マンション売却の際は、まず不動産会社に査定をしてもらい「いくらで売れる可能性があるのか」を調べます。
査定の注意点を知らないと、売り出し価格の設定や買主探しを依頼する不動産会社の選定を誤り、失敗してしまうかもしれません。
本記事では、マンション査定の種類や主な注意点、失敗を防ぐためのポイントを詳しく解説します。
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遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
マンション査定の基礎知識
不動産査定とは、不動産の金銭的な価値を算出するサービスのことです。
不動産を売却するときは、不動産会社に査定をしてもらい、売り出し価格を決めて買主探しを始めます。
まずは、査定の種類や査定額に影響する要素をみていきましょう。
査定方法の種類
不動産の査定方法には「机上査定(簡易査定)」「訪問査定」の種類があります。
机上査定は、築年数や専有面積、最寄り駅からの距離などの基本情報をもとに、おおよその価格を算定する方法です。
訪問査定は、不動産会社の担当者が物件を直接確認し、設備や管理状況などを詳細にチェックして査定価格を提示する方法です。
建物の状態や周辺環境など、机上査定では把握しにくい点も考慮されるため、より正確な査定結果を知ることができます。
マンションを売却するときは、複数の不動産会社に机上査定を依頼し、結果を比較検討して数社に絞り、訪問査定をしてもらうとよいでしょう。
手軽にマンションの予想売却を知りたいときは「AI査定」を利用するのも1つの方法です。AI査定は、物件の基本情報や売却事例などのデータをもとにAI(人工知能)が査定する方法です。
インターネットで物件の所在地や種類などの情報を入力すると、AIが短時間で査定価格を算出してくれるため、すぐにマンションの価格を知りたいときに役立ちます。
机上査定とは、不動産会社が売却予定の不動産を訪問せずにデータのみで価格を査定する方法です。 実際に不動産を訪問して査定する「訪問査定」と比較して、売却価格の目安を手軽に知ることができる一方で、査定の精度は劣る傾向にあります。 […]
査定ではどこを見られるのか
マンションの査定では、以下のとおり築年数や建物の構造などが評価されます。
- 立地条件:駅からの距離・買い物施設や学校などの周辺環境
- 室内の状態:損傷や汚れ、設備の状態
- 築年数・耐震基準の適合
- 管理状況:共用部分の状態・修繕積立金の状況
- 住戸の階数や間取り、日当たり、風通しなど
査定時に評価されるポイントを把握することで、不動産会社が説明する査定額の算出根拠を理解しやすくなるでしょう。
マンション査定に関する注意点
マンション査定に関する主な注意点は、以下のとおりです。
- 複数の不動産会社に査定してもらう
- 査定額が高い不動産会社がよいわけではない
- 査定の根拠は必ず確認する
- 自分自身でも相場を調べる
- 最低限の清掃はする
- 査定の前に自己判断でリフォームをしない
複数の不動産会社に査定をしてもらう
マンションの査定額は、不動産会社によって異なる場合があります。これは、各不動産会社の査定基準や把握している地域の情報などが異なるためです。
1社だけに査定を依頼すると、提示された金額が適正なのかを判断するのが難しくなります。
マンションを売却するときは、複数の不動産会社に査定を依頼し、結果を比較することで妥当な価格や相場を把握しやすくなります。
査定の根拠は必ず確認する
不動産会社に査定を依頼したときは、査定額を比較するだけでなく、査定根拠も聞き比べることが大切です。
査定の根拠があいまいであり、説明もわかりにくい不動産会社に売却を依頼すると「買い手がなかなか見つからない」「相場よりも著しく安値で売ってしまった」などと失敗をする可能性があります。
一方、査定額の算出根拠が明確であり、それをわかりやすく納得のできる説明をしてくれる不動産会社であれば、信頼して売却を任せやすいでしょう。
査定額が高い不動産会社がよいわけではない
提示された査定額は、あくまで不動産会社が算出した予想売却価格であり、必ずその金額で売却できるとは限りません。
相場よりも著しく高く算出された査定額をもとに売り出し価格を設定すると、買い手が付かずに売却活動が長引き、結果的に値下げを繰り返すことになる可能性があります。
査定額が高い不動産会社に依頼をしても、高値で売れる保証はありません。
査定額の高さだけでなく、相場と比較して妥当かどうかも考慮して、売却を依頼する不動産会社を選びましょう。
自分自身でも相場を調べる
売主自身が相場を把握していないと、不動産会社が提示した査定額が適正かどうか判断できません。
査定を依頼する前に、不動産ポータルサイトを利用し近隣で売りに出ているマンションの価格帯をチェックし、価格相場を把握するとよいでしょう。
築年数や専有面積、最寄り駅からの距離の条件が似た物件の売り出し価格を確認すると、おおまかな相場感がつかめます。
また、不動産流通機構の「レインズマーケットインフォメーション」や国土交通省の「不動産情報ライブラリ」でも価格相場を調べることができます。
最低限の清掃はする
訪問査定を受けるときは、室内を清掃して清潔な状態にしておくことが大切です。
清掃をしても査定額が極端に上昇するわけではありませんが、不動産会社に「丁寧に管理されている」というよい印象を与えられる可能性があります。
また、室内が過度に汚れていたり物が散乱していたりすると、不動産会社からの評価を下げてしまうかもしれません。
とくに、キッチンや浴室、トイレなどの水回りや玄関の印象は査定に大きく影響するポイントであるため、目立つ汚れが付いていないよう入念に掃除しておくとよいでしょう。
査定の前に自己判断でリフォームをしない
「リフォームをすれば高く売れるかもしれない」と考え、査定前に自己判断でリフォーム工事をする方が一定数います。
しかし、費用をかけてリフォームをしたからといって、それに見合うだけの効果があるとは限りません。
とくに間取りの変更や設備の入れ替えなどの大掛かりな工事をすると、マンションの購入を考えている人の希望に合わず、かえって売れにくくなることもあります。
リフォームをしなくても、ハウスクリーニングや軽微な修繕などで売れやすくなるケースもあります。
リフォームや修繕をしようと考えている方は、不動産会社に実施すべきか相談するとよいでしょう。
マンション売却の失敗を防ぐポイント
マンション売却の失敗を防ぐためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
- 瑕疵(かし)を隠さない
- 売り出し価格を適切に設定する
- マンション売却が得意な不動産会社を選ぶ
瑕疵(かし)を隠さない
マンションに限らず不動産を売却するときは、物件に何らかの不具合(瑕疵)がある場合、契約を結ぶ前に買主に伝えることが大切です。
不動産の売買における瑕疵には、主に以下の4種類があります。
心理的瑕疵 | 詳細 |
---|---|
心理的瑕疵 | 過去の事件・事故(自殺、殺人、孤独死、火災など)により、住む人に心理的抵抗を与える瑕疵 |
物理的瑕疵 | 雨漏り、シロアリ被害、地盤沈下などの物理的な欠陥 |
環境的瑕疵 | 周辺環境の問題(騒音、振動、悪臭、嫌悪施設の存在)により、居住環境に影響を及ぼす瑕疵 |
法律的瑕疵 | 建築 |
瑕疵を隠したまま売却すると「契約不適合責任」により引渡し後に買主とトラブルが生じ、修繕や費用の支払い、代金の減額、損害賠償などを請求される可能性があります。
マンションを売却するときは、事前に瑕疵の有無を調べておきましょう。
もし瑕疵があるときは、不動産会社に事情を伝え、不動産の売買契約書にも明記することが大切です。
不動産を売却するときは「契約不適合責任」を理解することが重要です。 契約不適合責任の理解が不足していると、不動産を買主に引き渡したあとに建物の修繕や損害賠償などを請求されるリスクが生じる可能性があるためです。 本記事では、契[…]
売り出し価格を適切に設定する
マンションを売り出すときに、相場よりも高い売り出し価格を設定してしまうと、購入希望者から敬遠されて売却が長引く可能性があります。
一方で売り出し価格を安くしすぎると、本来の価値よりも低い価格で売却して、損をしてしまうかもしれません。
そのため、マンションを売却するときは、過去の成約事例や不動産会社の査定結果などをもとに、周辺相場と物件の状態も踏まえて適切な売り出し価格にすることが大切です。
また、売買契約を結ぶ前に買主から値下げ交渉されることも多いため、希望する売却価格よりも少し高めに設定しておくとよいでしょう。
マンション売却が得意な不動産会社を選ぶ
不動産会社によって得意な分野が異なります。
マンションを売却するのであれば、マンション売却の実績が豊富で信頼できる不動産会社に売却を依頼しましょう。
売却予定のマンションがあるエリアの情報に精通しており、知識が豊富でノウハウも蓄積されている不動産会社に依頼をすることで、高値で売却できる可能性が高まります。
信頼できる不動産会社を探すときは、複数の不動産会社に査定を依頼し、査定金額と算出の根拠とあわせて、売却の戦略を聞き比べるとよいでしょう。
物件の強みを正確に把握し、広告に掲載する内容や内覧時にアピールすべきポイントなどを提案してくれる不動産会社であれば、安心して買主探しを任せられます。
また、担当者の言葉遣いや対応の丁寧さ、公式サイトに掲載される売却実績なども確認することで、信頼できる不動産会社をより選びやすくなります。
【まとめ】マンション売却の際は注意点を把握しよう
マンションを売却する際は、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。
また、不動産会社を選ぶときは、査定額の高さを重視するのではなく、売主自身も相場を把握したうえで算出の根拠をよく聞き比べることも重要です。
査定を受ける際は、事前に室内を清掃しておくとよいでしょう。
ただし、自己判断でリフォームはせず、不動産会社と相談して実施すべきか慎重に検討することが大切です。
(執筆者:品木 彰)