売買仲介を行うプロの不動産会社に依頼をして、売却の代行やサポートを行ってもらうのが一般的です。
このときに売主と不動産会社が交わす契約を、「媒介契約」といいます。
この媒介契約に、いくつかの種類があることをご存知でしたでしょうか?有利にも不利にもなり得る媒介契約の種類について、それぞれのメリットやデメリットを簡潔にまとめて説明します。
遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
不動産売却の流れと媒介契約
不動産売却全体の流れの中で、媒介契約は本格的なスタート地点のような位置づけです。
どの不動産会社と契約するかによって、売却の結果は大きく異なってきます。
売却の流れの全体像を知ることと、信頼できる不動産会社を選ぶ方法を知ることは、売却を成功させるうえでいずれもきわめて大事なことです。
媒介契約の種類
不動産会社に売却の仲介を依頼して契約するのが「媒介契約」であり、同時に複数の不動産会社と契約できるかどうかや、契約期間の違いなどによって、次の3種類に分かれています。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
まずはそれぞれの違いを、表で確認してみましょう。
一般媒介 契約 |
専任媒介 契約 |
専属専任 媒介契約 |
|
---|---|---|---|
他の不動産会社と 同時に契約できるか |
○ | × | × |
自分で買主を探して 直接取引できるか |
○ | ○ | × |
契約期間 | (規定なし) | 3か月以内 | 3か月以内 |
REINS※への登録 | (規定なし) | 契約から 7日以内 |
契約から 5日以内 |
不動産会社からの 報告の頻度 |
(規定なし) | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
※REINSとは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称であり、宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣に指定された組織である全国4つの指定流通機構が運営している、全国不動産情報データベースのようなものです。
一般媒介→専任媒介→専属専任媒介の順に、売主に対する制限と不動産会社の義務がそれぞれ厳しくなります。
「専任」と「専属専任」は若干の違いはあれどもほとんど同じような内容でありますが、一方で「一般」は他の不動産会社と同時に契約できるという大きな違いがあります。
それぞれの特徴とメリット・デメリットを、もう少し詳しく見ていきましょう。
一般媒介契約の特徴・メリット・デメリット
最大の特徴は、複数の不動産会社と同時に契約を結ぶことができる点です。
また、親族など買主候補を自分で見つけた場合、不動産会社を仲介させずに自身で直接契約すること(自己発見取引という)もできます。
不動産会社選びで一社に絞り込むことができなかったり、売却物件が人気エリアにあって各社に競争させたかったりするときに都合が良いでしょう。
複数の会社に営業させて、最終的にもっとも高い数字を実現したところに仲介を依頼するということが可能です。
一方で、不動産会社側からすれば「頑張って営業しても他社に最終的な契約を取られてしまう」というリスクを抱えることになるため、積極的に販売活動を行ってくれない懸念があります。
また、REINSへの登録や活動報告について法による定めがないため、他の契約に比べて売主が状況を把握しづらいというデメリットがあります。
(専属)専任媒介契約の特徴・メリット・デメリット
この2つの契約を選んだ場合、複数の不動産会社と同時契約をすることはできず、1社に絞り込む必要があります。
また、「専任」の場合は自己発見取引(自分で買主を見つけて直接取引すること)が認められますが、「専属専任」で契約した場合は、例え媒介契約後に自分で買主を見つけたとしても、売買契約には不動産会社を仲介させて、仲介手数料を支払わなければなりません。
売主が強く拘束される一方、不動産会社が積極的に活動してくれる、報告義務があるので活動の状況が見えやすい、必ずREINSに登録されるので物件情報の露出が高まる、不動産会社が付加サービスを提供してくれる、などの大きなメリットがあります。
まとめ
不動産会社と交わす媒介契約の種類について説明しました。
インターネットなどで調べると「まずは専任媒介契約を結ぼう」と言われていることが多いのですが、いずれかの契約が優れていたり劣っていたりするということはなく、状況に合わせて最適なものを選ぶ必要があると考えておきましょう。
それぞれの契約のメリットやデメリットを説明せず、自社の都合を押し付けてくるような不動産会社があれば、注意しなければなりません。
契約まわりは特に専門的な内容になりがちで、個人では判断が難しい領域になってきます。
やはり信頼できる不動産会社に相談して、ベストな提案をもらうことが一番の方法でしょう。