家を売却するときは、加入中の火災保険を解約する必要があります。
火災保険を解約しないと、売却後も引き続き契約が有効となってしまい、無駄に保険料を支払ってしまいかねません。
本記事では、家の売却時に火災保険の解約をすべき理由や手続きをするタイミングを解説します。
遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 恒吉 俊哉(つねよし しゅんや)
宅地建物取引士
家を売却すると火災保険はどうなるのか
火災保険は、建物や家財(家具・家電・衣服など)が火災で負った損害を補償する保険です。
名称に「火災」とありますが、落雷や爆発、風災、水災、盗難、破損・汚損なども補償の範囲に含めることが可能です。
家の売却時に火災保険を解約すると、保険料が戻ってくることがあります。
ただし、解約をしなければ補償は継続されてしまうため、家を売却するときは忘れずに火災保険の解約手続きをすることが大切です。
解約手続きをすると未経過分の保険料が戻ってくる
家を売却して火災保険を解約すると、残っている保険期間分に応じた保険料を返してもらえることがあります。
返還される保険料は「解約返戻金」といわれることもあります。
例えば、契約期間(保険期間)が10年である火災保険に加入していたとしましょう。
契約から6年が経過した時点で家を売却して火災保険を解約すると、残り4年分の保険料が返還されます。
途中解約で保険料が戻ってくるのは、保険会社によって異なりますが、契約期間が残り1か月以上ある場合に限られるのが一般的です。
2024年2月現在、火災保険の契約期間は最長5年ですが、過去には10年や35年といった長期の契約を結ぶことも可能でした。
家を売却することになり、火災保険を解約する場合は、残りの保険期間がどれだけあるかを確認しておきましょう。
解約手続きをしないと補償は継続される
家を売却しても、火災保険の契約が自動的に終了することはないため、契約者自身で解約の手続きをする必要があります。
火災保険を解約しないと、家の売却後も契約期間の満了まで補償は継続されます。
しかし、売却した家の所有権は新しい所有者へと移っており、保険の契約が有効であっても、補償対象となる建物や家財が火災などで損害を受けたときに保険金が支払われることはありません。
家の売却後も火災保険を契約し続けると、支払う保険料の分だけ損をしてしまうため、忘れずに解約の手続きをしましょう。
家の売却時に火災保険を解約するタイミングと方法
火災保険は、どのタイミングで解約をすると良いのでしょうか。
火災保険の解約方法とあわせて解説します。
解約のタイミングは家が引き渡されたあと
火災保険を解約する適切なタイミングは「物件が買主に引き渡されたあと」です。
不動産の売買契約を結んだ直後に火災保険を解約すると、物件が引き渡されるまでのあいだに発生した損害が補償されなくなるためです。
通常、不動産の売買契約を結んでから物件が買主に引き渡されるまで1か月以上かかります。
また、物件の所有権が売主から買主へと移転するのは、物件の引き渡しが行われるときです。
売買契約を結んだあとに、火災や台風、洪水などで建物が損害を負って利用できない状態になってしまうと、買主から契約を解除されるかもしれません。
損害の程度が軽微であったとしても、一般的には売主が修理代金を負担して建物を修繕することが、売買契約書で定められています。
損害が発生したとき、すでに火災保険を解約してしまっていると、保険金は支払われず、売主が修繕費用を全額自己負担することになるでしょう。
火災保険を解約するタイミングが早ければ早いほど戻ってくる保険料は多くなりますが、物件が買主に引き渡されるまでは契約を継続しておいた方が良いといえます。
解約をするときは損害保険会社に連絡する
火災保険を解約する際は、契約先である損害保険会社のコールセンターまたは代理店に連絡をしましょう。
連絡をすると、数日後に解約書類が自宅宛に郵送されてきます。
解約書類が届けられたら、必要事項を記入して本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)の写しなどを添付し、保険会社に返送しましょう。
解約書類には、保険の契約日や証券番号などを記載するのが一般的です。
そのため、火災保険の契約時に受け取った保険証券を手元に準備しておくとスムーズに解約書類を作成できます。
保険会社に提出した書類に不備がなければ、解約手続きは完了となり、解約返戻金があれば後日指定の口座に振り込まれます。
売却前に火災保険で修繕できる場所がないか確認しよう
家を売却するときは、火災保険の解約手続きをする前に、保険金の支払い対象となるような損傷箇所がないかを確認しておきましょう。
物件に修繕が必要な箇所があると、売却価格が下がってしまうかもしれません。
また、売買契約時に知らせていなかった損傷箇所が物件の引渡後に発覚すると、買主から修繕費用を請求される可能性もあります。
そのため、家を売却するときは建物の損傷箇所を確認し、必要に応じて修繕をしておくのが望ましいといえます。
建物の損傷箇所が保険金の支払い対象になれば、家の売却にともなう金銭的な負担を抑えることが可能です。
火災保険を解約する前に保険金を請求しても、解約返戻金が減ることはありません。
家を売却する際は、火災保険の保険金で修繕ができる箇所を探すことをおすすめします。
住み替えの場合は新しい火災保険の加入も忘れずに
加入している火災保険の補償を、新居に適用することはできません。家によって、構造や広さ、資産価値などが異なるためです。
そのため、住み替えをする場合は、新しく火災保険に加入する手続きが必要となります。
買い換えの場合は、物件の引き渡し日を補償の開始日にして火災保険を契約すると良いでしょう。
物件の引き渡し日より前の日付を補償開始日にしても、所有権が移転されていなければ、損害の発生時に保険金が支払われないためです。
保険会社によって、火災保険の商品内容や保険料の計算方法、割引制度の内容など、さまざまな点が異なります。
火災保険に新規で加入する際は、複数の保険会社から見積もりを取り寄せて比較すると良いでしょう。
見積もりの取り寄せや比較には時間がかかるため、新居が引き渡される1〜2か月前から検討を始めるのがおすすめです。
家の売却時に火災保険料以外で返ってくる金銭
家の売却時に火災保険の保険料以外で返ってくる可能性がある金銭には、以下のようなものがあります。
- 固定資産税・都市計画税
- 管理費・修繕積立金などの精算金
- 住宅ローンの保証料
固定資産税・都市計画税
固定資産税は、毎年1月1日時点で建物や土地などの固定資産を所有している人に課せられる税金です。
家が市街化区域内にあるときは、固定資産税に加えて都市計画税もかかります。
家を売却するとき、売主はすでに1年分の固定資産税や都市計画税を納めている状態です。
そのため家を売るとき、売主は買主から物件の引き渡し日から起算日(1月1日または4月1日)までの日割り(または月割り)計算した金額を支払ってもらえるのが一般的です。
土地や家などの資産には「固定資産税」が課され、所有者は毎年、資産がある市区町村に税金を納めなければなりません。 しかし年度途中で不動産を売却した場合「固定資産税は売主・買主どちらが払うの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか[…]
管理費・修繕積立金などの精算金
区分マンションの所有者は、管理費や修繕積立金を毎月支払っています。
そのため、住んでいたマンションを売却する場合、買主から引き渡し日から月末までの日割り計算した管理費や修繕積立金を支払ってもらえるのが一般的です。
また、駐車場代や駐輪場代、自治会費なども精算の対象となることがあります。
住宅ローンの保証料
保証料とは、住宅ローンの返済を滞納したときに残債を一括返済する保証会社に支払う手数料です。
金融機関によっては、住宅ローンを組む際に保証会社の利用が条件となっている場合があります。
保証会社を利用する場合、原則として保証料を支払わなければなりません。
保証料の支払方法は、基本的には「住宅ローンの金利に年0.2%程度を上乗せする」「借入時に一括で支払う」のどちらかです。
借入時に保証料を一括で支払っている場合、家の売却によって返済中の住宅ローンを完済したときに、残りの返済期間に応じた金額を返還してもらえます。
【まとめ】家を売却するときは火災保険の手続きを忘れずに
家を売却するとき、火災保険の解約手続きをしなければ補償は継続されてしまいます。
家が引き渡されたあとも、火災保険の保険料の支払いが発生すると損をしてしまうため、忘れずに解約手続きをしましょう。
火災保険の解約をするタイミングは、家を買主に引き渡して所有権が変更されたあとです。
また家を売りに出す前に、火災保険を使って修繕できる箇所がないかも探しておくと良いでしょう。
(執筆者:品木彰)