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不動産を売却するときの注意点とは?契約の種類や流れも解説

「不動産売却の契約を結ぶときはどの点に注意すればよいだろうか」と悩む人は多いのではないでしょうか。

不動産売却の際には「売買契約」と「媒介契約」の2つの契約が関係してきます。

本記事では、不動産を売却するときに押さえておきたい契約時の主な注意点や、契約の種類、契約から引き渡しまでの流れを解説します。

遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 恒吉 俊哉(つねよし しゅんや)


宅地建物取引士

不動産売却の際に取り交わす2つの契約

不動産売却には、2種類の契約が関係してきます。

  • 売買契約:売主と買主が取り交わす契約
  • 媒介契約:売主が売却を依頼する不動産会社と取り交わす契約

不動産の取引では大きな資産の移転がともなうため、それぞれの契約の意味や注意点を把握していないと、多額の違約金が生じたり買主とのトラブルに発展したりするケースがあります。

不動産売却の売買契約における主な注意点

不動産の売買契約における主な注意点は、下記のとおりです。

  • 契約を結ぶと簡単にはキャンセルできない
  • 契約の締結時に手付金を支払うのが一般的
  • 売主は契約不適合責任を負うことがある

売買契約を結ぶと簡単にはキャンセルできない

不動産売買の売買契約は、1度締結すると簡単には解約できません

契約を交わす前であれば、基本的にペナルティなしでキャンセルできますが、正式に書面を取り交わしたあとでは
違約金が発生することがあります。

契約の解除に関するルールは、不動産の売買契約書に記載されるのが一般的です。

不動産取引における契約解除の種類は、以下のとおりです。

手付解除 手付金を放棄または倍額を返還することで不動産の売買契約を解除できること
危険負担による解除 台風や地震、火災などで物件が大きく損傷して多額の修理費用が発生する場合、売主は無条件で契約を解除できること
契約違反による解除 売主と買主のどちらかが契約に違反したときに、違約金を支払うことで契約を解除できること
契約不適合責任にもとづく解除 建物に重大な欠陥があり、契約の目的が果たせないときに買主が無条件で契約を解除できること
特約による解除 売買契約書に記載される特約の条項に該当すると解除できること
買主が住宅ローンの本審査に通過できなかったときの「ローン特約」など
合意による解除 売主と買主が話し合い、お互いに承諾して契約を終了させること

不動産を売却するときは、契約を結んだあとに契約を解除できる条件をよく確認することが大切です。

売買契約の締結時に手付金を支払うのが一般的

不動産売買契約を結ぶ際には、買主が売主に手付金を支払うのが一般的です。
手付金の用途には「解約手付」「違約手付」の2種類があります。

  • 解約手付手付金の受け渡しを行うことで買主と売主に解約する権利を与えること
  • 違約手付買主の要因によって契約違反が生じた際に手付金が違約金として没収されること

不動産売買の多くでは手付金が解約手付として扱われます。

不動産の売買契約を結んだあとに、買主側の都合で契約がキャンセルされる場合、売主は手付金を返す必要はありません。

売主側の都合で売買契約を解除するときは、支払われた手付金の2倍の金額を買主に支払う必要があります。

手付金の金額は売買代金の5〜10%が相場です。
例えば、不動産の売買代金が4,000万円の場合、手付金の金額は200万〜400万円が目安となります。

手付金の扱いや金額などは売買契約書で細かく定められているため、よく確認をしたうえで契約を結びましょう。

売主は契約不適合責任を負うことがある

契約不適合責任は、引き渡した不動産が契約内容と異なる場合に、売主がその責任を負うというものです。

例えば、引き渡した物件に雨漏りやシロアリ被害など、売買契約時に知らされていなかった
瑕疵(欠陥)が発覚した場合、買主は売主に対して修繕を求めることができます。

売主が修繕に応じないときは、売買代金の減額や契約の解除、損害賠償の請求などを求めることも可能です。

不動産売却時のトラブルを防ぐためには、売主は物件の状態を正確に把握し、買主に事実をありのままに伝えることが大切です。

引き渡したあとに隠れた瑕疵(欠陥)が発覚しないよう、事前に専門家による調査をするのも1つの方法です。

また、契約書には物件の状況や契約不適合責任の範囲と期間などを明記しましょう。

万が一、問題が発生した際の対応方法や、損害賠償の範囲・金額も定めておくと、深刻なトラブルに発展する事態を避けやすくなります。

不動産売却の媒介契約の種類

不動産会社に不動産の売却を依頼する場合は「媒介契約」を締結します。

媒介契約は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。
それぞれの特徴は、下記のとおりです。

一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
他の不動産会社と同時に契約できるか × ×
自分で買主を探して
直接取引できるか
×
契約期間 (規定なし) 3か月以内 3か月以内
レインズ※への登録 (規定なし) 契約から7日以内 契約から5日以内
不動産会社からの
報告の頻度
(規定なし) 2週間に1回以上 1週間に1回以上

※レインズ(Real Estate Information Network System、REINS):全国の不動産会社が閲覧できるネットワークシステム

一般媒介契約

一般媒介契約の特徴は、複数の不動産会社と同時に契約を結べる点です。

自己発見取引もできるため、親族や友人など買主候補を自分で見つけた場合、不動産会社を仲介させずに直接契約することもできます。

一方で、不動産会社側は他社に最終的な契約を取られてしまうリスクを抱えることになるため、積極的に販売活動をしてくれない場合もあります。

専任媒介契約

専任媒介契約は、1社としか締結できない媒介契約です。

複数の不動産会社とは契約を結べない代わりに、売却する物件の情報は必ずレインズに登録され、2週間に1回以上の活動状況の報告をしてもらえます。

自己発見取引もできるため、一般媒介契約と同様に自分で買主を見つけて直接取引することが可能です。

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約も、1社とのみ結べる媒介契約ですが「レインズの登録は契約から5日以内」「活動状況の報告は1週間に1回以上」といった条件があり、積極的な売却活動が期待できる契約です。

ただし、自己発見取引ができない点は専任媒介契約との大きな違いです。

媒介契約後に売主自身が買主を見つけたとしても、売買契約を結ぶときは不動産会社の仲介が必要なため、必ず仲介手数料を支払わなければなりません。

不動産の売買契約を結ぶ流れ

不動産の売買契約を結ぶときの流れは、以下のとおりです。

1. 売却の準備

不動産を売却する際は、まず登記事項証明書(登記簿謄本)や建築確認済証、固定資産税納税通知書などの必要書類をそろえましょう。

住宅ローンを返済している場合は、借入先の金融機関から毎年送付される返済予定表や契約時の書類などで残高を把握することも重要です。

基本的に住宅ローンを完済しなければ不動産は売却できないため、残債を正確に把握して「いくらで売却すべきなのか」を明確にする必要があります。

2. 不動産会社に査定をしてもらう

次に、不動産会社に査定を依頼して、おおよその売却価格を把握します。
1社だけではなく複数の不動産会社に査定を依頼し、不動産の価格相場を把握しやすくするとよいでしょう。

また、仲介を依頼する不動産会社を選ぶうえでも、不動産査定は重要となります。

不動産会社によって得意分野や売却活動の方針は異なります。
査定額やその算出根拠、売却活動を始めたあとの進め方などを聞き比べ、わかりやすく丁寧に、納得ができる説明をしてくれる不動産会社に仲介を依頼するとよいでしょう。

3. 不動産会社と媒介契約を結び売却活動を開始

不動産会社と媒介契約を結んで売却活動を始めます。

売却活動を始めるときは、査定金額や価格相場なども踏まえて合理的な売り出し価格を設定しましょう。

売り出し価格が高すぎると売れ残りやすくなり、低すぎると損をする可能性があるため、周辺相場をチェックしながら不動産会社と相談して決めるのがおすすめです。

売却活動が始まったあとは、いつ内覧の希望があっても対応できるように清掃や整理整頓を心がけ、清潔な状態にしておくことが大切です。

4. 買主と不動産売買契約を結ぶ

買主が見つかり、売却価格や引き渡し時期などを話し合います。
折り合いがついたら、不動産売買契約書を取り交わします。

売買契約書には、売却価格や支払い方法、引き渡し日、契約解除の条件などが細かく記載されるため、抜けや漏れ、誤りがないか入念に確認しましょう。

また契約の際には、不動産会社の担当者(宅地建物取引事業者)から重要事項説明が行われます。

重要事項説明が終わると、売主と買主が売買契約書に署名・押印します。

5. 物件を引き渡す

引き渡し日当日は、残代金の決済と物件の鍵や必要書類の受け渡しが行われます。

その後、買主側の司法書士が法務局へ向かい所有権移転登記をすることで、不動産の名義が変更されます。

【まとめ】不動産を売却する際は契約時の注意点を押さえよう

不動産の売買契約を結ぶと簡単には解約できないため、契約書を取り交わす前に内容をよく確認することが重要です。

また、契約の締結時には売買代金の5〜10%程度の手付金を支払うのが一般的です。
買主側の都合で解約する場合は手付金を返す必要はありませんが、売主側の都合で解約する際は手付金の倍額を支払う必要があります。

売主には、契約不適合責任がある点にも注意が必要です。
引き渡し後に雨漏りやシロアリ被害などが発覚した場合、修繕や損害賠償を求められる可能性があります。

必要に応じて専門家による調査を行い、物件の状態を正確に把握して買主に伝えたうえで契約を結ぶことが重要です。
(執筆者:品木 彰)

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