マンション売却を検討している人のなかには、できるだけ早く売りたいと考える人も多いのではないでしょうか?
しかし売却の条件によっては買い手が決まらず、時間がかかってしまうこともあります。
この記事では、マンション売却に必要な期間を、売却の流れに沿って解説します。
さらに売却期間が長引く理由や、短期で売却するためのポイントも紹介します。
宅地建物取引士
マンション売却にかかる期間は3か月が目安
マンションをはじめとした不動産を売却するときは、不動産会社と契約を結んで物件情報をレインズに登録し、買主を探してもらうのが一般的です。
レインズは、不動産流通機構が運営するコンピューターネットワークシステムであり、全国で売りに出されている物件情報が掲載されています。
公益財団法人東日本不動産流通機構の発表によると、中古マンションの物件情報がレインズに登録されてから成約にいたるまでの期間は、以下のとおりです。
- 2018年:78.8日
- 2019年:81.7日
- 2020年:88.3日
- 2021年:74.7日
※出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2021)」
レインズの発表結果によると、マンション売却にかかる期間は、3か月前後が目安といえます。
ただし上記の調査結果はあくまで平均値であり、売却する不動産の条件によっては、半年以上かかる場合もあります。
マンション売却の流れと所要期間
マンション売却の流れと所要期間の目安は下記のようになっています。
売却の流れ | 目安所要期間 |
不動産の売却査定 | 1週間〜1か月ほど |
不動産会社選び(媒介契約) | |
売却プラン決定(売却活動準備) | 1週間前後 |
売却活動 | 1〜3か月ほど (売れるまで) |
内覧対応 | |
希望者との条件交渉対応 | |
売買契約 | 1~2週間ほど |
決済・引き渡し | 1〜2か月ほど |
マンションを売却する場合は、3か月以内に完了するケースも見られます。
しかしー戸建てや土地の売却は、隣地境界線の確認が必要なこともあります。測量を行い境界線が明確になってから売却活動を始めるため、マンションよりも成約にいたるまでの時間がかかりやすいです。
公益財団法人東日本不動産流通機構によると、レインズへの登録から成約までの平均日数は、中古戸建て住宅が101.2日、土地が106.2日となっています。
中古マンションの場合、登録から平均74.7日で成約しているため、調査結果をみても中古戸建て住宅と土地の売却期間は長い傾向にあることがわかります。
※出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2021)」
マンションの売却査定
まずは不動産会社に、マンションの売却価格を査定してもらいましょう。
複数の不動産会社に査定してもらうことで、売却価格の相場を把握しやすくなります。
またマンションの査定結果とその根拠を確認することで、買主探しを依頼する不動産会社を選びやすくなります。
マンションの売却が得意な不動産会社ほど、査定結果に明確な根拠があるだけでなく、売却の戦略も具体的に提案してくれる傾向にあるためです。
不動産会社選び(媒介契約)
複数の不動産会社に査定を依頼し、結果と根拠を各社の担当者から聞いて、売却を依頼する不動産会社を選びましょう。
不動産会社が決まったら、媒介契約を結びます。
媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、それぞれ契約期間やレインズへの登録義務の有無などが異なります。
媒介契約の種類や特徴については、以下の記事をご覧ください。
売却プラン検討・売却活動準備
不動産会社と契約を結んだあとは、担当者と相談のうえマンションの売出価格の設定や販促チラシの作成など売却準備を始めます。
なかでも特に重要なのが、マンションの売出価格の設定です。
マンションの売出価格が相場よりも著しく高いと、売れ残りやすくなります。
相場よりも低く設定すると、安値での売却となるかもしれません。
周辺にある立地や間取り、床面積などの条件が似た物件の価格相場をもとに、マンションの売出価格を適切に設定しましょう。
売却活動・内覧対応
準備が整ったら、売却活動を始めて購入希望者を探します。
売却活動の開始後は、不動産会社の担当者と定期的に連絡を取り、マンションの購入を検討している人からの問い合わせの有無や件数を確認し、状況把握に努めましょう。
また売却期間中は、いつ内覧希望者が現れても対応できるように、日ごろから室内は整理整頓をし清潔に保つことが大切です。
売主の印象もマンションの成約に影響します。
内覧に訪れた人から質問を受けたときは丁寧に回答し、少しでも良い印象を残せるように心がけましょう。
希望者との条件交渉対応
購入希望者から価格や引っ越し日時、設備の修繕などを交渉されることがあります。
できる限り要望を受け入れたほうが、成約はしやすくなるでしょう。
しかし受け入れすぎると、売却価格が想定よりも大きく下がり損をすることもあります。
そこで事前に売却価格の下限を決めておくことが大切です。
売買契約
マンションの売買条件がまとまったら、売主と買主のあいだで売買契約を締結します。
売買契約を結ぶタイミングでは、契約内容や各種条件が確認されたうえで、宅地建物取引士(宅建士)からの重要事項説明も行われます。
契約条件に同意できたら、売買契約書に署名・捺印をして契約は完了です。
売買契約を結ぶときは、買主から手付金としてマンションの売却代金の一部が支払われるのが一般的です。
売買契約の締結から引き渡しまでの間に買主の都合で契約がキャンセルとなった場合、支払われた手付金を返還する必要はありません。
売主の都合で契約をキャンセルする場合は、手付金の2倍の金額を買主に支払います。
決済・引き渡し
マンションの引渡し日には、売主と買主だけでなく、不動産会社の担当者や買主、住宅ローンを契約した金融機関の担当者、司法書士が同じ場所に集まります。
これはマンションの引渡しと同時に、契約時に受け取った手付金を除いた残りの代金決済も行われるのが一般的であるためです。
残代金を決済するときに住宅ローンが残っていた場合は、買主から受け取った代金で住宅ローンを一括返済します。
その後、司法書士に依頼し、法務局で「抵当権抹消登記」をするのが一般的な流れです。
売却期間が長引く理由
マンション売却が長引いてしまう理由には、どのようなものがあるのでしょうか。
売り出し価格が適正ではない
マンションの売出価格が周辺相場と比較して著しく高い場合、売れ残りによって売却期間が長引きやすくなります。
売却開始から3ヶ月が経過しても購入希望者が現れない場合は、価格を値下げすることになるでしょう。
また頻繁に値下げを繰り返していると、マンションの購入を検討している人や買主を仲介する不動産会社の担当者から「もう少し待てばさらに価格が下がるかもしれない」と思われて、さらに売却期間が長引くことがあります。
築年数が経っている
マンションは、築年数の経過にしたがって建物部分や設備の老朽化が進んでいきます。
新築マンションや築浅マンションと比較すると、築年数が15年や20年であるマンションの魅力は低い傾向にあります。
また築年数が経過した中古マンションは、購入時に金融機関からの融資を受けにくいのも特徴です。
これは中古マンションの担保としての価値が低い傾向にあるためです。
以上の点から築年数が経過した中古マンションは、入念に戦略を練らなければ売却期間が長期化しやすいといえます。
立地に問題がある
中古マンションに限らず、立地は物件の資産価値に大きく影響します。
また間取りや室内設備などと異なり、立地はマンションの購入後に入居者の意思で変更できません。
そのため駅から徒歩20分以上もかかるようなマンションや、周辺にスーパーや学校などの施設がないマンションは売れ残りやすく、売却期間が長引きやすい傾向にあります。
売り出すタイミングが悪い
新学期を迎える春と人事異動が増える秋は、引っ越しのシーズンといわれています。
中古物件の需要の高まることから、マンション売却に適したタイミングです。
逆に夏や冬は不動産が売れにくく、春や秋に比べると売却には適していないでしょう。
ただし地域によって、不動産が売れやすい時期は異なります。地域の不動産市場の動きを把握せず、売り時を逃してしまうと売却が長引く可能性があります。
不動産会社選びが適切ではない
仲介で不動産を売る場合、売却活動の窓口は不動産会社になります。
売却活動をスムーズに進められるかどうかは、不動産会社と担当者の販売力にかかっています。
不動産会社選びが適切でなかった場合、買い手が集まらない、内覧後に契約へとつながらない、などの問題が起き、売却期間が延びてしまうこともあります。
さらに価格交渉がうまくいかず破断になる、契約手続きが進まない、といったトラブルの可能性も否めません。
住宅ローンが残っている
住宅ローンが残っている不動産も売却は可能ですが「抵当権」の抹消が必要です。
売却価格がローンの残債よりも高額な場合は、売却代金でローンを全額返済して抵当権を抹消できます。
しかし売却価格がローン残債よりも低い場合、売却代金だけではローンを完済できないため、不足分を預貯金などで補います。
預貯金が十分にあれば、すぐに売却できますが、差額の用意が必要なケースは売却まで時間がかかることもあるでしょう。
マンション売却が長引くデメリット
マンション売却が長引くと、売主にとって不利な状況になることも少なくありません。
購入希望者への印象が悪くなる
売却期間が長引くと、何度も同じ物件情報が購入希望者の目に触れることになります。
すると「売れ残っている物件だから、何か問題があるのかもしれない」と、ネガティブな印象を抱く人も出てくるでしょう。
物件の印象が悪くなると内覧希望者も減り、売却活動が思うように進まず時間がかかってしまいます。
売値が下がってしまう
不動産は時間の経過が価格に大きく影響しており、1年経つごとに資産評価額が下がります。
それに伴い市場価格も下落していくため、売り出しから時間が経つほど低い価格でしか売れなくなるのです。
売主も「早く手放したい」という焦りが強くなり、さらに売却価格を下げるケースも少なくありません。
マンションを短期で売却するためには?
不動産を短期で売却するためには、次の3つをチェックしましょう。
適正価格で売却を目指す
「最初は高額に設定しておいて、徐々に価格を下げればよいのでは?」と査定価格よりも高額で売り出し、徐々に値を下げることで短期間での売却を狙う人もいます。
しかし頻繁に売値を下げていると、購入希望者はさらなる値下げを期待して待つようになり、結果的に売却期間が長引くのです。
最初から査定価格を目安とした適性価格で売り出し、頻繁な値下げは避けましょう。
売却物件の手入れを徹底する
売却物件の手入れを行うことも、短期で売却を実現させるための有効な手段です。
購入希望者の多くは内覧後に契約を決めるので、実際の物件の状態が重要になります。
内覧のスケジュールに合わせ建物内部の掃除、庭や外構の雑草処理など、こまめな手入れを行うことが大切です。
特に建物の古さが出やすい水回りや、内覧時に最初に目にする玄関部分は重点的にお手入れすると購入希望者によい印象を与えます。
不動産買取を検討する
とにかく早く売却したい場合は、不動産会社による「買取」も検討しましょう。
不動産買取では購入希望者を探す必要がないため、金額などの条件が合えばすぐに売却が成立します。
売却価格は通常の7〜8割前後と安くなりますが、仲介手数料がかからないなどのメリットもあります。
住み替えなどで売却期限が決まっている場合には、買取も検討してみましょう。
不動産売却の買取について、詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
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まとめ
マンション売却の期間は3か月前後が一般的ですが、物件の条件や売却のタイミングによっては長引く可能性があります。
売却期間が長くなると購入希望者への印象が悪くなり、ますます売れにくくなるため売却価格も下がってしまいます。
マンション売却を短期で成功させるためには、計画的な準備はもちろん、信頼できる不動産会社との丁寧なコミュニケーションが必要不可欠です。
マンション売却を検討する際には、物件エリアの不動産事情に詳しく、売却実績のある不動産会社に相談しましょう。