「土地を売却するためには、いくら費用がかかるのだろう?」
「売却手続きに必要な手数料や税金の控除について知りたい」
土地を売却する際には、さまざまな手数料や税金が発生します。
控除制度を利用することで税金を軽減できますが、複数の制度があり条件も異なります。
今回は土地売却に必要な費用や利用可能な税金控除、条件ごとの売却方法について説明します。
遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
土地売却に必要な費用
土地売却にかかる主な費用は次のとおりです。
不動産会社に支払う仲介手数料
不動産会社に土地売却の仲介を依頼した場合は、仲介手数料が発生します。
仲介手数料の上限は法律で定められています。
【売却価格400万円超の場合】
売却価格×3%+6万円+消費税
土地測量費用
土地を売却する際は、土地の境界線を明確にする必要があります。
土地家屋調査士に測量を依頼し、地積測量図や境界確認書を作成してもらう場合の費用相場は数十万円です。
抵当権抹消費用(抵当権が残っている場合)
抵当権が残っている場合、売却前に抵当権の抹消が必要です。
主な費用は次のとおりです。
- 登録免許税:不動産1個につき1,000円
- 登記情報代:事前調査用1件335円、登記官押印後の証明書用1件600円(オンライ請求・送付だと1件500円、オンライン請求・窓口交付だと1件480円)
- 郵送料:送る際の郵送料+返送料金(書留料金+100円)
抵当権抹消を司法書士に依頼する場合、手数料として1件あたり5,000〜15,000円ほどがかかります。
調査や工事費用(土壌汚染調査、水道引込工事など)
土地汚染調査は売却時に必須ではありませんが、汚染が見つかると土地の価値が下がり売れにくくなるため、事前に調査しておくと安心です。
また、水道管や蛇口までの経路に難がある場合には、水道引込工事を行っておくと、建物の工事に入りやすいでしょう。
周辺環境や土地の状態など条件により変わりますが、一般的な費用は次のとおりです。
- 土壌汚染調査:約5万円〜
- 水道引込工事:約30〜50万円
必要書類にかかる費用(登記関係書類や土地測量図など)
土地売却に必要な書類や資料には、取得費用がかかるものもあります。
- 本人確認資料(印鑑証明書・住民票):市町村役場での発行料(数百円)
- 登記済み権利書または登記識別情報:法務局への申請料(土地取得時に発行・無料)
- 固定資産税関連書類:納税通知書(無料)
- 土地測量図・境界確認書:法務局への申請料
- 建築確認済証、地盤調査報告書、購入時の契約書・重要事項説明書など:土地取得時に発行(無料)
土地売却時に発生する税金
土地売却時に発生する税金には、次のものがあります。
- 売買契約の印紙税
- 登録免許税(所有権移転登記による)
- 譲渡所得税・住民税
土地を買ったときの価格よりも高く売れた際の利益は譲渡所得と呼ばれ、所得税や住民税の課税対象となります。
土地などの不動産は給与など他の所得と合算せず、区別されて税率が決定します。
譲渡所得の課税計算
譲渡所得は次の式で算出します。
「譲渡所得=収入金額-取得費-譲渡費用(-特別控除額)」
- 収入金額:土地の売却代金
- 取得費:土地購入時の代金や費用(印紙税、登録免許税、仲介手数料など)
- 譲渡費用:土地売却時の代金や費用(印紙税、仲介手数料、名義書換料、建物取り壊し費用など)
譲渡所得の課税率は、土地の所有期間によって異なります
所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315% | 5% |
(引用元:国税庁ホームページ)※上記税率には復興特別所得税が合算されています。
また、所有期間が10年以上の場合の軽減税率の特例によっても税率が変わります。
所有期間 | 課税譲渡所得額 | 所得税率 | 住民税率 | |
10年超所有軽減税率の特例 | 10年超 | 6000万円以下の部分 | 10.21% | 4% |
6,000万円超を超える部分 | 15.315% | 5% |
(引用元:国税庁ホームページ)※上記税率には復興特別所得税が合算されています。
所有期間は「売却した年の1月1日時点」で判定されます。
例えばある年の4月1日に購入した土地を5年後の5月1日に売却すると、実際の所有期間は5年超でも、売却した年の1月1日時点では5年以下となり、短期譲渡所得として課税されます。
土地売却で利用できる控除
土地の売却時に利用できる税金控除には、下記の種類があげられます。
- 公共事業目的での売却へ5,000万円特別控除
- 居住用財産(マイホーム)の3,000万円特別控除
- 特定土地区画整理事業などによる売却への2,000万円特別控除
- 特定住宅地造成事業などによる売却への1,500万円特別控除
- 平成21年・22年に取得した土地の売却での1,000万円特別控除
- 農地保有の合理化などでの売却での800万円特別控除
特別控除を受けるにあたり、特例ごとの譲渡所得が限度額に設定されています。
また、その年の譲渡所得に対して合計5,000万円が上限です。
上記の特別控除は併用可能なものもあり、上から順に控除を行うことになっています。
それぞれの特別控除を受けるためには、決められた条件を満たす必要があるので、申請前に確認するかプロの不動産会社に相談しましょう。
物件の条件別の売却方法と費用
条件ごとの売却方法や費用について、具体的にみていきましょう。
古家付き土地の売却方法と費用
古家付き土地とは、古い家が建っている土地のことで、築30年以上の一戸建てがある土地を指しています。
国内の不動産市場では、築30年を超える一戸建ては市場価値がゼロといわれており、売却のために建物を解体し更地にするのが一般的です。
更地にするための費用として、古家解体費(30坪の住宅なら木造住宅で約90万円ほど)と地盤改良費(約60万〜200万円ほど)がかかります。
古家付きのままで売却するメリットもありますが、多くの場合、売却前にリフォーム費用が発生します。
耐震補強工事などの条件により異なりますが、相場は約800〜2,000万円ほどです。
【更地で売る場合のメリット】
- 希少性が高まり売れやすくなる
- 建物の欠陥による契約不適合責任が発生しない
- 買主がすぐ建物を建てられるとアピールしやすい
【古家付きのまま売る場合のメリット】
- 住むイメージがしやすい
- 住宅ローンの審査に比較的通りやすい
- 固定資産税や都市計画税が軽減できる
- 解体や撤去などの手配が不要
両者のメリットや費用を比較した上で、どのように売却するかを決定しましょう。
相続した土地の売却方法と費用
相続した土地の売却では「取得費加算の特例」が利用できる場合があります。
「取得費加算の特例」は、土地を相続してから3年10ヶ月以内に売却すると、相続税のうち売却した土地への税額分を取得費として加算できる仕組みです。
特例を受けられる要件は次のとおりです。
- 相続などにより財産を取得している
- 財産を取得した際、相続税が課税されている
- 相続開始した日の翌日から数えて3年10ヶ月以内の売却である
相続した土地が自宅から離れた場所にある場合、売却を依頼する不動産会社選びが重要です。
その土地周辺の不動産事情に詳しく信頼できる不動産会社を探しましょう。
不動産会社を通じて売買契約が成立した場合、仲介手数料が発生します。
売却手続きのために出張依頼をした場合は、別途交通費がかかる場合もあります。
農地の売却方法と費用・税金
農地を売却するには農地のまま売却する方法と、転用してから売却する方法の2つがあります。
どちらも地域の農業委員会の許可が必要です。
農地のまま売却する場合は近隣農家などから買主を探す、あるいは地域の農業関連機関の紹介で買主を見つけましょう。
農地としての利用予定がない場合は、宅地などへ転用してから売却するやり方が推奨されていますが、農地法などの条件をクリアする必要があります。
転用後は農地売却に実績のある不動産会社に依頼しましょう。
農地を売却する場合に発生する主な費用や税金には、下記のものがあります。
- 登録免許税(所有権移転登記にともなう)
- 司法書士への報酬
- 売買契約時の印紙税(転用時)
- 不動産会社の仲介手数料(転用時)
農地売却による売却益には所得税や住民税が発生します。
通常の譲渡所得税と同じ税率で計算しますが、相続した農地の場合は親の所有期間も引き継ぐことになり、所有期間5年以上の長期譲渡所得となるでしょう。
まとめ
土地を売却する際にはさまざまな費用がかかりますが、適切な特別控除などを利用すれば節税や費用の削減ができます。
できるだけ高い価格で土地を売るためには、その土地周辺の不動産市場に詳しい不動産会社に査定を依頼するのがポイントです。
土地売却を検討している方は、地域の不動産事情に精通した不動産会社に相談しましょう。