土地には定価がないため、価格の調べ方で悩む人は少なくありません。
土地の価格には大きく4種類あり、それぞれ用いられる場面が異なります。
そのため、土地価格の種類を理解し、目的に合わせた価格を調べることが重要です。
本記事では、土地価格の種類や調べ方、調査時の注意点を解説します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
土地の価格は4種類ある
土地には、大きく分けて4つの価格があります。
- 公示地価:土地が適正な価格で取引されるよう国土交通省が公表する土地価格
- 実勢価格:実際に土地が売買された際の価格
- 路線価(相続税路線価):国税庁が発表する土地1㎡あたりの価格
- 固定資産税評価額:市区町村が計算する不動産価格
公示地価は、毎年1月1日における全国の標準地点(基準地点)1㎡あたりの評価額です。
複数の不動産鑑定士による鑑定結果と、国土交通省「土地鑑定委員会」の審議により決定され、毎年3月下旬ごろに発表されます。
路線価は、道路に面している土地1㎡あたりの価格です。
毎年1月1日時点の価格が、7月1日に発表されます。
路線価には、相続税や贈与税を算出するために国が定める「相続税路線価」と、固定資産税評価額を決めるために各自治体が定める「固定資産税路線価」の2種類があります。
単に路線価というときは、相続税路線価を指すのが一般的です。
固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税、不動産取得税などを計算する際に用いられます。
公示地価を1とした場合の、各土地価格は以下のとおりです。
- 実勢価格:1.1倍
- 相続税路線価:0.8倍(8割)
- 固定資産税評価額:0.7倍(7割)
例えば、固定資産税評価額が2,100万円である場合、公示地価は3,000万円と推測できます。
土地価格の調べ方
続いて、土地価格の種類ごとに調べ方をご紹介します。
公示地価の調べ方
公示地価は、国土交通省が運営する「土地総合情報システム」で調べられます。
画像引用:土地総合情報システム
土地総合情報システムの画面右側にある「地価公示 都道府県地価調査」を選択すると、以下の画面が表示され、公示地価が調べられるようになります。
画像引用:土地総合情報システム
上記画面から公示地価を調べる手順は、以下の通りです。
- 価格を調べたい土地がある都道府県と市区町村を選択
- 調査する価格の種類や調査したい年、土地の用途区分などを指定する
上記の手順で静岡県浜松市中区の公示地価を調べると、以下のように結果が表示されます。
画像引用:土地総合情報システム
また、公示地価は、一般財団法人 資産評価システム研究センターが運営する「全国地価マップ」で調べることも可能です。
実勢価格の調べ方
実勢価格についても、国土交通省の「土地総合情報システム」で検索が可能です。
土地総合情報システムの「不動産取引価格情報検索」には、国税庁が実施するアンケートの結果をもとにした土地の実勢価格が掲載されています。
画像引用:土地総合情報システム
上記の画面で実勢価格を調べる手順は以下の通りです。
- 画面左上の「時期を選ぶ」で取引時期を選択
- 「種類を選ぶ」で不動産の種類を選択
- 「地域を選ぶ」で不動産の住所を選択
- この条件で検索をクリック
上記の手順で、静岡県浜松市中区の実勢価格を調べると、以下のように表示されます。
画像引用:土地総合情報システム
不動産取引価格情報では、取引総額や面積、土地の形状だけでなく、建物の床面積、建築年数などを確認することも可能です。
また、手順4で地域を選ぶときに、都道府県や市区町村、地区を選択して「上記の地図を表示する」を押し、表示される地図から土地価格を調べるエリアを選択することも可能です。
路線価の調べ方
路線価は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で調べられます。
画像引用:財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
路線価を調べる手順は、以下のとおりです。
- 土地がある都道府県を選択
- 「路線価図」を選択
- 市区町村を選択
- 土地がある地名を探し、その横の路線価図ページ番号を選択
上記の手順で、静岡県浜松市中区を選択し、鍛冶町の横にある「17112」のページ番号を選択すると、以下のような路線価図が表示されます。
画像引用:財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
地図内の道路にある丸で囲まれた数字が路線価です。
基本的には、土地と接する道路の路線価に土地の面積(地積)をかけると、評価額(相続税評価額)を算出できます。
ただし、土地の形状や接している道路の状況などによって、補正が必要な場合があります。
路線価を用いて都市価格を計算する際は、最寄りの税務署や相続税専門の税理士などに相談すると安心でしょう。
なお、路線価は「全国地価マップ」でも調べられます。
固定資産税評価額の調べ方
固定資産税評価額は、毎年4〜6月ごろに市区町村から郵送される「固定資産税納税通知書」で確認できます。
納税通知書に添付された「固定資産税・都市計画税 課税明細書」の価格欄に、土地の固定資産税評価額が記載されているのが一般的です。
※自治体によって課税明細書のフォーマットは異なります
また、以下の方法でも固定資産税評価額を確認できます。
- 固定資産税評価証明書を取得する
- 固定資産課税台帳(名寄帳)を閲覧する
上記の方法で固定資産税評価額を確認する場合は、市区町村役場の担当窓口で申請手続きをします。
申請手続きの際は、申請書類を作成し、写真付き身分証明書(例:マイナンバーカード・運転免許証)などの書類を添付し、手数料を支払います。
土地の価格に影響する要因
土地の価格は一定ではなく、さまざまな要因で変動します。
ここでは、土地価格に影響する主な要因を解説します。
利便性
土地の周辺にスーパーやコンビニ、ドラッグストア、病院、学校など日常生活で利用することの多い店舗・施設がある場合は、高値で取り引きされる傾向にあります。
また、駅やバス停といった公共交通機関のアクセス状況も、土地価格に大きく影響します。
治安・災害リスク
土地の広さや形状などが同じである場合、治安のよいエリアよりも悪いエリアにある土地の方が、価格が低くなりやすいです。
また、地震や洪水、土砂崩れなどで被害に遭うリスクが高い土地も、価格が下がる可能性があります。
広さ・形状・方角
周辺の土地と比較して広すぎる土地や狭すぎる土地は、活用しにくい可能性があるため、売却価格が安くなるかもしれません。
また、旗竿地やL字型・三角型の土地、高低差がある土地といった不整形地や、西向きまたは北向きで日当たりがあまりよくない土地も、価格が安い傾向にあります。
一方で「同じ地域にある土地と比較してちょうどよい大きさである」「長方形や正方形などの整形地である」「南側や東側に開けており日当たりがよい」などに該当する土地は、高値での売却が期待できます。
不動産市況・経済情勢
土地価格は、不動産市況や経済情勢の影響を受けて変動することがあります。
例えば景気が後退しているときは、利便性や広さ、形状などの条件が良好な土地であったとしても、高値で売却するのは困難かもしれません。
不動産会社の担当者と相談をしたり、自分自身で情報収集したりして、土地を売却すべきタイミングを慎重に判断することが大切です。
土地価格の相場を調べる際に押さえておきたいポイント
土地価格の相場を調べる際は、以下の点を押さえておきましょう。
- 売出価格と成約価格は異なる
- 自分で調べた相場は参考程度にとらえる
- 複数の不動産会社に査定を依頼する
売出価格と成約価格は異なる
売出価格は物件の売却活動を始める際に設定する価格です。それに対し、成約価格は売主と買主が合意した価格を指します。
売出価格と成約価格は、必ずしも一致するとは限りません。
例えば、売買契約時に購入希望者から値下げ交渉が入ることを想定して、売出価格を希望売却価格の1.1倍程度に設定するケースがあります。
また、売出価格が相場からかけ離れてしまうと、安値で売ってしまったり、売却期間が長引いたりする可能性があります。
土地を売却する際は不動産会社とよく相談のうえ、相場をもとに適切な売出価格に設定することが大切です。
自分で調べた相場は参考程度に捉える
実際の不動産取引では、土地の形状や広さ、利便性、不動産市況、買主側の希望など、さまざまな条件で価格が変わります。
調べたとおりの価格で土地を売却できるとは限らないため、あくまで参考程度に考えておきましょう。
複数の不動産会社に査定を依頼する
土地を売却するときは、まず不動産会社に価格を査定してもらうのが一般的です。
不動産会社によって査定基準が異なるため、同じ土地でも査定結果が同額であるとは限りません。
1つの不動産会社でしか土地を査定していない場合、査定結果が適切かどうかを判断するのは困難でしょう。
複数の不動産会社に査定を依頼し、算出された金額を比較すると相場を把握しやすくなります。
また、査定結果の算出根拠や販売戦略などを聞き比べることで、買主探しを依頼する不動産会社を選びやすくなります。
【まとめ】土地価格を調べる際は不動産会社にも相談を
土地価格には「公示地価」「実勢価格」「路線価(相続税路線価)」「固定資産税評価額」の4種類があります。
土地価格の種類ごとの主な調査方法は、以下のとおりです。
主な調査方法 | |
公示地価 実勢価格 |
国土交通省「土地総合情報システム」 一般財団法人 資産評価システム研究センター「全国地価マップ」 |
路線価 (相続税路線価) |
国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 一般財団法人 資産評価システム研究センター「全国地価マップ」 |
固定資産税評価額 | 固定資産税納税通知書 固定資産税評価証明書 固定資産課税台帳(名寄帳) |
土地を売却する場合は、上記の方法に加えて不動産会社に査定を依頼するとよいでしょう。
複数の査定結果や担当者の説明を聞き比べることで、価格相場が把握しやすくなるだけでなく、信頼できる不動産会社も見つかりやすくなります。
(執筆者:品木 彰)