明書 |
固定資産税納税通知書が見当たらない場合は、市区町村役場で入手できる「固定資産税評価証明書」を代わりに準備しましょう。
状況によって、売却時に必要となる書類は異なるため、不動産会社に確認しスケジュールに余裕を持って収集を開始することが大切です。
売却時の費用・税金
建売住宅の売却時には、以下のような費用と税金がかかります。
概要 | |
仲介手数料 | 物件価格×3%+6万円(税別)が上限 ※売却価格が400万円を超える場合 |
印紙税(契約書に貼る収入印紙代) | 売却価格に応じて5,000〜3万円程度が一般的 |
抵当権抹消登記費用 | 登録免許税:不動産1個につき1,000円(土地と建物で2,000円) 司法書士報酬:5万〜10万円が一般的 |
一括繰上返済の手数料 | 0〜数万円 ※金融機関によって異なる |
譲渡所得に対する所得税・住民税 | 売却益(課税譲渡所得価格)×税率 |
抵当権抹消登記費用と一括繰上返済手数料は、売却時に住宅ローンを返済したときにかかる費用です。
譲渡所得にかかる所得税(いわゆる譲渡所得税)や住民税は、建売住宅を売却して利益を得たときに課せられる可能性がある税金です。
他にも、ハウスクリーニングの費用や土地の測量費用、建物の解体費用などがかかることがあります。
建売住宅を売却するときは、不動産会社にも確認のうえ、諸費用も考慮して資金計画を立てましょう。
建売住宅を売却する手順
建売住宅を売却するときの大まかな手順は、以下のとおりです。
- 価格を査定してもらう
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売却活動を開始する
- 買い手と売買契約を結ぶ
- 残代金決済・物件の引き渡し
価格を査定してもらう
まずは、売却を予定している建売住宅を不動産会社に査定してもらいましょう。
査定結果は、住宅を売りに出すときの価格(売り出し価格)を決める際の、重要な判断基準となります。
また、売却を依頼する不動産会社を選ぶときは、査定結果とその根拠を比較するのが有効です。
不動産売却の実績が豊富な不動産会社は、査定額の算出根拠が明確なだけでなく、どのようにするとスムーズに物件が売れるのかを丁寧に説明してくれます。
家を売りたいと考えたとき、まず気になることは「売却額」ではないでしょうか。 およその売却額を知るには査定が必要ですが、そもそも「査定ってどうやるの?」「どんな準備が必要?」など、わからないことが多いかもしれません。 今回は査[…]
不動産会社と媒介契約を結ぶ
売却を依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。
媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
一般媒介契約は複数の不動産会社と締結できるだけでなく、売主自身が見つけてきた買主と売買契約を結ぶことも可能です。
専任媒介契約や専属専任媒介契約は、1社としか締結できません。
しかし不動産会社側からすると、契約期間が終わるまでは売主を他社に取られる心配がないため、担当者が売却活動に力を入れてくれる傾向にあります。
「媒介とはどのような意味なのだろうか」 「媒介と仲介の違いがわからない」 不動産を売却する際は、媒介の意味を理解したうえで不動産会社と適切な契約を結ぶ必要があります。 本記事では、不動産を売買する際の媒介について、仲介との[…]
売却活動を開始する
続いて、売り出し価格を決めて売却活動を始めましょう。
売り出し価格は、相場と乖離しないよう慎重に設定することが大切です。
不動産取引において、売り出し価格よりも高値で売却できるケースは稀です。
価格が相場よりも安いと、高値で売却できる機会を逃してしまうかもしれません。
かといって、相場よりも著しく高い価格に設定してしまうと、購入希望者がなかなか現れず売却期間が長引く要因となります。
周辺の価格相場を参考にし、不動産会社の担当者ともよく相談して、売り出し価格を決めることが大切です。
「同じような中古住宅なのに、販売価格が異なるのはなぜ?」 「そもそも中古住宅の相場は、どうやって決まるの?」 工事費用をもとに価格が決まる新築住宅に対して、中古住宅の相場はイメージしにくいのではないでしょうか? そこで[…]
買い手と売買契約を結ぶ
購入希望者が現れ、売買価格や引き渡し日などの条件に合意をしたら、不動産売買契約を締結します。
売買契約を結ぶときは、不動産会社(宅地建物取引業者)による「重要事項説明」も行われます。
売買契約書や重要事項説明の内容をよく理解したうえで契約を結ぶことが大切です。
なお、売買契約の締結時には、買主から手付金が支払われます。
契約の締結から引き渡し日までのあいだに、買主側が契約をキャンセルする場合、売主は手付金を受け取ることができます。
不動産の売買契約を結ぶときは「不動産売買契約書」を取り交わすのが一般的です。 契約書には、不動産の売買代金や支払いの時期、不動産の住所などが記載されています。 すべての項目に目を通し、記載内容をよく理解したうえで売買契約を結[…]
残代金決済・物件の引き渡し
売買契約の締結から1〜2か月ほど経つと、買主や売主、不動産会社、金融機関などの当事者が一箇所に集まり、残代金の決済と物件の引き渡しが行われます。
残代金の決済とは、物件の購入代金から手付金を引いた残りを、買主が売主に支払う手続きのことです。
残代金が決済されたあとは、住宅の鍵が買主に引き渡されます。
その後、司法書士が法務局で所有権移転登記をし、物件の所有権が売主から買主へ移転すると売却手続きは完了となります。
不動産の売買契約では、最後に「決済」という手続きをします。 不動産をスムーズに売却するためには、決済の流れや必要書類、事前に準備すべきことを確認しておくことが重要です。 本記事では、不動産を売却するときの決済の流れや必要とな[…]
建売住宅の売却の失敗を防ぐポイント
建売住宅を売却するときは、以下の点を意識することで失敗を防ぎやすくなります。
- 売却期間中は整理整頓を心がける
- 買主から契約不適合責任を問われないように対策する
売却期間中は整理整頓を心がける
物件を売りに出したあとは、いつ内覧希望者が現れても対応できるように、室内の整理整頓を心がけ、清潔な状態に保つことが重要です。
とくに玄関やリビング、水回りといった、内覧者の目にとまりやすい部分は、入念に掃除をしておきましょう。
物件を売れやすくするためには、ハウスクリーニングやリフォームをするのも方法のひとつです。
ただし、ハウスクリーニングやリフォームをしても、費用に見合う効果が得られるとは限らないため、不動産会社に相談のうえ慎重に判断することが大切です。
買主から契約不適合責任を問われないように対策する
契約不適合責任とは、契約内容とは異なる物件を引き渡したときに売主が負う責任のことです。
物件を引き渡したあと、契約書に記載されていなかった雨漏りやシロアリ被害などが発覚した場合、買主から修繕や補修、代金の減額などを請求される可能性があります。
契約不適合責任を問われないようにするためには、売却前に物件の不具合をすべて調査し、それらを契約書に記載しましょう。
建物の不具合を調べるときは、専門の検査員に建物の状況を第三者の立場で診断してもらう「インスペクション」というサービスを利用する方法もあります。
不動産を売却するときは「契約不適合責任」を理解することが重要です。 契約不適合責任の理解が不足していると、不動産を買主に引き渡したあとに建物の修繕や損害賠償などを請求されるリスクが生じる可能性があるためです。 本記事では、契[…]
【まとめ】建売住宅を売却するときは実績が豊富な不動産会社に相談しよう
建売住宅は、デザインや間取りが万人受けしやすく、注文住宅よりも価格が手ごろであるため売却しやすいといわれています。
また、境界が曖昧なまま売却してしまい、買主や近隣住民とトラブルになる心配もほぼありません。
複数社に査定を依頼し、建売住宅の売却実績が豊富な不動産会社に依頼をすることで、よりスムーズに売却できるでしょう。
(執筆者:品木 彰)